第11話 狙われるような事をしたみたいです

三番目に訪れた街は、今までの町よりもずっと大きく広く、一日では見て回れない位色々な店や建物があった。

「なんだか首都って印象がある街だね、旭さん」

「そうね。でもこの国の首都はもっと北の方角に進んだ所にあるんだって。前に道具屋で聞いたわ」

「へー、物知りだね旭さん」

「ふっふーん、もっと私を頼っていいのよ?」

ふんぞり返りながら自慢する旭さん。

(これが承認欲求というやつか⋯)

旭さんが元インフルエンサーだった事を思い出したけれど、俺はあえて何も言わずに相づちを打った。

「じゃあ、召喚者ギルドに登録を済ませて、食材を買っていきながら時間を潰そうか」

「そうね。だったら私が登録しているギルドにしない?

あそこは受付のお姉さんが親切丁寧な対応だったから、信用出来るみたいよ」

「へえ。じゃあそうしようかな」

そうして俺は召喚者ギルドで旭さんや受付の人に教えられながらギルド登録をするのだった。


「じゃあウチの所属ギルドに」

「行かへんわ」

こちらはジャララとカラチ。

何故かカラチに付いてきてジャララは離れようとしない。

「ったく、何でこんな所でお前に会わなアカンのか⋯」

ブツブツ呟きながら、カラチがなにかに気付いた顔をする。

「お前、確か前の世界でモンスターを操っておったよな?

まさか⋯トロールをワテらに差し向けたのは!?」

「え〜? 気付くの早いなあ。もうバレてしもうたわ」

ケラケラ笑いながら悪びれもなくジャララが喋る。

「あのギルドからの依頼で、カラチを探してくれって言われたんで、トロールも使うて捜索そうさくしとったんや。まあ連絡したんですぐに追っ手が来るかもしれへんなあ」

「他人事みたいに言うな!」

さすがにカラチも怒りの声を上げる。

「まあまあ、前の世界の仕事も関係しとるとはいえ、

あのギルドに入ったのが運の尽きやな」

そう言い合っているうちにカラチ達の周りに、ガラの悪い強そうな男達がゾロゾロと集まってくる。

「見つけたぞ〜」

「ギルドからの懸賞金が高いらしいじゃないかこのネコ」

「暗殺者ギルドに登録して抜けられる訳無いだろうが。

アイツらに目をつけられたのが運の尽きだったな!」

「殺してでも連れてこいって話だから手荒な真似をしてもいいよな!」

人気ひとけの無い路地裏、手に武器を持ち、囲まれている状況。

「ピンチ⋯やな」

「まあ頑張りや」

ポンッとカラチの肩を叩いてジャララは呼び出した鳥型のモンスターに掴まり逃げ出そうとするが、

「待て逃げるな」

カラチが足を掴んで降ろす。

「巻き込まれた⋯」

降ろされた拍子に鳥型モンスターは逃げていってしまい、ジャララは逃げ出せなくなってしまう。

「とにかくこの状況をなんとかするで!」

そう言いながらカラチは上着のポケットから丸い玉を取り出し、着火して地面に叩きつけながらカラチは口元を布で隠す。

「ゲホッ!何だこれ⋯」

「ウッ⋯身体が⋯動か⋯な⋯」

「今や! 煙を吸わんようにして逃げるで!」

煙を吸い込んで動けなくなる男達を横目に路地裏からカラチとジャララは逃げ出す。


「ハー、死ぬかと思たわ」

「ホンマやなあ」

「お前が言うな!」

原因であるジャララの発言にツッコミを入れるカラチ。

「まあカラチを連れてこいって依頼はこれで終わりやから、ウチはあのギルドからはもうなんの関係もあらへんわ。

後はアンタがなんとか決着を着けるだけやな」

「お前はええんか?

あのギルドに登録しとったんやないんか?」

「ウチは別ギルドやし、ギルド長に頼まれて依頼を受けただけや。

金の切れ目が縁の切れ目やし、後は知らんわ」

あかっけらかんとした態度をとってるジャララに、

「おま⋯後で刺されても知らんで⋯」

呆れた様子で喋りながら、カラチは宿屋の手配をして待ち合わせ場所に向かうのだった。

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