第12話 新編、第五艦隊

西暦1944年9月1日 大日本帝国 函館港


 この日、北海道は函館港にて、連合艦隊に属する部隊の一つ、第五艦隊の新編が行われていた。


 この時点でソ連海軍太平洋艦隊の規模は、金剛型戦艦並の戦闘能力を持つ63型装甲巡洋艦2隻に、並みの重巡を大幅に上回る火力を持つ83型重巡洋艦1隻、最新鋭の68型軽巡洋艦を含む軽巡洋艦4隻、駆逐艦16隻、潜水艦18隻といった大戦力を取りそろえ、アメリカ率いる連合軍との戦闘を考えると、国防上の懸念材料として海軍の頭痛の種となっていた。


 これに対抗するべく、戦前より大型艦が修理可能なドックや基地設備を函館や室蘭に建設し、そして先日の千島列島沖海戦を機に、海防艦以外の戦力も充実するべきという意見が採用されたのである。


 まず艦隊旗艦は「吾妻」が務め、さらにそこに金剛型戦艦の代艦として建造が進んでいた3番艦「白根」と4番艦「磐城」が就役。空母は引き続き「隼鷹」と「飛鷹」が充てられたが、今度はその改良型であり、暴走するアメリカに辟易して第三国を介して亡命してきたユダヤ人技術者の協力の下で強化された新型艦「白龍」も配属された。


 軽巡洋艦も阿賀野型3番艦「矢矧」に加えて、その改良型である四万十型2隻が着任しており、駆逐艦は空母直轄の改秋月型4隻と、12.7サンチ連装高角砲2基を装備した改松型駆逐艦8隻。そして新型ソナーや噴進爆雷砲、37ミリ機関砲によって十分な対空・対潜能力を有する海防艦12隻があてがわれ、ソ連の水上機動艦隊や潜水艦に対する対策を万全なものとしたのだ。


 そして連合艦隊自身も、雲龍型空母の量産が進んだ事や、限られた海域の制海権保持に集中した事で、資源を安定して輸入できる様になっており、新型艦の建造や整備が進んでいた。


 まず戦艦は、現状保有している14隻のみに留め、以降は吾妻型大型巡洋艦の量産に注力。空母は戦前から有する8隻のうち「鳳翔」と「龍驤」は練習艦として運用。正規空母6隻と開戦後に就役した大鳳型2隻、雲龍型4隻で2個航空艦隊を編成し、商船や補助艦艇改造の軽空母12隻は水上機動艦隊の防空戦力ないし通商路護衛艦として運用する事となっている。


 巡洋艦は吾妻型の量産以外にも、旧式艦のタイや中華民国への譲渡による更新を進め、沈没艦を除くと大型巡洋艦3隻、防空巡洋艦4隻、重巡洋艦14隻、軽巡洋艦14隻を有する状態となっている。駆逐艦も同様に、陽炎型や秋月型、松型を主力とした80隻近くを維持しており、海防艦と合わせて相当数の兵力を揃える事に成功していたのである。


 そして時は流れて10月下旬、アメリカ海軍は戦力を再編し、勝利で増長しているであろう日本の連合艦隊を完膚なきまでに叩き潰すべく、フィリピン攻略作戦を決定。潜水艦による通商破壊戦を継続しつつ、日本との一大決戦に臨もうとしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

超巡洋艦ウラジオストク 広瀬妟子 @hm80

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ