第4話 まさかスキルが役に立つとは

何で名前を知っているのかと不審に思っているらしい魔法使いのあさひ

「何で⋯?」

バックからフライパンと食材を取り出しながらスマホも一緒に取り出し、スクショしておいた記事を見せる。

そこには、

『人気インフルエンサー行方不明!』

『登録者数100万超えの彼女はどうして雲隠れした?』

等の文面と共に旭の写真も載っていた。

「数ヶ月前にあっちで行方不明になったって、ニュースになってたんたよ。結構話題になっていた」

まさか異世界召喚されているなんて誰も思っていなかったらしい。

旭は画面をまじまじと見ながら、

「もっと可愛く映っている写真を使ってくれたら良かったのに⋯」

と、ネットの反応よりも写真映えの方を気にしている。

そんな旭を置いておいて、邪魔にならない道端みちばたで、拾ってきたまきを並べ、紙に火打ち石で火を着ける。

簡易式のたき火だが水を沸かす程度には問題無いだろう。

次に、まだ封を開けていないペットボトルの水を取り出しておいて、さっき買っておいた野菜や干し肉を適当な大きさにナイフで切って水と一緒にフライパンに入れて煮る。

「何でナイフ持ってるの?」

こっちの作業に気付いた旭に聞かれ、

「ボーイスカウトの時の癖で、キャンプ用の十徳ナイフはいつも持ち歩いているんだ。学校の荷物検査の時は家に置いとくけど、まさかこんな時に役立つとは思ってなかった」

そう言いながらコンビニで貰ったスプーンで塩を入れて、味見していく。

「意外と器用なのね⋯」

「俺、親父と2人暮らしで料理担当だから、簡単なのはだいたい作れるよ」

手際の良さに感心しているらしい旭。段々と美味しそうな匂いが辺りに漂ってきた。

「塩だけの味付けだけど、どうぞ召し上がれ」

「あ、ありがとう⋯」

別のスプーンを出して、町で買っておいた器に塩スープを盛り付け手渡す。

旭はフーフーっと冷ましながらスープを食べていく。

「美味しい! なんだか力がみなぎっていくみたい!」

ニコニコしながらパクパク食べていく。

俺もそれにならってスープを平らげていく。

「本当に回復したみたいな感覚だわ」

「いやそんな大袈裟な」

と、言いつつふと俺のスキルを思い出した。

自己回復オートヒーリングって、ひょっとして料理にも効くのか?」

そう小さく呟くと、聞こえていたらしい旭は自分のカードに触ってステータスを見る。

「ねえねえ、MP回復してるんだけど!」

「えっ、マジ!?」

「自己回復って、大当たりスキルなんじゃない? いいなあ⋯」

「そう言っても小回復だからあまり期待しない方が⋯」

そう会話をしつつ、2人でスープを全部平らげた。

「はー、お腹いっぱい! ご馳走様でした」

「どうもお粗末様でした」

返事をしながら手持ちのウエットティッシュで食器を拭いたりゴミをまとめたり片付けていく。

「さて、次の町へ行くか」

そう言いながら立ち上がると、

「待って、私とパーティー組まない?」

と、旭から提案される。

「えっ? パーティーって、戦士とか魔法使いとか4人でチーム組むってあのパーティー?」

俺が質問すると、

「そう、そのパーティー! 私が後衛で魔法でサポートしてあなたが前衛で攻撃と料理で私をサポート。どう? 良いアイディアだと思わない?」

確かに、一人よりも二人の方がお互いにサポート出来るし心強い。

だが、ふとこう思った。

「⋯料理でMP回復出来るから魔法打ちまくれてラッキーと思ったとかじゃないよね?」

そう聞いたら、旭は顔を背けた。

(図星だったのか⋯)

まあ断る理由も無いから、

「OK、パーティーを組もう。旭さん、これからよろしくお願いします」

「こちらこそよろしくお願いします! 宗也そうや⋯さんって名前でいいんだよね?」

うろ覚えだったらしく、確認しながら名前を呼ばれた。

「はい。じゃあ早く次の町に行こうか。ここで野宿は危険みたいだ」

通りすぎる召喚者らしき人々を横目に、そう言って次の町に向かうのだった。

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