第154話 小物の本領
スネファスの卑屈さは流石だった。
「へへぇ、こっちに指名手配中のクモノスなる輩がいまして……。へい、私なんぞじゃ手に負えませんので、ぜひ偉大なるあなた様のお力をお借りしたいと……。へい、もちろん手柄はすべてあなたのもので構いやせん。これであなた様も出世間違いなし。その代わりと言っちゃなんですが、今後ちょっと私を贔屓にしていただければ……。へい、私なんぞその程度の小狡く立ち回ることしか出来ないゴミムシですから、はい。あっ、もちろんこのことは他の誰でも言ってません。あなた様だけにお伝えしておりますので、はい。そうですか! 流石は次代の英雄と目されてるだけのことはある! お声掛けさせていただいた私の目は正しかった! さぁさぁ、こちらです!」
【
ドゥゥゥゥゥゥン──!
「うぎゃぁああああああああ!」
こんな感じで道中の強者を楽々屠っていく。
それに加えて
「クモノス様、しつこいようですが本当に私に地位を授けてくださるので……?」
スネファスがとんがったリーゼント(ダサい)の影から俺を見上げる。
「本当にしつこい。第三門から第一門まで全部ブッ倒した俺たち! そんな俺たちををあと一歩のところまで追い込んだ貴様! 結果的に俺達を逃しはするものの、一番功績を上げた貴様は昇給する! そういう筋書きで問題ないだろうが」
「へへ~、文句があるわけじゃないのですが、ほら一応確認といいますか……」
ザリエルが何目線からかわからない意見を偉そうに述べる。
「あなた、自分がクモノス様のお目溢しで生きてるだけってことがまだわかってないんですか? 生きてるだけで丸儲けなんですよ? 略してイマルですよ? これだから万年落ちこぼれのカス天使は」
「……んだとぉ? こぉ~の頭空っぽの肉だるまが!」
「はぁ!? 誰が肉だるまぁ!? この私はクモノス様の第一号奴隷であなたよりも遥かに格上なんですけど!?」
「俺は奴隷じゃねぇし。クモノス様の臣下として忠実にお仕えしてるだけだし。肉オナホと一緒にすんなデブ」
「? 肉オナ……? それは一体なんなのでしょう?」
気は強いが世間知らずなゴブリンプリンセス、グローパが顎に人差し指を当てる。
「キヒヒ! かつて『
ホラムが『
「おいこら、お前ら天使同士、魔物同士仲良くしろよ。天使と魔物で諍うならわかるけど、なんで同族同士で揉めてんだよ」
「はい、クモノス様!」
「もちろんです、クモノス様ぁ」
「ぐっ……了解……しましたわ、フィード・オファリング様……」
「チッ、わかったぜフィード」
天使二人は俺の事をクモノス、魔物二人は俺のことをフィードと呼ぶ。
バラバラだがどうでもいい。
どうせ天界を脱出するまでの使い捨ての肉盾たちだ。
グローバとホラムは生き残ってればアベルにぶつけられる。
スネファスとザリエルは第一の門とやらを超えたら切り捨てだな。
にしても天界を出るまでは揉め事はないに越したほうがいい。
『
おまけに神族にはすこぶる効きが悪い。
効くとしたらよっぽど油断してる相手やよっぽどの馬鹿、アホ、間抜けだけだ。
まさにこのアホのザリエルみたいに。
「ん? どうかしましたかクモノス様? やっと私の可愛さに気づいていただけました? 私はいつでもなんでもOKですよ! 身も心もすべてクモノス様に捧げる所存です! あ~ん、だからゲシゲシしないでぇ~!」
俺の今の手駒。
思い込みの激しいアホ天使ザリエル。
復讐に燃える亡国のゴブリン王女グローバ。
テスの体を奪いたい
生き残るために味方すら平気で見捨てる冷酷な卑怯野郎スネファス。
「ったく、どんな組み合わせだよ」
まぁなんでもいい。
こいつらを使い捨ててアベルのスキルを奪う。
そして俺は、俺になる。
そのためにも。
「行くぞ、お前ら」
アベルたちよりも先にイシュタムへ着き、待ち伏せする。
そう。
決戦の場は、王都イシュタム。
それまでに俺がこの馬鹿、雑魚、姑息、卑怯の四人を使ってたどり着いてやる。
絶対に。
アベルよりも一刻も早くイシュタムにたどり着き、準備し、待ち伏せする。
そして殺す。
アベルも、ゼウスも、サタンも、全部。
殺す。
この俺が。
そして俺は──俺になるんだ。フィード・オファリングに。
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