第7話 交渉術はおまかせあれ!
ケット・シーのカラチに付き合い、食事をする事になった俺と旭さん。
「ここの飯屋、美味いんやで〜。覚えておいて損はないで〜」
こちらに来てから長いのか、旅慣れているのか、先頭に立って案内をしてくれる。
扉をくぐると、美味しそうな匂いと活気がお店に漂っている。
「いらっしゃいませー! あ、カラチさん久しぶり〜。今回はお連れの方も? じゃあこちらへどうぞ!」
カラチと顔馴染みらしい店員に案内され、4人がけの丸テーブル席に向かう。
「ここは煮込み料理が美味しいんやで〜。これは肉料理、こっちは野菜の炒め物なんや。冷ましてから食べたいんやけど、少し残しておいてくれへんか?」
「いいよ。皆で分けて食べようか」
「って、これ誰が払うの?」
「ワテのツレっちゅう事で今回は
ニコッとしながらカラチに言われたので、遠慮しつつ、いくつかの料理を選んでいく。
運ばれてきた料理が次々とテーブルに並んでいく。
「この魚料理美味しいわね!」
「フーフー、アチチッ!
熱いけど美味しいやろ?」
猫舌らしく、料理を冷ましながらカラチは食べ進めていく。
「これ⋯何で名前の食材なんだろう?」
最初の町で野菜を買った時は何の疑問も持たなかったけれど、落ち着いて食事をすると気になって仕方がない。
「これはこの辺でよく育てている野菜らしいで。栄養たっぷりって聞いたで〜。名前は忘れてもうたわ。ワハハ」
名前を知りたかったのに、まあ今度道具屋とかで聞けばいいか。
と思いながら野菜を食べていく。
食事を終わらせ、カラチが支払いを済ませて外に出ると、もうすでに日が落ちて外は真っ暗だった。
「今晩どないするんでっか?
宿屋はあそこにありまっせ」
そうカラチに言われたけど、
「1泊いくらかかるかな?」
「せやなあ、確か一人15エールやったで〜」
一人15エールって事は・・・、
「二人で30エール」
「私、そんなにお金持ってないわよ!? どうしよう・・・」
急に現実的な話になって慌てる旭さん。そんなにお金無かったのか・・・。
とはいえ俺も今日の買い物で手持ちのお金が少ない。
「皿洗いとかのバイトか手伝いで少し安くしてもらうとか出来ないかな?」
「召喚者専用ギルドから依頼された魔物を倒したりすればお金貰ったり出来るらしいんやけど、最寄りのギルドはここから結構離れた街にあるさかい、すぐにお金を稼げないらしいで〜」
召喚者専用ギルドがあるのか・・・と、俺はカラチの情報収集能力の高さに感心していた。
「あ、今晩なんやけど素泊まりで10エールにしてもらえるように交渉してみまひょか?」
「「ぜひ!」」
「でも、タダって訳にはいかへんな〜」
ニヤリとしながらカラチはこう提案してきた。
「これからワテも一緒に旅をさせてもらいわすわ。そんで毎回宿屋で交渉して割引いてもらう、というのはどや?」
結局一緒に行きたいのか・・・。
「どうする!?」
真剣な顔で旭さんが聞いてくる。
「まあこちらもしても値切り交渉してもらえると助かるし、いいよ」
少し考えたけれど、デメリットよりもメリットが大きく感じたので、俺はパーティ入りを了承した。
「ホンマでっか? おおきに!」
俺の手を握り、ブンブンと振って喜ぶカラチ。
「ただし、変なマネや裏切り行為をしたらすぐにパーティから出ていってもらうからそのつもりで!」
「イヤやなあ、そんな事せえへんわ。ほなこれからよろしゅう!」
こうして、召喚初日に仲間が増えた俺は、とりあえず宿屋でつかの間の休憩を取る事になった。
ただ、このペースで行くと返還の地までどのくらいの時間がかかるんだろう・・・という心配が頭をよぎったのは言うまででもなかった。
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