第13話 報連相はしっかりと!

街から歩いて一時間ちょっとの所にある森へやって来て、鍛えながらギルドで低難易度の植物採取の依頼をこなす事になった俺達。

「⋯そんな依頼受けたっけ?」

「ギルド受付で宗也くんが登録手続きしてた時、私が依頼受けたから知らないんじゃない?」

「そういう報連相はちゃんとしようよ⋯」

「ホウレンソウってなんや?」

「報告、連絡、相談の事だよ。

ちゃんと伝えないと大変な事になるよって意味で使われているんだよ。

っと、これを集めればいいのか?」

言われていた採取植物を採りながら俺が説明する。

「ほうほう、それを怠ると怒られるんやな。よっと」

聞きながらカラチも採取を手伝ってくれる。

「みんな頑張ってや〜」

少し離れた場所でのんきにお茶を飲みながらジャララが応援していると、

「お前も手伝わんかい!」

と、カラチに叱られていた。

「いややわあ、ちゃんと手伝ってるで。ほら」

そう言いながらジャララが指さす方向には、小さな動物らしき生き物が一生懸命採取植物を引っこ抜いては一箇所に集めていた。

「ジャララさん、動物とかをテイム出来るの?」

「まあそういうもんやな。前いた世界でそういうのを使つこうた仕事をしとったさかい」

少しごまかし気味にジャララは説明している。

サーカスみたいな仕事だったのか?

と、俺は思ったけど口には出さなかった。


手数てかずが多かったのでほんの数時間で依頼された個数の植物が揃った。

「あー、疲れた!」

うーん、と背伸びをしながら俺が呟くと、

「しゃがんでの採取だから腰にきた⋯」

旭さんも腰を叩きながら立ち上がってこっちに寄ってきた。

「ほいみなはんご苦労さん!

こっちに布を広げたんで植物をひとまとめにしまひょ」

「この布運びやすうてええなあ。ジャララ、でかした!」

「宗也はん、運ぶの頼みますわ。うちでは重うて重うて」

「褒めたん取り消すわ⋯」

ジャララさんを褒めたり取りやめたり。

カラチの反応も忙しいな。

「いいよ。今の時間ならまだ開門時間に間に合いそうだし」

「おおきに〜」

「宗也くんありがとう!」

ジャララさんと旭さんに感謝され、ちょっと照れながら荷物を担ぐ。

「ちょい待ち、なんかおるで」

人差し指(?)でシーッと黙らせながらカラチが周りの雰囲気をうかがう。

木の影から、ウサギらしき生き物が数匹飛び出してきた!

「ウサギ⋯?」

「ちゃう!あれは殺人ウサギや!」

「気を付けて!

一瞬で首チョンパされるわよ!」

物騒な事を旭さんに言われ、すぐに俺は警戒態勢に移る。

「これ、対処法は!?」

「とにかく一撃に気を付けて!」

「初手をかわして攻撃するしかあらへん!」

俺はカギ爪を装備しながら前方に出て旭さん達を守る体勢に移る。

カラチも弓矢を構え、後方支援の体勢だ。

抵抗されると判断した殺人ウサギは、とがった前歯を見せつけるように口を開け、足踏みで仲間に合図する。

ウサギが足踏みとジャンプをしてリズムを取ったと同時にこちらに襲いかかって来た!

俺はその初手をかわし、クロスカウンターのようにウサギの腹部に一撃を喰らわす!

勢いがつき吹き飛ばされるウサギ。

倒れたウサギにカラチは矢を放ち、次々ウサギに矢が当たっていく。

「えいっ!」

隙をついて旭さんが杖でウサギを叩き、トドメを刺していく。

「防御魔法をかけたんで、皆頑張ってや〜」

「お前も手伝え!」

完全に後方支援に回ったジャララさんはかなり遠ざかって俺達を応援する⋯。

(少しは手伝ってくれてもいいのに⋯)

口には出さなかったけれど、心の中で俺はそう呟いたのだった。




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