第5話 色々な世界で繋がっている(らしい)

元配信者で異世界召喚の先輩のあさひさんを仲間にした俺。

「次の町到着ー!」

バンザイしながら嬉しそうに旭は周りを見渡す。

「ここに来た事は?」

「最初の町とここを利用しながら暮らしてたけど、お金が無いから宿屋はあまり利用してなかったなあ」

まあ、戦闘のたびにMP切れを起こして宿屋のお世話になればすぐ金欠になりそうだ、と俺は思った。

「じゃあとりあえず泊まる場所探そうか」

「私、泊まるお金が⋯」

「宿屋じゃなくても町の中に野宿かキャンプ出来る所は? とりあえず魔物に襲われない所で一晩過ごす方法を覚えた方が、この先の旅に必要そうだし」

この先、町に着く前に日が暮れてしまう可能性も無くはない。そして道端みちばたで野宿していて魔物にでも襲われたら、還る前に命を落とす危険性も考えられるという事を説明した。

「なるほど⋯スライム相手に苦戦してた宗也くんらしい発想ね!」

「剣だったら楽勝だったよ。多分⋯」

少しムスッとしながら俺が言う。

「まあまあ人それぞれ向き不向きがあるから」

そう言いながら町中を歩くと、ガラの悪そうな男達がこちらを見ているのに気付いた。

「なんだか⋯目をつけられ」

「しっ! 気付かれないようにしながら遠ざかりましょ」

小声で話しながら離れようとするが、

「おい兄ちゃん達、俺達をジロジロ見てなかったか?」

「お前、まだ初心者みたいだが生意気に女連れかよ!」

予想通りウザ絡みされてしまった。

首からカードを下げているので同じ召喚者だと分かるが、使い古された皮の鎧を身に付けているのでこっちの世界の先輩と言えるかもしれない。

だけど威厳いげんを感じないんで尊敬は出来そうにない。

無視して先へ進もうとしたが、立ち塞がれてしまう。

「無視してるんじゃねえぞゴルァ!」

更にすごまれる。

だが、こちらもそんな挑発に付き合うつもりは無い。

「すいません、こちらはあなた達になーんの用もございませんので失礼します」

そう言いながら立ち去ろうとしたけれど、

「スカした態度取ってんじゃねえぞクラァ!」

まだウザ絡みをしてくる。

周りで野次馬が覗いてきたりして恥ずかしいので、いい加減ここから離れたいのだが一本道を通せんぼされて身動きが取れない。

そんな時、

「ハイハイごめんなさいな〜、通して通して」

野次馬の中から少し高めの声が聞こえてくる。

そこの中から飛び出してきたのは、二本足で歩く、洋服を着こなした喋る猫だった。

「まあまああんさんら、これでも飲んでちょっと落ち着きましょうや。ホイ」

そう言いながら水筒らしき入れ物から飲み物をコップに注ぎ次々と手渡す。

「⋯おう」

ガラの悪い男達は勢いを削がれ、手渡された飲み物を飲み干す。

「ごちそうさ⋯」

言い終わる前に全員バタバタと倒れ込む。

「そうそう、言ってなかったんやけど、このお茶睡眠薬入りなんや。さて」

そう言いながら猫は俺達を向いて、

「ここに放置では邪魔になってアカンので、そっちの端にのけてもらうん手伝ってもろてよろしですか?」

「⋯⋯⋯」

じい〜っと猫を見たまま、旭さんが固まっている。

「ん? どないしました?」

「⋯猫が喋ったー!」

「そっちかいな!」

旭さんの言葉に思わずツッコミを入れる猫。

猫嫌いの反応では無かったらしい。

「⋯ケット・シー?」

俺は昔やったRPGで見た異種族の名前を告げてみる。

ただ、あちこちの方言が混ざったような言葉使いだという意外な印象だった。

「お、よう分かりましたな。ワテも他所よそから召喚されたクチやねん。ワテの名前は」

そう言いながら自分のカードを裏返し、

「リチャード・ジャクソン・ニクソン・シャルル⋯」

「⋯それ本名?」

あまりにも長いし、カードの裏側を見ながら喋っているので、俺が聞き返すと、

「ありゃ、冗談やったのに通じませんか。じゃあ」

改まってお辞儀をしながら、

「カラチ・アフニと言いますねん。カラチと呼んでええで。職業ジョブ狩人かりうどです〜。ほなこれからもよおしう」

そう自己紹介しつつ、カラチはニコッと笑った。


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