第18話 お供が一匹増えました

突然出てきた魔物を倒したのはいいけれど、何故か小さく茶色い毛並みの短い生き物に好かれて、俺の足元を擦り寄られていて動きにくい⋯。というか踏んでしまいそうで怖い⋯。

「なんだか好かれているわね宗也くん」

「犬みたいな懐き方やな」

「これでは先に進めへんから、ウチが抱っこしよか?」

ジャララさんがそう言いながら生き物に寄っていくが、生き物は手の隙間をくぐってかわす。

「⋯本当に離れたくないみたいね」

ジャララさんが悔しそうな表情でじっと俺を見ている。

「抱っこしたいんですか?じゃあどうぞ」

俺はヒョイっと生き物を抱き上げてジャララさんに渡そうとするが、

「キュキュキュー!」

手足をバタバタさせて嫌がってから俺にヒシッと貼り付いてしまった。

「コイツ⋯コロ」

「気が早い!落ち着け!待たんかジャララ!」

殺意がこもった目つきになったジャララさんを、慌ててカラチが止めに入る。

「でも、このままにしておけないし、とりあえず連れていく?」

「ちなみに、この生き物と同じ種族に出会った事は?」

3人とも首を横に振る。

俺は溜息ためいきをつきながら、

「しょうがない、連れていくか。道中コイツの親に会えるかもしれないし、

このままだと、コイツまた魔物にまた襲われそうだしな」

言葉の意味が通じたのか、生き物が嬉しそうにする。

生き物を抱っこをしながら俺達は町へ歩き出した。

道中で、

「じゃあ名前決めないと。いつまでも宗也くんに『コイツ』って呼ばれてたらそれが名前だって覚えちゃうかもしれないし」

「コイツでええやろ。ウチに懐かへんし」

まだ拗ねているらしいジャララさんがムスッとしながら告げると、

「せやなあ、アプはどうや?」

「意味は?」

「ワテの世界でりんごっちゅう意味や」

「それならイチゴちゃんはどう?」

食べ物つながりでカラチと旭さんが提案する。

「うーん、それじゃあトイプーとか」

「それは犬種でしょ?」

「うーん⋯」

俺が考えている中、腕の中の生き物は嬉しそうにしっぽを振っている。

「うーん⋯じゃあココアはどう?俺の世界の飲み物なんだけど、毛の色が茶色でなんか似てるし」

「へー、宗也はんの世界にはそういうのがあるんでっか?」

「ココア⋯いいわね!」

「なんかコイツ呼びとあんま変わら」

「ジャララは黙っとき」

発言権をカラチに取られ、ジャララさんはさらにムスッとする。

「じゃあココア、よろしくな」

「キュッ!」

俺がココアの頭を撫でながら話すと、嬉しそうに鳴いてしっぽを振る。

「いつかこの小動物の本性あばいたる⋯」

と、ジャララさんが恨みがこもった様な感情をボソッと呟いていたけど、俺は聞かなかった事にした。


しばらく歩くと、次の町が見えてきた。

「やっと着くわね」

「ギルドに顔を出してから宿屋を決めればいいかな?」

「その前に宗也はん、ココアを出してちゃアカンと違う?」

「そのまま衛兵に捕ま」

「ジャララ、ええ加減にせんか!」

俺は、アハハと乾いた笑いをしながら、

「じゃあ俺のカバンに入れておくかな」

そう言って背中に背負っていたカバンを開けて中にココアを入れる。

小柄なので余裕で入れられた。

「ちょっと狭いけど我慢してね。あと、鳴いたらダメだよ」

「キュッ」

俺の言葉が理解出来たのか、小さい声で鳴いて反応するココア。

なし崩し的にお供が増えた俺達のパーティー。

だが、ココアの主食が何なのか分からないという重要なことを全員すっかり忘れていて、後で大変な目にあうのだった。

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