第127話 雲くも神クモノス

「……は? 誰だ、こいつ?」


 男天使たちの冷めた反応。


「天使……じゃねぇよなぁ? 羽根ねぇもんな?」

「神……でもなさそうですねぇ?」

「ってことは……人、とか?」


 間。


『ぶわっ~はっはっ!』


 笑い転げる天使たち。


「こんなところに人なんかいるわけねぇだろ!」

「ヒィ~ヒッヒッ! 冗談にしてもセンスなさすぎじゃ?」

「うひ……うひひ……で、ですよねぇ……」


 どうやらこつらにとって「人間」とは馬鹿にしていい存在のようだ。

 若干イラッ。

 けど、そこは冷徹&冷酷なオレ。

 素早く頭を切り替え、万全を期するべくスキルを発動する。



 【狡猾モア・カニング



 スゥ~。

 波紋一つない水面のように心が静まりかえる。


 大天使ザリエル、そして男天使三人。

 奴らは人間を低俗な家畜程度にしか思っていない。

 オレは人間だ。

 一応は。

 オレはアベルの心から生まれた人格だし、これは正真正銘アベルの体。

 で、だ。

 もし、そんな「人間」が天界に紛れ込んでると奴らが知ったら?

 怒り狂って追い立てられるかも。

 それは……あまりいい未来とは言えないな。

 なら、どうする?

 オレのことを人間以外の存在──だと思わせたほうがやりやすいか?

 なんなら「同族」とでも思わせたほうが油断を誘える?

 よし──決めた。


 オレはそばにある雲の塊に手を伸ばすと引きちぎろうとうする。


(うっ、意外と堅いな……)


 なら……。



 【身体強化フィジカル・バースト



 ブチブチブチッ!



 よっしゃ、いけた!

 オレは素早く引きちぎった雲を顔に貼り付ける。

 そして小高い雲の丘の上に立つと、颯爽と名乗りを上げた。



「オレは──雲くも神『クモノス』だ!」



 ……流れる微妙な間。


「クモノス? そんな神いたか?」

「雲くも神……? 雲の神ってことですかぁ?」

「クモノス……蜘蛛の巣……ぷぷぷっ!」


 構わず続ける。


「貴様ら雑魚天使が知らぬのも無理はないだろう! なにしろ私は生まれたてほやほやの新しい神! 今後は私のことを敬い、手足のように働くがいい! 権天使ゴリエル、大天使スネファス、天使ノビリスよ!」


「……!」


 名前を言い当てられた天使たちに緊張が走る。


 あぁ、こちとら駆け引きをしてきた年季が違うんだよ。

 しかも、命がけのな。

 使える情報はなんでも上手く使う。

 そして、てめぇらを出し抜いて──。


 殺してやる。


「……こいつ、オレらの階級と名前を?」

「キヒィ……? まったくの部外者、というわけではなさそう?」

「ねぇ、生まれたての神ってことは弱いんじゃないかな? ボクたちがこの神を殺してさぁ……一気に『階級アップ』とか出来ないかなぁ?」


 ふむ、この一番階級が下の天使ノビリス。

 なにげにこいつの言ってることが一貫してずっと邪悪だな。


「神を……殺す。神殺しか。いいね、今はゼウスの老いぼれもいやしねぇ。殺したところで誰にも見られてなけりゃおとがめなしだ」

「キヒィ~? で、殺した神の神力をゲットぉ?」

「やばっ! ボクら一気に階級数段上がるかも!」


 ノビリスに誘導された天使どもはすっかりやる気のようだ。

 まぁ、いい。

 こういうわかりやすいのも別に嫌いじゃない。


「あ? やんのか? やるなら別にいいぜ? おら、かかってこいよ雑魚どもが。『格』の違いを思い知らせてやる」


 ブラフ。

 はったり。

 挑発。


 相手の平常心をいかに乱すことが出来るか。

 戦いはもう始まってんだよ。

 さぁ、こっからオレが天界を脱出できるかどうか。

 その腕試しをさせてもらおうか。

 てめぇら三人でな。


「おぅ、散れ、お前ら。久しぶりに『あれ』やんぞ」

「キヒィ~! 了解!」

「うん、必殺のあれだね! ボクたち、ちゃんとフォローするからね!」


 そう言って三方に散る天使たち。


 ん?

 なにか大技でも仕掛けてくるつもりなのか?



軌道予測プレディクション



 オレがスキルで読んだ『先の未来』。


 □ ゴリエルから放たれた強大なエネルギー波が

 □ 一直線に伸びてきて

 □ 小高い雲ごと削り取り

 □ 消滅させる

 □ もしかわした場合は左右からの挟撃


 ……は? エネルギー……波?

 よくわからんが、そんな物騒なスキルは……。


(奪い取ってやろうじゃねぇか!)


 オレの左目に、オレにしか見えない青い炎が宿る。

 


吸収眼アブソプション・アイズ



 ドッ

 クン。


 全身が脈打つ。


 よし──奪い取れた!


 さぁ、これで。


 逆にお見舞いしてやるぜ。


 てめぇの。



 【筋波電光マッスルウェーブ・ボルト



 をな!


 オレの全身を金色の激しい光が包む。


「ぐ、ぐぉぉぉお!」


 内側から溢れてくる衝動に、体が弾け飛びそうになる。



 【身体強化フィジカル・バースト

 【身体強化フィジカル・バースト

 【身体強化フィジカル・バーストぉぉぉぉ!】



 膨張した全身の筋肉をスキルの連打で無理やり押さえつけ。


「うぉぉぉぉぉぉぉ!」


 オレの放った拳から、「超」巨大なエネルギー波が放たれた。



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 フィード・オファリング

 現在所持スキル数 10

 吸収ストック数 0


 【鑑定眼アプレイザル・アイズ

 【吸収眼アブソプション・アイズ

 【狡猾モア・カニング

 【軌道予測プレディクション

 【斧旋風アックス・ストーム

 【身体強化フィジカル・バースト

 【魅了エンチャント

 【投触手ピッチ・テンタクル

 【一日一念ワールド・トーク

 【筋波電光マッスルウェーブ・ボルト


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