第14話 この世界のルール

集団で襲ってきた殺人ウサギ達を片っ端から倒して、採取植物を死守した俺達。

「旭さん、変なナレーション入れないでください。目的が違いますから」

「あらヤダバレた?」

舌を出しててへぺろしても誤魔化されませんから!

「まあ戦闘時のコンビネーションの練習にはなったからええんやない?」

「旭ちゃん、魔力減らん戦い方覚えた方がええかもなあ」

旭さんのMP全開魔法はカラチにもジャララさんにも教えたので、打撃系の方法を覚えるのは良いかもしれない。

「魔法使いなんだけど」

ボソッと俺が呟いてしまったのを旭さんは聞き逃さず、

「じゃあ宗也くんには街まで荷物持ちよろしく〜」

と、しっかり罰を与えられてしまった⋯。


「あらあらこんなに採ってきてくれたの? ありがとうね〜」

昨日立ち寄ったギルドの受付でどっさり採ってきた植物を渡して、旭さんは報酬を貰う。

「あー、重かった⋯疲れた⋯」

ギルドに設置してある椅子に座り、俺は荷物の重量と戦闘の疲労でテーブルに突っ伏した。

「御苦労様です。お水ですがどうぞ」

別の受付のボブカットの女性が水を1杯持ってきた。

「ありがとうございます」

お礼を言って水を飲む。

「それではカードをお見せ下さい。ウサギ退治の分の報酬をお渡しいたします」

なんというか⋯この人はかなり事務的な対応をしてくれるという印象で、窓口受付のロングヘアの人は明るく朗らかな印象だな、と俺は思った。

「あの二人姉妹なんやて」

「へー、じゃあこっちの世界の人?」

「ちょっと違います」

ボブカットの受付の女性が話に割って入ってきた。

「基本的には召喚者がこちらの世界の人と夫婦になる事は駄目なのだそうです。私達はずっと前に召喚された者達がここに根を下ろして結婚して生まれた人の子孫⋯ですね」

淡々と女性が語る、が、少し寂しげな表情をしているように感じた。

「そうなんだ⋯」

「まあ召喚されたばかりの宗也くんが知らないのも無理は無いわね」

報酬を受け取った旭さんが、俺の所へ戻ってきた。

「フッフッフ⋯予定以上に儲かったわ! ウサギ様々ね!」

どうやらあのウサギは複数倒すと儲けられるようだ。

それはともかく、

「こっちの世界の人と結婚しちゃダメって、結構厳しいんだね」

「なんでもこちらの世界の人は強さに上限があり、他の世界の召喚者には上限が無いそうなんです。こちらとあちらの血が混ざるのを警戒して、そのような盟約が設けられたと幼い頃お祖母様から教えてもらいました」

「血が混ざる⋯そういうハーフの人とかが国家転覆こっかてんぷくという一大事を起こす事を警戒したのもあるんだろうね」

コクリと女性が頷く。

「それと共に、ハーフの人は子を成せないという弊害へいがいも分かったので、進んで結婚する人はいなくなったのも理由だそうですよ」

未だに召喚が行われる理由も、還る事が出来なかった人がどうなるかも聞けて、収穫があった気がする。

「私達の先祖は還る事が出来なかった人達の手助けとなるために、召喚者ギルドを立ち上げたそうなんです。いわば王国や国民と召喚者との依頼の橋渡し⋯のような物ですね」

なるほど、生きていくために身に付けたすべという事か。

「色々とありがとう」

俺が微笑みながら女性にお礼を言うと、

「い、いえお礼を言われる事では⋯」

顔を背けてボブカットの女性がボソッと呟く。

「あら、あの娘があんな反応するなんて珍しいわね」

「ね、姉さん!」

慌てて姉を止める女性。

それを横で見ていたカラチとジャララさんが、

「これは⋯」

「何か恋が芽生えるチャンス?」

「なっ!?」

恋というキーワードに即座に反応する旭さん。

「なんでそうなるんだよ⋯旭さんもふざけて言っているだけだろうから反応しなくて良いからね!」

照れ隠しではないけれども、そう言って二人を止める俺だった。

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