第5話 職業試験4

35分達成。この時点で由良の記録は超えている。しかも余裕を残しているというのは偉業である。

さすがのリアルチートな身体能力と感性だなぁと由良が第一の街で中継されている動画を見ていると、数人のプレイヤーも騒ぎ始める。


「なんだこれ...チート?」

「流石にないだろ。すっげえ身体能力してんな...」

「いや待てなんでそれ反応できるんだよ」

「後4分で第二ボスか...あ、やっと第一ボス撃破した。剥ぎ取りも手際良いな...」

「暗殺者系じゃんこいつ。あーあ、すげえと思ったのに」

「あーそれでか、下方修正入ってんのかな?」

「わい暗殺者系統の暗殺王やで〜下方修正なんか入っとらんよ〜」

「死神さん!? なんでこんなとこに!?」

「すごいルーキーが出てるって海鳥ちゃんに聞いてね〜」

「いやけど分からんやろ。下方修正入っとるかも...って死神さん!?」


あ、あいついるのバラしやがった。


「海鳥ちゃんいるの!? どこだああああああああああ?!?!?」

「もうギルド出たって聞いたよ。あっちじゃん?」

「「「ありがとうございまあああああああああす!!!!!!!!」」」


「さて、海鳥ちゃん。この子誰?」

「流石っす死神さん。私のリアルの友達っすよ」

「凄い身体能力だねえ... 取り敢えず見ていますかぁ...」


______________________________________

トッププレイヤー二人に注目されているそんな時鳥は、第二ボスへの対策のための罠を追加していた。

「計算通りにはいかないか... こりゃもうちょっと頑張らなきゃな...」


毒の補充のために少々魔石を使いすぎてしまい、斧と盾の分の魔石が足りなかった。しかも罠も予想以上に使ってしまった。AIが学習したのか、広範囲の罠を稼働させながら死ぬ配下が出てきたのだ。

さて、第二ボスだが、俺が見た動画では機械型だったのだが...


「君が私の相手?骨がありそうじゃない。」

「...由良!?」


特殊な暗殺者ルートでは、そのプレイヤーの記憶の中で一番強いプレイヤーが参照される。

勿論、動画などを見ずに来た場合は超強化されたヒューマノイドが相手だった。一応機械型である。

しかし運営が「こいつ対策しすぎだろ!? ムカつく! 難易度MAXにしとこ!」ということで...


成功率2%以下の、超絶難しいルートに誘導されてしまったのだ。


「さて...まずは...<魔導開花>」

「くっ!?」

ギリギリでナイフで軌道をずらし、回避する。これが由良という、海鳥というプレイヤーの戦い方である。特殊魔法<開花>系統。この魔法は自分自身の才能を開花させることに重きをおいた魔法である。万能でありながらその全てにおいて超一流の海鳥というプレイヤーは、一桁代常連にまで上り詰めた。


しかし、それの軌道に干渉する時鳥も大概である。

本来、このゲームにおいてLv.1 とは最弱の存在である。

対して海鳥のレベルは99Limited。現段階で最高レベル。

これ程のレベル差があれば、膂力など赤子と巨人程の差があるだろう。


最適なタイミングで、最適な方向から、最適な速度で、最高の威力の刺突。


一瞬の思考時間で、そこまでを計算しきった彼も、また天才である。

事実、運営も「キモすぎワロタwwwwwwww」と爆笑していた。


「...紛い物だ。お前なんか本当の由良じゃない。」

底冷えするような怒りの声が、時鳥から発される。

「ん?何を言っているの?由良って「ふざけるな!」」


「由良は、俺の幼馴染みだ!海鳥は、俺の幼馴染みのアバターだ!!!!!」


一呼吸置いて、彼は叫んだ。


「紛い物の分際で、あいつの努力を盗んでんじゃねぇよ...」


<秘匿通知 運営宛>

<暗殺者ルート・永遠の歩みを開放します。>

<達成条件 NPCへの正面からの威圧 格上への勝利>


その日、絶対に生まれるはずがなかった最強の職業につくプレイヤーが現れた。

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