第10話 未だ知らない情報はあるようです

新たに現れた、カラチと知り合いらしき女性。死者へ祈りを捧げた後、俺達に自己紹介を始めた。

「はじめまして、やな。ウチは『ジャララ』と言います〜。

こっちでは僧侶をしとって、カラチとは同郷なんです〜。これからよろしゅう頼みます〜」

と、挨拶されたんだけど、

「まだ仲間にするとは誰も言うてへんやろ!

お前となんてパーティみた無いわ!」

カラチが断固拒否する。

「そないイケズな事言わんでもええやん。ウチと一緒におると特典目白押しやで〜」

そう言いつつカラチにコソッと、

「ウチ、情報知っとるから言わせてもらうけど、アンタ、あの組織から狙われてるで」

「なっ!?」

何かを告げられてカラチは驚いたリアクションをしている。

「あそことは縁を切ったはずやで!? まだ追ってたんか!?」

「そりゃウチと違って優秀やさかいな。離した無いんやろ」

そう言われて苦虫を噛み潰した表情のカラチ。

「えっと、俺は武闘家をしている宗也。こっちは魔法使いの旭さん」

「旭です。女の子が仲間になってくれて嬉しい!」

素直に喜ぶ旭さん。だが、

「仲間になる前提で挨拶せんでいいわ! それにコイツ、男やで」

「えっ??」

カラチの発言で旭さんの頭にハテナマークが浮かんでいる。

「元の世界では男、という意味や。こっちに召喚されたら何故か女になっとったんや」

「え〜? 別にいいじゃない。細かい事を気にしないのが長生きのコツよ!」

「いわゆるTSという事?」

「なんやそれ?」

専門用語を出されてカラチも戸惑っているようだ。

「まあそれは横に置いといて、今は日が暮れる前に次の街へ行こう。話はそれからだよ」

「ほな、レッツゴー!」

「ジャララが仕切るな!」

中々鋭いツッコミを入れつつ、先へ進んでいく。


あの分かれ道から1ソルダ(一時間)くらい歩いて、次の街、オードックへ着いた。

塀に囲まれていて頑丈な造りだ。門番の兵士も屈強そうな印象を持てる。

「これだけ頑丈で守りも強そうなら、街に魔物も入ってこられないだろうね」

「国の中でも一、二を争う位、守りが硬く兵士が強いと言われとるからなあ。ちょっとやそっとでは落ちへんやろ」

情報通らしくカラチが説明していく。

「カラチは何度かここに来た事があるの?」

「旭はん、ワテはここでこの世界の制度や仕組み、地理やギルドの存在を覚えたんや。情報を知るにはこの街はとっても役に立つで〜」

つまり常連ということか。

「じゃあここで数日滞在するのか?」

「いや、ええと⋯まあ買い出しとかの予定を済ませたらとっとと進んでいきまひょ」

長居はしたくないらしく、カラチはそそくさと門の方へ行き、門番に身分証カードを見せる。

「はい、召喚者カラチ殿ですね。どうぞお通りください」

「この召喚された時に貰ったカードは身分証にもなっとるんやで〜。肌身離さず持たんとあかんで」

「変な人には盗られないようにせんと、無くしたら還る事が出来へんようになってしまうで。スキル盗っ人とかあるらしいで。気を付けてな」

付け足すようにジャララさんも注意を促す。

「そうか、職業盗賊とかもあるからなあ。気をつけるよ」

「じゃあとりあえず今日のお宿を探しましょか。夕方の鐘が鳴る頃にここに集合しまひょ。それまでは自由行動で。ええでっか?」

「OK」

「分かったわ」

こうしてそれぞれ自由に街を巡る事になった俺達。

色々あったけど、何か気を紛らわす事を探してみよう。









  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る