第45話 オアシス都市パミール①
翌朝。
セバスティアーナさんは、いつものメイド服に着替えていた。
さすがに戦闘服で街に行くと目立つということだが、剣を三本装備しているメイドも目立つと思うんだよな、まあ、こっちの方が多少は平和的でいい。
俺も戦闘服を着たセバスティアーナさんは昨日の事もあって怖いのだ。
殺気という訳ではないが、なにかピリピリとしたオーラが見えそうになる。
俺達はカルルク帝国最南端のオアシス都市パミールに到着した。
街の周囲を囲う城壁は砂漠の色そのものだったが。中に入ると別世界だった。
もちろん、地面には砂利や砂があり舗装された道路はない。
しかし、道の周囲には南国の木々が生えている。そして畑が見える。
ここには土があるのだ。
そして様々な商店が並び、街には人が溢れている。
久しぶりに活気のある街に来た。
「ねえ、さっそくいい宿をとりましょうよ。それから屋台で美味しいものでも探しましょう」
「ふふ、シャルロット様、それは大賛成ですが。お金がありませんよ? お二人はグプタでお楽しみだったと聞きました。私もいい宿に泊まりたいものですね」
う、皮肉だ。俺達が道中散財したせいでお金がないのだ。
でも戦利品がある。
「セバスティアーナさん。このデスイーターの毒針を売ればお金になるんですよね?」
「ああ、すっかり忘れていました。それを売ればたしかにいい宿には泊まれますね。
でも、それで終わりです。今後の事もありますし、あまり散財するのは……そうですね、せっかくですから冒険者ギルドの討伐依頼でも受けてみましょうか」
俺達は冒険者ギルドにやってきた。
そして受付のカウンターでデスイーターの毒針の換金をお願いした。
「デスイーターの毒針が五つ。状態がよいですね。鑑定まで少しお時間をいただきますがよろしいですか?」
「はい、構いません」
受付のお姉さんが奥に行き。再び戻ってくると他の冒険者の相手をしている。
鑑定はカウンターの奥の部屋で行われているのだろう。
「ではカイル様、鑑定が終わるまでこの冒険者ギルドにある依頼書を見てみましょうか」
カウンターの反対側の壁にはたくさんの依頼書が張り出されていた。
大抵は商隊の護衛任務がほとんどだった。
だがそれは長期の任務になるし、旅の融通が利かなくなる。
商隊の護衛任務には水魔法が使える魔法使いは優遇と書いてある。
水がここまで貴重だというのを実感する。
「ねえ、これを受けてみましょうよ」
シャルロットが張り紙を指さして言った。
どれどれ。デザートウイングの討伐任務か。
――近頃、砂漠の怪鳥、デザートウイングの数が増え、商人や旅人の被害が増えてる。
カルルク帝国はデザートウイングの間引きを決定した。帝国の特別予算が可決したため、冒険者諸君はぜひとも参加してほしい。――
丁度いいな。
難易度もさほど高くない。
しかしデザートウイングってどんな奴だろう。怪鳥って言われてるくらいだから鳥の魔物だというのは分かるが。
「セバスティアーナさん、デザートウイングってどんな魔物なんでしょうか?」
「そうですね、人ほどもある大きな鳥です。鋭い爪でラクダを攫っていく厄介な魔物です。
人に対しての警戒心が高く、滅多に人は襲いません。
しかし数が増えたという事ですので、奴らもなりふり構わなくなったのでしょう。
多少の危険を犯しても獲物を捕らえなければ、彼らも餓死してしまいますから必死なのでしょうね」
デスイーターの毒針の鑑定が終わり、俺達はカルルク金貨五枚を受け取った。
一本当たり金貨一枚の価値だ。
金貨一枚あれば比較的高級な宿に泊まれるだろう。
今日はもう午後をすぎているため早めに宿に泊まることにした。
節約するべきだろうがセバスティアーナさんはずっと安宿に泊まって、わざわざ俺達に会いに来てくれたのだ。
それに引き換え俺達はグプタで散財した。
ここで俺達が節約しようといったら軋轢が生じてしまうだろう。
俺達は冒険者ギルドで依頼を引き受けると。
明日に備えこの街で一番の高級宿に泊まった。
そこはまるで宮殿のような壮麗な建築物であり、ゴージャスな装飾が施されている。
宿の中庭には、美しい庭園が広がり、花々や噴水がある。
他にもプールや温泉が完備されており。
客室内は涼しい風が吹き抜けている。
「さ、さすがだ、一泊金貨一枚だけのことはある」
「すっごーい、プールよ! 荷物を降ろしたらさっそく入りましょうよ、セバスティアーナさんは水着を持ってますか? ないなら今から買いに行きましょうよ」
「はいはい、シャルロット様は水遊びが本当にお好きなのですね」
楽しそうな女性陣。
まあ、これは必要経費だ。明日から稼げばいいのだ。
もっともこの中で一番弱いのは俺なんだがな。
早く一人前の剣士にならないとだ。
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