第25話 お使いクエスト
ニースさんからお使いを頼まれ、街外れのドワーフの所へ旭さんと一緒に向かう。
「その人なんて名前だったっけ?」
「えっと、マイアさんって言っていたかな?
カラクリとか細かい細工が得意な鍛冶屋さんらしいよ」
「それで時計の修理の依頼なのね。時計って確か、ゼンマイとか歯車とか細かい部品で出来ているって前に聞いた事があるわ」
「鍛冶屋というよりは修理屋の方が近いのかな?」
2人で話していると、あっという間にマイアさんの鍛冶屋に到着した。
「ごめんくださ〜い、宗也と言いますが、ギルドのニースさんに頼まれて来ました」
鍛冶屋の扉を叩き、中の人が出てくるのを待つ。
少し待つと、がっしりとした小柄な体格の男の人が出てきてくれた。
「はい、どちらさんですか?」
ちょっとぶっきらぼうな物言いだけれど、職人というのはこういうものかもしれない。
「あの、私達そこの街のギルドのニースさんから頼まれてこの時計の修理の依頼をお願いしたいのですけど」
丁寧な口調で旭さんが話すと、
「あーニースちゃんの!
分かった。じゃあかあちゃ⋯親方呼んでくるから入ってここで待ってて」
そう言い、扉を開けて中に促してくれる。
「おじゃましま〜す」
鍛冶屋の中に入ると、そこはお店の中、というより普通の家のリビングのように机と椅子が並んでいた。
「なんだかお店という感じじゃないわね」
ボソッと旭さんが呟く。
俺も同じ事を考えた。
「かあちゃ⋯親方ー!お客さん来たよー」
「はいよー!」
鍛冶屋の奥の方からトンカンという音が
「やっ!あんたらがニースちゃんのお使い?
私はマイア。よろしくね!
あ、手紙持ってきてくれたの?」
そう言って俺が持ってきた手紙を読んでから、
「フムフム。また時計が止まったんだって?
分かった。じゃあちょっとそこに座って待ってて。すぐ直すから」
マイアさんに椅子に座るように促されたので、素直に従う。
「お茶をどうぞ」
最初に出てきた人が俺達にティーカップに入ったお茶を差し出してきた。
「いただきます」
お茶をすすりながら待っている間、マイアさんの弟子?なのか息子?なのか分からないけれど、忙しそうに動いている男の人が視界に入る。
「あの〜、手伝いますか?」
手持ち無沙汰だったので声をかけると、
「いえ、大丈夫ですから」
そう言われた。
そのまままた椅子に座り直したんだけど、
「あ、あれ取ってこないと⋯」
ボソッと男の人が呟くのが聞こえた。
「何か取ってこないといけない物があるんですか?えっと⋯」
「アトルだ。で、ちょっとそこの森にある木を取ってこないといけなくて」
木⋯。
「手伝いますか?」
「あ、私も〜」
「修理が終わって、誰かここにいないといけないから、旭さんはここで待ってて」
「分かったわ⋯」
渋々納得して旭さんには留守番をしてもらい、アトルと一緒に外に出る。
街外れというのもあって、すぐそばが森だ。
森を少し進み、木を伐採する現場にすぐに着いた。
「この木がいいな。じゃあ周りの木に縄を付けないと」
「あ、俺がやるよ」
「お前、木を登る事が出来るのか?」
「得意だよ」
そう言いながら縄をもらい、辺りの木に縄も利用してスルスル登る。
「この辺?」
「あ、ああ。そこら辺に縄を結わえてから気をつけて降りてきて」
枝も利用しながら縄を結わえ付け、スルスル降りる。
他の木にもこの作業をして、切る木に縄の反対側の先を結わえて倒れても安全なように配慮する。
「じゃあ切るぞー!」
「OK!」
アトルは持ってきた斧を構え、
「それっ!」
コーンコーンと倒れやすいように木の根元を切っていく。
反対側にも切り目を入れ、人がいない方向に倒れるようにしてから、
「倒れるぞー」
アトルが木の胴を蹴ると、反対方向に見事に倒れる。
「おー、凄い!」
生で見る木こりの様子に俺は感心すると、
「じゃあ枝と縄を切って、今日は枝だけ持っていこう。あと、木を登ってくれてありがとう。助かったよ。えっと」
「あ、俺、宗也って言うんだ」
「宗也か。改めてありがとうな」
お礼の意味なのか、2人で握手をした。
そして2人で枝と縄を切って回収して鍛冶屋へ戻っていったのだった。
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