第一章13【独りでの依頼】
「━━よし、じゃあ始めるとするか」
この日、シュウはいつもと違い、独りで依頼をこなしに来ていた。ミラにはものすごく文句を言われたが、今度難易度の高い依頼を一緒にやる約束をしたことで、なんとか許してもらえた。
その理由としては、2人よりも、1人で依頼をこなした方が、ギルドからの評価が上がるためだ。ここ最近は、ミラと一緒に依頼を行うと、魔物との戦闘もかなり楽になっていた。そのためここは気を引き締める必要があると感じ、シュウは独りで依頼に来たのだった。
「討伐対象、ヘルシュヴァイン」
ヘルシュヴァインとは豚の魔物である。一見すると豚のようだが、大きな牙が2本生えている。突進か、牙を振り回す以外はしないが、もし当たれば重傷は免れない危険な魔物だ。
人里に降りては、農作物などを食い荒らすので、討伐対象になりやすい魔物でもある。
「足跡はもう見つけてる」
シュウは森に入り、ある程度探索したところで、ヘルシュヴァインの足跡を発見していた。足跡の新しさから、この近くにいるのは推察できる。
追跡をしていたら、茂みから音がしたので警戒をする。すると茂みの中から魔物が姿を現した。ヘルシュヴァインだ。
「来い。今日は独りだ。油断はしない」
こちらの言葉を理解したかのように突進してくるヘルシュヴァイン。だが、既にシュウにとっては見慣れた動きであり回避もたやすい。
「くらえっ!」
攻撃を躱し、剣で攻撃をする。剣で頭を刺され、ヘルシュヴァインは息絶える。
「まあ、こんなもんか」
やはりFランクの魔物との1対1では、もはや相手にならない。ランクアップも近そうである。
「特定部位を回収するか」
今回の依頼対象はヘルシュヴァイン3体の討伐なので、あと2体だ。このままいけばすぐに終わるだろう。
「……は?」
急に片足が地面に沈み込み、動かなくなる。焦ったシュウは足を見るが、どうやら足が地面に出来た穴に埋まり、動かなく無くなってしまったようだ。
「どういうことだ?……まさか!?」
先日、ギルドで読んでいた魔物図鑑に載っていた魔物、エルドモール。地中に潜む魔物で、基本的にこちらに害を与えることはしないが。地上に近い地中を掘り進めた際、そこの地面が脆くなり、天然の罠のようになると書いてあった。
まさかこれはエルドモールの穴か。
「しかも……まじかよ」
穴に足が埋まり、もがいていると、茂みからヘルシュヴァインが2体現れた。これはかなり危険だ。
「!?……くそっ!」
突進してきた1体を何とか剣を使って凌ぐが、その衝撃で剣が飛んで行ってしまった。このままでは、次の攻撃を凌ぐこともできない。
足は未だに動かず、武器もなくなった。ヘルシュヴァインは再び突進の準備をしている。
「これは!本当にやばいぞ!!!」
ヘルシュヴァインがこちらにしてくる。足はまだ抜けない。このままだと奴の牙に貫かれる。何とかしなければ。何とか━、
次の瞬間、どこからか飛んできた炎が、ヘルシュヴァイン達を飲み込み、吹き飛ばす。そのままその魔物達は絶命したのだった。
驚いて目を見開いているシュウに背後から近づく冒険者がいた、その冒険者は身体の周りに無数の炎を纏っていて、
「━━こんなところで、なにをしてるのかな?」
極めて静かに、だが怒りを隠しきれない声でミラは話しかけるのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます