第2話 初めの町

 召喚された場所から少し道なりに進んだ所に小さな町が見えてきた。

ほとんどの人が一旦そこに立ち寄るらしい。

 「お金もあるし、次の町までどれ位時間がかかるか分からないから、寄って必要な物を買っていくか」

 言葉が通じるかは分からないが、情報が少しでも聞ける事が出来たらいいと、軽い気持ちではあった。


 「この野郎! 足元見やがって! ボッタクリじゃねえのか!?」

 町に入るなり怒号が聞こえる。

 何かのお店の店員とさっき召喚されてきた屈強な男性が揉めているみたいだ。

 「大変だ、早く止めないと!」

店員がケガをするんじゃないか、という心配よりもこちら(召喚された人)の印象が悪くなる事を心配して止めに入ろうとすると、

「まあ待てお若いの。アイツなら大丈夫だ」

町民らしき人にこちらが止められた。

「えっ? でも」

そう言っている隙に、屈強な男性が道路の向こう側に吹っ飛んでいった。飛ばされた男性は道路の端でのびている。

「えっ!?」

慌てて店の方を見ると、パンチを繰り出した態勢の店員がいた。

 「ほらな。こっちはこういう事に慣れてるから、自分を守るために鍛えてるのさ」

 なるほど…じゃなくて、この世界の人が魔王退治に行った方がいいんじゃないか?

「今回喚ばれたのは中々強そうなのばかりかと思ったが、案外弱っちいのか? 期待して損した!」

手をパンパンッと叩きながら店員が挑発ちょうはつするように呟く。

「喚ばれたって、ひょっとして召喚が行われている事をこの世界の人は知っているんですか?」

機嫌を損ねないように敬語を使って店員に声をかけてみる。

 「ん? ああ、お前も喚ばれた口か? ここは召喚場からすぐの町だからな。そういう情報は通達されてるんだよ。それよりもどうだい? 薬草とか買っていくかい?」

 さっきの騒動など無かったかのように振る舞い、店員は商品を薦めてくる。

 (なんか、ノンプレイヤーキャラと話しているかのようなテンプレセリフだな…)

 ちょっと強引な売り込み方だったが、とりあえず、

「じゃあ…野外でも使える調理道具と野菜とかありますか?」

と、聞いてみた。

 「調理道具? あんた珍しいな。普通の召喚された奴らはそこまで考えずに回復道具しか買わないのに」

「無い…ですか?」

 「ちょっと待ってな。えーと、確かここに」

店の中をゴソゴソ探す店員。

「お、あったあった」

木箱の中から一人用フライパンとフライ返しを出してきてくれた。

 「へー、これはちょうど使いやすそうですね。おいくらですか?」

フライパンを手に取りながらサイフと相談するために聞いてみる。

 「兄ちゃん気に入ったから火打ち石とセットで大まけにまけて400エールにしてやるよ。確か召喚された奴らは一人500エール貰えただろ? 後は野菜…まあこっちもまとめて50エールにまけるよ」

 「商売第一主義のガンツにしては珍しいな」

「トガのおやっさん…俺だって値下げする時はあるんだぜ? それにコイツは見所ありそうたからな」

そう言いながら肩をバシバシ叩かれる。

 「ありが…とう…痛た…」

叩く勢いが強くてちょっと肩が痛くなってしまった。

(ここの通貨ってエールって言うんだ)

1つためになる事を聞けた、と思った。

 「次の町までは道なりに大体1、2ソルダ歩けば着くと思うぞ。途中魔物とかが出てくるが、この辺は弱いのしか出てこないからヘマしなきゃやられはしないだろう」

 「色々教えてもらってありがとうございます」

 ソルダ…時間の単位かな?

そう思いながらバックパックの中からエコバッグを取り出し、フライパンや買った物を入れる。

 「そのカバン、背負うんで両手が空くし大きいから便利そうだな。作って売ったら儲かりそうだ」

店員が呟くのが聞こえる。確かに便利は便利だ。

 「じゃあ、色々ありがとうございます!」

こっち流の挨拶は分からないけど、お辞儀をして地図も確認しながら次の町へと向かっていく。

 この先何と出会うのだろうか。

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