第19話 これは⋯また何か巻き込まれたかな?

俺のカバンの中で大人しくしている小さい生物のココア。

 他の人にバレないかと、少々ヒヤヒヤしながら普通に振る舞うけど、身動き一つしないのでなんとか周りには気付かれないでいる。

「このまま大人しくしてくれよ⋯」

拾った捨て犬を親に内緒にするような心境で町の中へ入る。

「魔物やったら即、護衛兵へ渡したる」

「だから辞めんかジャララ」

自分がテイム出来る生物じゃないからか、ジャララさんが苛立って荒ぶっているのをカラチがたしなめる。

「まず、いつも通りギルドに寄ってから宿屋を探しましょ〜!」

空気を読んでいるのかいないのか、

旭さんが仕切ろうとする。

「お前さん方、ギルドを探しているんか?」

通りかかった町人らしきおじさんが、俺達に話しかけてきた。

「あ、ハイ。鳥と花のマークのエンブレムのギルドなんですが」

名前じゃなくてエンブレムで覚えてしまったのだが、この特徴だけで伝わるのか、ちょっと不安だ。

「あー、あのギルドか。それならここの道を真っ直ぐ行くと途中に宿屋があるんだが、そこの建物に併設してるよ」

「併設⋯宿屋も経営しているって事ですか?」

「そうそう。なんせギルドだけじゃ補助金とかも微々たるものだ、って先代のおやっさんが愚痴ってたからねえ。

あ、これは余計な事言っちまったかな?」

ワハハと笑いながら、おじさんは親切に教えてくれる。

「どこの世界も、渡る世間にゃ金が必要っちゅう事なんやな」

(カラチのいた世界は知らないけれど、俺のいた世界にそんなことわざは無い)

俺は心の中でそう呟いた。

「教えていただきましてありがとうございます」

おじさんにお礼を述べて、言われた方へ向かってみた。


「ここがさっき言われたギルド⋯?」

旭さんが木造の建物を見上げる。

周りは閑散としていて、通る人も建物から離れて歩いていく。

「なんか⋯静かやな」

「まあとりあえず入ってみようよ」

そう言いながら俺は扉を開けて中に入ると、

「だーかーらー、この野菜はこの味付けが」

「じゃかしいわ!こっちも美味しいやろ!

たまには別の味にチャレンジしてみろや!」

ガランとした食堂の奥で、なんだか厨房の方からガヤガヤと騒ぐ声が聞こえる。

「なんだか、揉めてる?」

入って左側は受付の様だが、高校生位の女の子が独り椅子に座って、呆れたようにため息を着いている。

「もう⋯いい加減仲良くしたらいいのに⋯」

そして俺達に気付いて、

「あっ、すいません気付かなくて。新規の召喚者さん⋯ですか?」

「いや、俺達は隣町のギルドから紹介されて⋯こちらが紹介状なんですが」

そう言いながら、懐にしまっていた紹介状を手渡す。

「あらこれは⋯バノンさんとリオさんの連名⋯」

そう言いながら紹介状を開いて中を確認する女の子。

「なるほど⋯滞在中の宿屋とギルドでの仕事依頼のお世話を賜りました。

これからどうぞよろしくお願い致します」

そう言って女の子は椅子から降り、ペコリと俺達に頭を下げる。

「私の名前は二ー」

女の子が名前を告ようとした時、

「だー!うっせえベニ!」

「ロー!話を聞⋯うわあ!」

厨房が一層騒がしくなり、俺が厨房の中を覗こうとした瞬間、

ゴンッ!

厨房から飛んできたフライパンを避けきれず、俺の頭にぶつかってその痛みと衝撃で、俺はそのまま倒れてしまった。

倒れる間際、生物の事を思い出して、カバンを犠牲にしないように横向きに倒れたのはまだ良かったかもしれない。

「だ、大丈夫ですか!?」

「えっ!?お客さんいたの!?」

「すまない!つい!」

男性二人と二ー⋯さん?の声が聞こえてきたけれど、俺はそのまま気絶してしまうのだった。

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