第15話 家族の事情
報酬を貰い、少し懐が暖かくなったからか、旭さんがカラチに、
「今日は宿屋で豪遊よ!」
と、爆弾発言をかました!
「旭さん、そこで散財したら後々大変にならない?」
俺は少しでも節約した方が良いと思い、すかさず止めに入る。
「人生は短いんだから使える時に使わないと!」
ダメだ、旭さんは自分に酔っている!
「カラチからも何か言って!」
「人生短い⋯その通りや!」
雰囲気に呑まれてどうする!
「すんまへん。カラチのヤツ、どうやらマタタビモドキの枝を噛んでしもうたらしくて」
ジャララが謝ってきたが、この状況をなんとかする気は無いらしい。
雰囲気の酔っ払いとマタタビの酔っ払い⋯。
手がかかる未来しか想像出来ない状態に、俺は頭を抱える。
「とにかく昨日の宿屋に一泊して明日は今後の計画を立てよう!」
俺がそう言って旭さんとカラチを引きずるようにして宿屋に向かい、普通に一泊した。
次の日、反省した表情の旭さんとカラチが大人しく宿屋の食堂でシュン、としていた。
「旭さん、カラチおはよう」
「「おはようございます⋯昨日は暴走してすいませんでした⋯」」
俺とジャララを見て謝ってきた。
「まあテンションが上がると暴走しちゃう時があるから、別にいいよ」
「優しいなあ宗也はんは」
あっさり許す俺に、本心ではなさそうな言葉を発するジャララ。
「いつまでもクヨクヨしちゃいられないからね。じゃあ、ご飯食べてから次にどうするか決めようか」
そう言って宿屋の朝ご飯を運ぶ。
ここ数日、自分で作った料理ばかりだったから、他の人の作ったご飯を食べるのは久しぶりな気がする。
「そういえば宗也はん、料理上手いけど料理人か何かやったん?」
食べながらジャララに聞かれたので、
「うち、ほぼ父子家庭なんだ。母は」
「すんまへん、気もきかん事聞いてもうて」
「いや、死んでないよ」
あっさりと俺は否定する。
「えっ?でも父子家庭って」
「母さんは人助けするのが趣味⋯というか何処でも駆けつけるというか奔放というか⋯まあふらっと行ってしまう所が昔からあって、
数年前に
『助けてって声がするわ!宗也、私行ってくるから!』
なんて言ってどこかへ行ってしまって、それから未だに帰って来ないんだよねえ」
「⋯⋯⋯マジ?」
「奔放過ぎるやろ⋯」
「ありえへんわ⋯」
何となく予想していたけれど、こんなにドン引きされるとは思わなかった。
「しっかりしてはるとは思うとったけど、そんな家庭事情があったんやな」
「そういう事だから家事とかは慣れっこだから。」
笑顔で俺がそう言うと、
「宗也はんのオカン、実はどこかの世界に召喚されてたりしてはるかもなあ」
「有り得なくは無いわね⋯」
「長いこと戻ってきてへんしなあ⋯」
と、ヒソヒソと話す声が聞こえる。
「いやまさか⋯」
「ありえへんとは限らんで〜」
こっちを見てそう言われたものの、その可能性は低いと思い話題を替えて、
「まあまあこの話はここまでにして、早く食べて次の行き先を考えようよ」
と、促してご飯を食べ進めていった。
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