第46話 オアシス都市パミール②

 早朝、俺達はオアシス都市を出る。


 デザートウイングは岩山に巣を作るらしい。

 基本的に奴らは単独行動か、つがいで行動する。数が増えると群れを形成することもある。

 この群れが育つと人間にとっては災厄となる。


 だから定期的に間引きをする必要がでてくるのだ。

 全滅させないのは、やつらはデスイーターにとっても天敵だからだ。

 デザートウイングがいなくなるとデスイータが繁殖してしまうらしい。


 オアシス都市から数時間ほど歩くと遠くに岩山が見えてきた。


 いる。上空を飛んでいるのがデザートウイングだ。奴も俺達を見つけたのだろう。

 何度か独特の鳴き声あげたと思ったら、数匹ほど岩山の穴から飛び出してきた。

 俺達を攻撃するつもりだろう。


 俺は剣を構える。

 セバスティアーナさんは背負っている九番の魔剣『ノダチ』を下ろすと鞘の部分を左手で持ち腰の当たりで固定した。

 以前見せてもらった抜刀術の構えだ。あの間合いに入ったら相手は確実に斬られるだろう。


 そして、シャルロットは俺達の目の前に立つ。

「ふふ、鳥なら私にまっかせなさい! いくわよ! 『ツイスター』!」


 目の前で竜巻が起こる。

 それは砂を巻き上げながら、今しがた飛び出したデザートウィングの飛行を乱す。


「前回の私は役立たずだったから、少しカッコつけさせてもらうわ。つづいてもう一発、『ヘルファイア』!」


 中級魔法を連続で放つシャルロット。さすがはマスター級だ。


 ヘルファイアの炎は竜巻に吸い上げられ勢いをまして炎の渦とかした。


「おお、シャルロット様、中級魔法の二重掛けとは、久しぶりに見ました、お見事です」


 炎の渦に巻き込まれたデザートウィング達は空中で焼かれ、地面に落ちてくる間には絶命していた。


 かろうじで回避した個体も所々にやけどを負っているのか、不安定な動きをしながら俺達に急降下してくる。

 俺はすかさずシャルロットの前に立ち、剣を構える。


 奴の鋭い爪が剣にぶつかり火花が散る。


 この爪が厄介だ。

 おそらくはこの鋭い爪で獲物の肉を突き刺し、そして空中を飛びながらじわじわと殺すのだろう。


 だが、俺も修行の成果がでている。

 どんなに鋭いと言っても所詮は足は二本、さばけないわけではない。


 セバスティアーナさんの体術の前にはこいつの動きなど児戯に等しい。


 奴は再び上空に逃げるともう一度急降下を仕掛けてきた。

「今度はやってやる。いくぞ! 『ヘイスト』!」


 俺は自身にヘイストを掛け、上段に構えた剣を一気に振り下ろす。

 奴の爪が届く前に目の前の一体を斬り伏せた。


「よくやりました。見事な一撃、それに見切りも上手くなっていますね。教えた甲斐があったというものです」


 セバスティアーナさんは涼しい顔をしていた。

 彼女の周りには首の無いデザートウィングの死骸が数体転がっていた。


 やはりこの人は強いな。敵と戦いながら俺のこともしっかりと見ていた。


 その後も俺達は砂漠を歩きながらデザートウィングを狩っていった。


 討伐の報告は奴の体の一部を持ち帰れば良いらしいので、俺達は奴の右足を切断し袋に入れた。

 俺の戦果は3本、セバスティアーナさんは10本、シャルロットは20本を超えていた。

 さすがに持ちきれないしこの辺で撤収するとしよう。


「今日はシャルロットの大手柄だ。なにか食べたいものはあるかい?」


「そうね、鳥肉……以外なら何でもいいわよ。」


 よかった。俺もそれには同意だ。

 さすがに見飽きた。というか集団で襲ってくる鳥というのは結構気持ち悪いのだった。


 討伐報告をすると、報酬は金貨10だった。


 あれだけ倒したのに10枚とは少しがっかりだった。デスイーターの毒針は1個で金貨1枚だったというのに。


 あの毒針は素材として優秀らしいので、その値段らしかった。

 逆にデザートウイングに希少な部位はない。


 足の爪が軽くて丈夫ではあるが、そこまでの価値はないらしい。数が増えれば厄介というだけでそこまで強い魔物でもないらしい。

 そうか、どうりで俺でも簡単に倒せたのか。

 俺もまだまだのようだ。セバスティアーナさんに褒められて少し調子に乗ってしまったようだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る