第23話 大盛況となったのか?

料理対決当日。

その日は3人とも朝から料理の仕込みをしているんだけど⋯、

「おい宗也!ココアをなんとかしてくれ!

パニーの実を狙ってつまみ食いしようとするんだ!」

「ココアちゃ〜ん、こっちの実も美味しいよ〜」

「⋯やっぱりパニーの実以外は食べようとしないみたい」

ニースさんが持っていた木の実をココアに差し出すが、ココアはプイッとそっぽを向いて、断固拒否のスタイルを貫いている。

「これじゃダメなのか…意外と頑固だなコイツ」

しょうがなくマーローの持っているパニーの実を一つもらい、

ひとまずココアを泊まっている部屋へ実と一緒に避難させる。

「これでつまみ食いの邪魔はしないだろう」

手を洗って調理を再開し始めた。


お昼になり、段々とお客様が⋯、

「⋯来ないね」

「何でだー!?」

ガランとした食堂で俺は頬杖ほおづえをつき、

マーローは額に手を当てて頭を振る。

「普段の行いをみんなが知っているからじゃない?」

ため息を付きながら腕組みをしたベニーがつぶやく。

「なんだと!?」

また一触即発になりそうなので俺が止めに入ると、

「おう、店もう開いているかい?」

扉を開けて中年のおじさんが二人入ってきた。

「い、いらっしゃいませ!」

「ケニーおじさんいらっしゃい!」

俺のそばでベニーが、

「ケニーさんだよ。親父達の代からの常連で、よくお客さんを紹介してくれる良い人なんだ」

と、教えてくれる。

「じゃあ、ご飯と…ベニーのを頼もうかな」

「オレは…この温野菜サラダ?と鶏肉スープを」

「注文はいりまーす!」

「「はーい!」」

俺とベニーは厨房でそれぞれ調理に取り掛かる。

その後、美味しそうな匂いに釣られたのか、お客様が続々訪れてあっという間に店内は満杯になる。

「はー、腹減った。パンと一緒にマーローの料理をくれないか?」

「辛いの食べたいからオレも頼むよ」

「野菜のサラダとスープセットで!」

「この煮物美味しい!」

「こっちの料理も美味しいわよ!」

続々いらっしゃるお客様の注文に、厨房は段々とてんやわんやになる。

「こっちの料理出来たよ!」

「カレーいっちょあがり!」

「1番テーブルのところですね?

運びまーす!」

今日は旭さんもウェイトレスとして料理を運ぶのを手伝ってくれる。


「あと5分でお昼の営業が終わるから頑張って!」

ニースさんに時間を言われて俺達は残りの食器の数を数える。

「あと数個で完売か」

「おっしゃあ!ラストスパート!」

マーローはさらに張り切り、

「こっち出来たよ!運んで!」

黙々とベニーは注文の料理を完成させていく。

食堂のホールでは入れ替り立ち替りお客様がいらして、

「美味しい!」

という声があちこちで響く。

「まいどあり〜」

と、レジ係のカラチも満面の笑みでお金を預かったりして大忙しだ。

そうこうしているうちに、準備中の時間となったので、食事を終えたお客様がお帰りになり、一旦お店を閉めた。

食べ終わった食器を一箇所に寄せて皆で数を数えてみたけれど、それぞれ違う器で分かりやすくしていたから数えやすかった。

「29、30!」

「こっちは27ね」

「器の在庫の種類がたくさんあったから、新たに買い揃えなくて良かったわね」

「食器の経費が浮いてええなあ」

「カラチも会計を手伝ってくれてありがとう」

「おかげで久しぶりに商売繁盛になったわ。皆さんありがとう!」

ニコニコとニースさんにお礼を言われる。

「なあなあ、それで誰が一番だったんだ?」

マーローが聞いてきたので、旭さんが結果発表をするのだが、

「一番は⋯ニースさんの作ったパンです!」

「「「料理じゃないのかよ!」」」

全員で総ツッコミを入れた。

ちなみに料理はベニーが一番だったそうだ。







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