第7話 第三帝国の拡大
西暦1942年9月1日時点で、ドイツ国防軍の戦力は非常に強大なものとなっていた。
そもそもの理由として、ドイツはこの時点でポーランドを事実上の属国としており、国内の工業地帯を軍事兵器の生産拠点として利用していた。ドイツはメフォ手形という虚構の財源を抱えていたが、戦前より兵器を世界各地に売った事や、バルカン諸国の統一を目論むオーストリアに多大な支援を行った事で多少は返済。さらにオーストリアやチェコスロバキアからの税収もあって、経済状態は多少改善していた。
さらに1942年1月には、フランスがイギリス・オランダ・ベルギーと連合を組んで宣戦布告し、ルール地方の制圧を目論んだのだが、その頃には単純な火力強化のために長砲身75ミリ砲を装備した4号戦車や、その後継として開発された5号戦車が配備される様になっており、30万もの兵力は僅か6万程度の防衛線で食い止められたのである。
こうして連合軍を撃退したドイツ軍は、カウンターとしてオランダ・ベルギーに再侵攻し、そのままアルザス・ロレーヌ両地方へ突撃。数百両の4号戦車G型と5号戦車を先頭に立てた6個装甲師団は、機動力の低いイギリス軍の歩兵戦車を蹂躙し、運用が旧式化したがためにまともな運用が成されていないフランス軍の戦車部隊を撃破。賠償としてアルザス・ロレーヌ両地方の領有を宣言し、マジノ線を無力化したのである。
無論、戦車含む装甲車両の開発・生産・改良は続く。この頃になるとドイツ軍は分業体制を確立し、ドイツ本国は5号戦車及びその後継の戦車の開発と生産に集中。4号戦車や2号戦車の系譜に連なる軽戦車、より安価な3号突撃砲や自走砲はチェコスロバキアやポーランドにある企業でのライセンス生産となり、特に4号戦車はトルコやルーマニア、そして満洲国でのライセンス料で多大な利益を発生させる事となった。
そうして新たに編成された第16装甲師団は、200両の5号戦車と100両のケッチェン装甲車で構成される2個戦車連隊、100両の4号戦車と200両のKfz251装甲車で構成される装甲擲弾兵連隊、フンメル自走榴弾砲を中心に構成された自走砲兵連隊など、機動力を持つ装甲車両のみで編制された機甲師団として、たびたびメディアに取り上げられる事となった。
海軍も同様に、ドイツ国内のみならずポーランドやデンマークといった保護国名義で占領されている国の造船所が利用され、Z計画に基づく艦船整備計画は滞りなく進められていた。この時点でドイツはデンマークをいちゃもんをつけて占領したのみならず、ソ連をバルト海に閉じ込めておくためにノルウェーにも上陸。英仏の反応を警戒してドイツ側に有利になる様な条約を結ばせる程度にとどめたものの、デンマーク領海は完全にドイツ海軍の庭と化したのである。
まず戦艦であるが、最新鋭のフリードリヒ・デア・グローセ級戦艦やビスマルク級戦艦、プリンツ・ハインリヒ級戦艦含む戦艦6隻を有し、それを補助する戦力としてプリンツ・ループレヒト級襲撃艦を4隻建造。襲撃艦は30センチ三連装砲3基と15センチ連装砲4基、12.8センチ両用砲4基に53.3センチ四連装魚雷発射管を有する巡洋戦艦であり、トルコに売った旧シャルンホルスト級戦艦や、スペインに押し付ける形で売ったドイッチュラント級装甲艦以上の性能を有していた。
続く空母であるが、こちらは日本からの秘密裏の支援もあって、グラーフ・ツェッペリン級空母2隻と商船改造のライン級軽空母2隻の4隻を保有。補助戦力として日本の千歳型水上機母艦のライセンス建造艦たるドクトル・エッケナー級水上機母艦も2隻有し、洋上での制空権確保に大きな役目を果たす事となった。
続いて巡洋艦は、戦艦を必要としない様な戦場での通商破壊戦を主目的としたアドミラル・ヒッパー級重巡洋艦4隻と、同様に通商破壊戦をメインとした軽巡洋艦6隻を有していたが、追加で建造されたメクレンブルク級軽巡洋艦4隻は、空母機動部隊の防空艦として建造されており、15センチ両用砲4基に10センチ単装高射砲4門を装備した対空巡洋艦として完成していた。
駆逐艦は戦前に建造されたもの12隻は、スペインやトルコに譲渡され、真の意味で外洋での艦隊運用に適合したもの36隻が整備。沿岸防備用に二等水雷艇24隻が建造され、潜水艦も遠洋で活動できるもの300隻が整備。まさに
そして空軍であるが、運用と目的に応じた計画の再構築と整理が進められていた。まず戦闘機は外征用の主力戦闘機としてフォッケウルフ社の〈Fw-190〉が定められ、メッサーシュミット社の〈Bf-109〉は性能の旧式化や、実際の運用における諸問題から、都市部の防空機として運用される事が決定。それも新たに開発されたMe-262〈シュワルベ〉ジェット戦闘機によって更新される事となる。
爆撃機も、戦線支援を担当する急降下爆撃機や中型爆撃機は、日本との秘密裏に進められた共同開発で得た新型機やアラド社製のAr-234〈ブリッツ〉ジェット爆撃機へと更新。そしてハインケル社は新たに大型戦略爆撃機の開発を開始。パリやアムステルダムのみならず、ロンドンやモスクワも灰燼に帰する事の出来る怪物機を生み出そうとしていたのである。
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