第8話 ピクニック気分はここまでです

宿屋で素泊まりした翌日。

「おはよー。やっぱりベッドで休むと疲れが取れるわねえ」

ニコニコとしながら旭さんが挨拶してきた。

「おはようさん」

カラチがそう言いながら旭さんに手を差し出してきた。

「えっと、これは?」

宿代徴収やどだいちょうしゅうだよ。はいこれ」

俺は説明しながらカラチにお金を手渡す。

「くっ、世知辛い···」

渋々旭さんもお金を渡す。

「おおきに〜。ちゃんと支払っておくから安心してや〜」

ニコニコしながら会計に行くカラチ。こういう事はしょうに合ってるのだろう。

「じゃあ、次の街へ行こうか」

「次の街は⋯確か道が3つに別れていたわね」

「買うておいたここ周辺の地図見まひょか? ほいっと」

町の出口でカラチの地図を見せてもらい、確認を行う。

「ここがこの町で、だいたい1ソルダほど進むと分かれ道に着くのね」

「大きい街に行くにはこっちの道やで〜。召喚者ギルドもなんぼかあるんで登録しといた方がオトクやで」

「⋯⋯⋯」

「まあ中には怪しげなギルドもあるんで、慎重に選ばなアカンけどな。ん? 宗也はんどないしたんや?」

「ねえ、なんで俺が地図を広げてなきゃいけないの?」

俺が真ん中に立って見えやすい高さに持ち広げてる。

「女の子に荷物持たせる気?」

「ハイハイ分かりましたよ⋯」

半ば諦めたように呟きながら、旭さんの分もついでに荷物を持ってあげて町を出た。


歩き始めて一時間後、言っていた通り分かれ道に着いた。

「こっちが1番大きい街への道だっけ?」

「せやな」

人通りもある街道なので、俺達も街へ向かおうとすると、

「おいっ、待ちやがれ!」

後ろからどこかで聞いた事がある声に呼び止められる。

「?」

後ろを振り返ると、昨日いちゃもんを付けてきた男達が立っていた。

のだが、

「鎧を着けてなかったか?」

「うるせい! 起きたら武器以外無かったんだよ!」

「あらまあ、コソ泥に身ぐるみ剥がされたんやな。ご愁傷さまやわ」

「うるさいうるさい! お前が飲み物に薬でも持ったのが原因だろうが!」

そう言いながら怒り心頭という表情で盗まれなかった武器を手に持つ。

「いやあ、野蛮やなあ」

「カラチ、煽っちゃダメだよ!」

「何言ってんの、自業自得でしょ?」

「旭さんまでそんな事言って!」

慌てて2人を止めようとするけれど、もうすでに一触即発となっていた。

「やっちまえ!」

男達が襲いかかる寸前、脇の草むらから武器を持った背の低い魔物が数匹飛び出てきた!

「小鬼⋯リトルオーガよ! 気を付けて!」

旭さんはすぐに何かが分かったようで、注意を呼びかける。

「ふんっ、こんなの楽勝だ!」

すぐさまリトルオーガに向かって斧や剣を振るって倒していく男達。

「戦い慣れてるな」

「そりゃこっちに来てしばらく経つからな。嫌でもなれてくるさ⋯っと」

リトルオーガの攻撃をかわして剣で一撃を与える。

「よっしゃ経験値ゲット!」

少しづつ倒して数を減らしていたが、脇の木々からのそっと大きな物が動いたと思ったその時、

ブンッ!

空を斬る音と同時に、リトルオーガが数匹、その大きな物にぶん殴られて飛ばされる。

「な、何が起こっ」

グシャッ⋯

男の1人が言い終わる前に大きな物が男を叩き潰した⋯。

「あれは⋯?」

「ト、ト、トロール⋯」

「嘘やろ? この辺で現れる魔物やあらへん⋯」

2人の反応を見て、

「つまり⋯めちゃくちゃ強いって事!?」

俺の言葉にコクコク頷く2人。

会話している間にもリトルオーガや男達が次々やられていき、血溜まりが道のあちこちに出来ていく。

「ちなみに⋯復活とか生き返らせるとかは」

「無い」

「そんなん聞いた事ないわ!」

そんな上手い話はこの世界にはやっぱり無いのか!

このままでは序盤で終わってしまう。どうなる!?

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