第128話 天駆ける巨大閃光

 体の中から無尽蔵に溢れ出てくる「なにか」

 ↓

 筋肉の震えによって増幅される「それ」

 ↓

 突き出した拳からほとばしる──


 ほとばしる……


 エネルギー……波?



 ドッゥン──────ゥ!



 第一印象は「 マ ズ い 」

 なんかわからんが、これは「やり過ぎ」だ。

 オレの本能がそう告げる。

 

 ギュゥイィィィィィィィン──!


 オレの右拳から放たれた「超」「巨大」エネルギー波。

 その先にいるのは、自信満々のスキルが空振って呆然としている権天使ゴリエル。

 そして──。


 ジュッ──!


 エネルギー波は一瞬でゴリエルの肉体を焼き尽くすと地面(雲)を貫いた。

 オレが立っているのは小高い丘の上。

 ゴリエル(塵)がいたのは地面(雲)。

 つまりエネルギー波は地面(雲)を貫き、ぐんぐんと「地上」へと向かって伸びていってる。


(あ、あれ……これってもしかしてマズいんじゃ……?)


 もし、下──地上にアベルがいたら……?

 ゼウスを殺すためには、あいつが持ってるスキルが必要だ。

 こんなのが急に空から降ってきて事故られたりしたら……!



 【身体強化フィジカル・バースト】ぉぉぉ!



 ぐっ……!



 もう片方の手で拳を掴むと。



「ぐ、おぉぉぉぉぉお!」



 エネルギー波の出ている拳を無理やり上へと引き上げる。



 ブバッ──!



 雲の下に抜けていたエネルギー波は足元の雲を真っ二つに切り裂き、大空へと飛んでいくと──。



 シュゥゥゥゥゥン……。



 徐々に勢いを弱め、消えていった。


「ハァ……ハァ……! なんだってんだよ、今のは……! ヤバすぎるだろ、天使のスキル! こんなもん、まるで神の裁きじゃねぇか!」


 ドッ……!


 膝をつく。

 体が重い。


(やべぇ……魔力が尽き……)


 乱れた呼吸を戻そうとしてると、背後に気配を感じた。


 ズッ──サッ──。


 振り向くことなく神刀結界斬ボンド・ダガーを振り抜く。


「が……! なん──で──」


 ズッ──ドンッ……。


 大天使スネファスの上半身が斜めにずれ、下半身と永遠の別れを告げる。


「ハァ……ハァ……なんでって……からな。お前らの軌道は」


 っと、もう一人は……。


 スキル『軌道予測プレディクション』で視た左右からの挟撃。

 その残るもう一人、天使ノビリスを確認すると。


 スタコラ~。


 とばかりに背中を見せ、すでに遠くまで逃げ去っていた。


「……ったく、ああいう臨機応変で卑怯なやつが一番面倒なんだよ。地底でもいたな、ああいうの……。なんだっけか……ああ、小鬼インプだ。まぁいい。それよりも今は……」


 休み……たい。


 ぐにゃり。


 視界がゆがむ。


 フラッ。


(あ……倒れるな、こりゃ……)


 そう思った直後。


 ぱふっ。


 柔らかな「なにか」に頭が包まれた。


(……ん?)


 かすむ視線の先にうっすらと見えたのは。


 女天使ザリエルの顔。


「わぁ……わぁ……! あなた、神様だったんですね……! 雲くも神クモノス様……クモノス……クモノスさま……! あぁ、私を助けてくれた、私の王子様……! これからは私が身体からだを投げ売って貴方様あなたさまに捧げて奉仕させていただきますねぇ……そう、あなたの奴隷として……。えへへ、うふ……うふふふ……」


 あ? 王子……? 奉仕……だ?

 何言ってんだこい……つ……。

 っていうか……。

 ああ、もう……限……界……。


 プツッ──。


 そこで、オレの意識は途絶えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る