第17話 仲間がまた増える⋯のか?
この街で約一ヶ月暮らして順調に力をつけ、ようやく次の町へ進む事にした俺達。
「じゃあ、色々お世話になりました」
旅立つ前にギルドに赴いて、受付の姉妹に挨拶をしていく。
「次の町にもうちの系列ギルドがあるので、手続きのために絶対立ち寄って下さいね」
「死なないで⋯ください」
もう一人の受付にそう言われ、少し照れていると、
「ここで死なれたら今までかかった経費や報酬が無駄になってしまうので」
と、真顔で付け加えられてしまう。
「はい⋯」
シビアな言葉に何も言い返せなくなってしまった⋯。
トボトボと俺達がギルドを出た後、
「リオちゃん、別れ際にそんな言い方しなくても良かったのに」
「何言っているのよバノン姉さん。私は『頑張って』って意味で言ったのよ」
(全然意味が通じて無かったと思うんだけど⋯)
妹リオに対してそう思った姉バノンだったが、口には出さずにいたのだった。
「恋の予感がしとったのに残念やったなあ、宗也はん」
「なんだか妹ちゃんとええ仲みたいやったのになあ」
慰めているようで冷やかすように俺に声をかけてくるカラチとジャララ。
「大丈夫だよ、別にそんなのは気にしてなかったから⋯」
(落ち込んでいる、本気で落ち込んでいる!)
(これ、どないしたらええ?)
見るからにモチベーションがだだ下がりな俺にあからさまに距離を置く二人。
「まあまあ男女間でよくある事じゃない。
それにここは異世界なのよ?
恋人作るのが目的じゃないんだから、元の世界に還る事に集中しましょう!」
慰めなのかなんなのか分からない言葉を旭さんに言われてしまう。
「⋯そうだね。まずは生き残らなきゃね!」
(言われた事引きずっているやん⋯)
カラチとジャララがそう思ったが、これも口には出さなかった。
あと一時間で次の町に着くという辺りまで差し掛かった時、草むらからガサッと物音がして、見た事が無い小型の生き物が顔を出してきた。
「⋯これ、何?」
「毛がもふもふしていて顔も可愛いわね」
元々生き物が好きな旭さんが真っ先に反応する。
が、魔物かもしれないので少し離れた位置で様子を
その生き物は、
「キューキュー」
と鳴き声を上げると、道路の反対側の林からメキメキッと木を倒す音と共に大きな体格の角は生えているがクマみたいな見た目の魔物が
「これって生き物が呼び寄せたの!?
この生き物が狙われてるの!?どっち!?」
「分かるわけないでしょ!」
「あまり見た事あらへん生き物やけど、
とにかく大きいのをやっつけへんとピンチなんは確かやな!」
「連携取ってやっつけるでー!」
魔物が道路に出てくるタイミングで、魔力回復用に俺の手作りクッキーを装備した旭さんが呪文を唱えて火炎魔法を魔物に当てる!
「グオオオオ⋯」
顔に魔法が当たり、熱くて痛かったのか、
「よひっ当たっは!」
旭さん、食べるか喋るかどちらかにしようよ、と、俺は思う。
そこにカラチが弓矢で応戦し、何発も矢を突き刺していく。
「なんぼかでもダメージ負ったやろ!」
「宗也はん、防御魔法かけたでー。気を付けて戦ってや!」
ジャララの僧侶魔法でガードを固くしてから俺が魔物の隙を狙って懐に近づく。
「うりゃー!」
懐にパンチを連打し、ダメージを蓄積させていく。
段々と痛みとダメージで魔物の足元がぐらついてきた所で俺は少し離れて、
「旭さん、トドメを!」
「OK、任せて!」
旭さんはさっきとは違う魔法を魔物にぶつける!
「氷結魔法を喰らえー!」
魔力全開効果なのか、魔物を包んだ氷柱が出来上がった。
「キュルキュル」
戦闘も終わり、もふもふとした生き物が俺の足元に擦り寄ってきた。
「お礼を言っているのかしら?
可愛い!連れていきたい!」
「待ちいや、コイツが魔物呼び寄せたんかも知れへんで!」
カラチが止めに入るが、
「でも、そうと決まった訳やあらへんやろ?何でも疑っておったら疲れるで」
旭さんの意見寄りのジャララが止めるが、
「ここは宗也はんの意見も聞こうや。それで決めへんか?」
と、いう事で俺に決定権が委ねられたんだけど、
さて、どうしよう?
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