第20話 ここで情報を掴めるとは

痛みで目を覚ますと、旭さん達が俺の顔を心配そうに覗いている。ジャララさんは俺の頭に手を添えて回復魔法をかけてくれていたらしい。

「痛た⋯」

「大丈夫?」

痛む頭を抑えながらソファから起き上がろうとする俺を、旭さんとジャララが背中を押して支えてくれる。

「うちの兄達がすいませんでした!」

「すいませんすいません!」

「ごめんなさい!」

俺が起きた事に気付いた、ギルドに勤めているらしき三兄弟妹が俺に謝ってきた。

「いや、不用心に覗き込んだ俺も悪かったから」

「でも悪いのはこちらですし⋯ほら、ベニー兄さんも謝って!」

「ごめんなさい⋯」

二ー?さんにうながされてベニー?さんが謝ってくれる。

「もう大丈夫ですから。でも、何でケンカしていたんですか?」

「こちらのマーロー兄さん⋯双子の兄の方なのですけど⋯とベニー兄さんがうちでは主に調理場担当なのですけど、ベニー兄さんがアレンジ料理をしたがるのを昔ながらの料理が得意なマーロー兄さんが止めるというケンカ⋯やり取りがあるんですが、

今回はかなりエキサイトしてしまったみたいで」

「なるほど⋯だからといって調理師が調理器具を投げるのはダメだよね?」

「うっ⋯ホントにごめんなさい⋯」

ベニーさんに再度謝られた。

「それで、どういう料理を作っていたの?」

俺の質問に、旭さん達が、

(あ、これ首を突っ込むパターンだ)

という顔をしていたけれど、あえて無視をした。

「えっと⋯美味しそうな野菜を知り合いからいっぱい頂いたんで、ロー兄が母さんから習った煮物料理を作るって言ったんで、俺が旅の女の人から習った料理を作ろうとしたら『普通の料理を作れ!』って言われて、それで揉めて⋯」

旅の女の人⋯?

なんか引っかかる⋯。

「その旅人は、どういう料理を教えてくれたの?」

「えっと、なんか香辛料とか野菜とか肉を使った米やナン?に合う料理⋯です」

「それって⋯」

「「カレー?」」

俺と旭さんが同時に声に出す。

「ああ、ハイ。確かそういう料理だって言っていました」

俺はそれを聞いて頭を抱える。

「⋯それ、母さんだ」

「えっ!?」

「母さんって⋯行方不明になったって言っとった宗也はんのオカンって事かいな!?」

「いやいやそんな偶然ありえへんやろ」

カラチは驚き、ジャララさんは

『まっさかあ〜』

と、言いたそうな顔でこちらを見る。

「確か旅の料理人⋯と冗談ぽく言ってました。そして、『料理は挑戦だ!何事も恐れるな!』と、去り際に言われました」

「あー、母さん確定だ。

口癖のようにいつもそう言っていたから」

「マジかいな⋯」

「呼んでいる声って、召喚者の声やったんかもしれへんなあ」

ジャララさんが冗談ぽく言うが、間違っていないかもしれない。

「その人は⋯」

「えっと⋯もう5年くらい前の話だし、魔王城の方へ向かっていたそうなので今は分かりません」

「そうか⋯」

ガッカリする俺に、旭さんが、

「まあ、手がかりが見つかった事だけでもラッキーかもしれないし!」

と、フォローを入れてくれる。


「へっくし!」

魔王城の近くの森。

植物採集を行っていた中年の女性が宗也達が会話をするのと同時刻に大きなくしゃみをした。

「大丈夫か?」

彼女の側にいた人が心配そうに声をかけるが、

「大丈夫大丈夫。誰か私のウワサでもしていたのかしら?」

両手いっぱいのキノコを持ちながら、声をかけてきた人に言葉をかける。

「さて、材料も集めたし、そろそろ戻りましょうか」

そう言いながら背負い籠にキノコを入れ、

籠を背負いながら城の方へ歩いていった。


「まあ、これで旅の目的がもう1つ増えたね」

俺が言うと、

「まず今日はゆっくり休みましょうか。まだ宗也くんの傷を癒さないといけないし」

旭さんが言うと、

「ではうちをご利用ください!ケガのお詫びも兼ねて一週間は宿代無料にさせていただきますので。あ、私の名前はニースと申します。」

二ースさんはそう言ってくれたのでしばらく滞在する事にしたのだった。

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