森富太一 誕生日配信【2020年9月5日】※編集済
【00:21~ 声入り】
「……これもう映ってます?」
カメラをじっと見て、
今日の森富は非常にラフなスタイリングだ。ロゴTシャツに、黒いジャージのズボン。ちらりと見えた足元はサンダルだ。必死に寝癖がないか確認している森富に、もう配信が開始している、と告げられたのはその数秒後だった。
「開始されてる……えっ、始まってる⁉ え、えっ、え~、もうやだあ~……」
開始一分弱で心が折れてしまった森富だった。いつもの会議室にて、机に突っ伏して先刻までの自身の行いを反芻し後悔している。
「はやく、もうちょっと早く教えてくださいよお……」
森富は机から顔を上げる。顔は真っ赤になっていた。大変可愛らしい。もちろんコメントも「かわいい」で埋まっている、本人としては大変不服だろうが。
「かわいくない……、俺をかわいいって言うのは“&YOU”だけなんだよ本当に……」
そんなことはまったくない。メンバーは勿論、他のグループの先輩方にも言われまくっている。しかし森富にとっての認識はそうなのだろう。それはそれで大変可愛らしいが。
こうしてようやく『read i Fine』森富太一の誕生日配信が始まった。
いつも通り配信サイトは動画投稿プラットフォームの『Now Tube』、だがコメントはFCサイトのチャット欄のものをタブレットで見ている。配信時のみ適用の、FC加入者限定のチャットスペースにて“&YOU”のコメントだけを見ているのだ。
「えー『なんで寝癖を気にしてたの?』さっきまで寝てたからだよ。二時間くらい爆睡、最近よく眠れるので安心してね」
一時期は不眠に悩まされていたという森富だ。そんな彼の『爆睡報告』に画面向こうの視聴者は胸を撫で下ろしていることだろう。
「みんな今日はお休み? お休みじゃなかった人もいるよね? ……『仕事でした』うんうん、お疲れ様。俺も仕事だったよ。『休みだけど模試があった』うわー辛い、っていうかそうか、夏休みか! 俺もそうだけど! ……『宿題終わってない』それは頑張りなさい」
丁寧に、タブレットに流れていくコメントを拾っては返していく森富。その表情は穏やかだ。
「休みじゃない人がいるなら夜で良かったかも。あ、『夜勤中です~休憩終わっちゃった~』って人もいるなあ。なかなか、全員を取りこぼさずに何かをするのって難しいね」
世の中にはあらゆる仕事がある。サービス業なら土日の方がむしろ忙しいし、インフラ系など年中無休で気を張っていないといけない職業もある。
「『国民なんにもしない日』みたいなの制定されれば全員休めるんじゃない? そしたら全国の“&YOU”がライブに来てくれるかも」
さながら「良いこと思い付いた!」とでも言いたげな表情だったが、『read i Fine』は現在FC会員数が全世界で百万人を突破しているグループだ。全員入れる箱がない。そもそも、『国民なんにもしない日』ならば森富自身も休みとなるはずだろう。ツッコミどころが多すぎる話だった。
【06:29~ 新企画! プレゼント当てゲーム】
「わーい! プレゼントいっぱいだ、っていうか箱もの多っ」
森富は立ち上がって、机の上にある八つのプレゼントを見せびらかすように手を広げた。彼が立ち上がったのはひとえに、座ったままだとプレゼントの高さで自分が見えづらくなるためである。背は高いのに、座高が低いのだ。視聴者もその事実に気付き、恐れ慄いていた。
「いっこずつ開けて、誰からのプレゼントか当てる。だよね? あってるよね」
じゃあこれから! と森富は自身にいちばん近いところにあった箱が入っているだろう、袋を手に取った。中身はそこそこ重いようで、箱も森富が片手では掴めないくらいの大きさだ。不織布のラッピング袋を取り払うと、中から靴箱が出てくる。
「ぶ、ブーツ? ブーツだ! え、かっこいい!」
箱から出てきたのは黒のワークブーツ。シンプルなデザインで、多様なファッションを着こなす森富には有り難いアイテムである。
「そっか、もう秋物の時期だもんね。え~、でもこの将来を見据えてる感じ……何となく、何となくだけどみなもんかなあ、って……」
どうです? と目だけで伺う。なんと正解、
「おっ正解した! 伊達に末っ子やってませんよ! この調子で次次~」
と意気込んだ森富、ではあったが、ここから怒涛の三連続不正解である。
「末っ子をかなり手抜いてやってたかも知れない……ごめんよ兄さんたち……」
そこまで落ち込まなくても良いのに、と誰しもが思った。スタッフですら思っていることだろう。消沈していまった森富は、次の箱ものに手を付ける。これはそこまで大きくない、とは言え決して小さくもない。包み紙を開けると、パッケージが飛び出てきた。
「あああ! これっ、これは分かる! 絶対いっちゃんだ!」
叫びながら見せつけられたパッケージ、でかでかと映ったのはヘッドフォンの写真だ。
「これいっちゃんお気に入りのノイキャン付いてるやつ! 正解だよね⁉」
本人も自信があったこちらの答え、正解である。五問あって、ようやくふたつ目の正解だ。森富は天高く、拳を突き上げる。
「これ間違える訳にはいかなかったんだよ……、だっていっちゃんのプレゼン聞いて、俺『これ欲しい!』って言ったやつだもん……。有り難く使わせていただきます」
こうして全八問の内、正解はわずか三問のみという結果に終わった森富であった。しかしクイズを外してもプレゼントが貰えない訳ではない。大量の欲しいものに囲まれ、大変嬉しそうな森富のスクショタイムは少し長めに行われたのだった。
【19:43~ お手紙コーナー】
「俺はね、沢山文章を読むとすぐに体力が尽きるので、長い文章から読みます」
読んでる途中で力尽きたくないからね~、と宣って森富は躊躇なく最初の手紙を選んだ。ネイビーの光沢のある便箋に、白いペンで文字が書かれている。
「まずはいっちゃんから!
『太一へ。誕生日おめでとう。この手紙を書くに際して、前に貰った手紙を読み返してみました。大分面白いこと書いてあったね、僕はお前にとっての筋肉の師匠らしいけど今はどうだろう。そんなことを思いました。』
ちゃんと筋肉の師匠だよ……!
『太一は、read i Fineに入った時まだ高校一年生で、入社して一年半も経っていなかった。入社歴としては永介も然程変わらないけれど、あの頃のお前は発展途上、成長真っ只中といっても良いくらいにすべてが未完全で、だからこそ僕らの希望だったんだなと思う。今では分かりやすく「挑戦し続けなければいけない」と思っている僕らだけど、その発端は太一の頑張りだったかも知れない。』
そ、そんな……そんなことはない、って言うのも変な話だけど……。
『最年少メンバーがこんなに頑張っているんだから、年上である僕らももっと頑張らないと──って。ダンスメンバーとしても良い影響を受けてるな、と思ってる。だからむしろ、太一が僕の師匠なんじゃないかな、とか思ったり。』
えええええ、もったいない言葉過ぎる! もっと敬ってくれてもいいんだよ、とか言って。
『太一が真っ直ぐに尊敬してくれているのが、本当に有り難いと最近よく思うんだ。筋肉のことだったりダンスのことだったり、あとオタク趣味のことだったり。こういう本質的な部分で、僕は太一に否定されたことがない。それがどれほど僕の力になってるか、お前分かってる?』
すいません、なんも分かってないです……。
『人の悪いところより良いところを見つけましょう、ってよく言われるけど、この言葉は本当に体現することが難しい。でも太一は最初から完璧にできてて、僕は密やかにすごいなあと思ってたんだよ。』
これはね、親から厳しくしつけられたからね、ひとの悪いとこばっか見るなって、良いとこばっか見なさいって。お父さんとお母さんに感謝だね。
『ただ、ひとつ言わせてもらうなら、』
ひぇ、はいっ。
『太一は自分の良いところももっと見てあげた方が良い。入社歴が近いのが永介で、歳が近いのがサーシャで、自信がなくなってしまう気持ちも分かるけど、そんなあいつらに負けないくらい太一だって良いところがある。声もそうだし、風貌もそう、モデル体型で存在感があって、イケメンなのに中身は純朴で可愛らしい、と思ったらちゃんと男兄弟に揉まれてきた男子で、って良いとこ取りにも程がない? ほんと羨ましい。お前だって、誰かに羨まれる存在なんだよ。』
そんな滅相もない……っていう、この感じが駄目なんだろうね……。
『もっと自分のことを大事にして、そんでたまには甘えに来てね。弟に甘えに来てもらえることが、兄にとっては至上の喜びなんだから。どっかの誰かに似て、昔よりはスキンシップが苦手になってしまった太一に、僕が一から手ほどきしてあげようか? なんてね。』
ちょっと怖い! あとゆうくんを悪く言わないでほしい! 良い人ではないけど!
『体に気を付けて、これからも可愛い弟であってください。どれだけカッコよくなっても、僕らがずっとお前のことを可愛い、可愛い、って撫で散らかしてると思うから。安心して甘えに来てね、ずっと味方だから。
長い手紙から読む、と宣言した森富が次に広げた便箋は、当然
「じゃあ透くんの、行きます!
『おたん生日おめでとうございます! かわいい弟の誕生日、ということで色んな人に祝ってほしいと言いまくってます。』
え、やめて⁉
『ひとりっ子だった私にできた最初で最後のかわいい弟なんですから、だれよりも幸せになってもらわないと困りますし、だれよりもお祝いされないとおかしいと思います。』
有り難いけど、やめて。
『さて、こんなに弟、弟と言っていますけど、実際はどうなんだろうと考えてみたことがあります。私が太一とまともに話し始めた頃、私はまだ全然日本になじめていなくてずっとマイゴみたいな顔をしていたと思います。どこに行くにも何をするにも、どうしたらいいのか何も分からなくてぼんやりしていました。』
その記憶あるよ、ずっとぼんやりしてたもんね。
『そんな私を手助けしてくれた、大きな恩人が太一なのです。』
衝撃の事実、あんまりそういうつもりはなかったよ⁉
『私は太一が年下だと知って、年上だから私が守らないといけない、と思っていました。でも太一は私が日本になれていないことを知って、自分がしっかりしないといけない、と思ってくれたそうですね。その話を聞いて、すごくうれしかったです。だってなんだかんだ言っても、私はあの頃ずっと不安だったんですから。』
確かにそういうこと言ったけど、え、でもあくまで自分のためであって、……なんか、結果的にサーシャが救われたならそれでいいのかなあ。
『一生ケンメイでやさしくて真面目で、なんてかわいい子だろうと思いました。この子が悲しむことのないように、いやな思いをしないようにがんばりたいと思いました。でも太一は、ちゃんと自分のことを見つめてくよくよして悲しんで、そしてまた立ち上がれる力をすでに持っていました。ああこれは、私なんかの助けはいらないんだろうな、と思ったんです。』
うわああ、そんなことはないよ、力になってもらってるよ……!
『だから思い出したようにくっついてきたり、ねむたそうに甘えたり、ご飯をさいそくしてきたりすると、すごくうれしいんですよ実は。兄ばかと言われるかも知れません、実際そうだと思っています(笑)。太一に甘えられると、自分のことが少し好きになるんです。これは本当にすごいことだと思います、天性のシシツです。』
なんかいっちゃんもそうだったけど、めっちゃ褒めてくれる……優しいなあ……。
『太一は生きているだけでだれかの生きる希望になったり、コウテイ感を大きくしたりできる。アイドルとしてはこれ以上にない強みです。正直うらやましいくらいです。』
褒めラッシュですよ……。オラオラされてるよお……。
『性格上、色々考えすぎちゃうこともあるかと思います。でもそんなときは自分の強みを思い出してください。そして、そんな強みに助けられている兄たちのことを思い出してください。君が生きているだけで私たちはこんなにもうれしくて、よころんでいるということを思い出してください。改めて、おたん生日おめでとうございます。幸多からんことを、お祈りしています。愛しています。高梁透アレクサンドル。』……すごい、褒め言葉の羅列だった……一生分もらったんじゃないかっていうくらい……」
胸に手を当て、苦しそうに呟く森富だがまだふたり終わっただけだ。残す手紙は、長さ的に物足りなくとも六人分。そこでも褒めラッシュが繰り広げられる。
と言っても次はクレーマーこと
「ゆうくんの手紙ふっつうに怖いんだけど⁉ 読みます……。
『太一、お誕生日おめでとう。末っ子の誕生日だからクレームを入れるのはやめといてあげるけど、それでも言いたいことは二、三あるから普段より甘口に言ってあげよう。』
うわあ……お手柔らかに……。
『まず、課題はちゃんとやりなさい。』
うっっっぐう……! ド正論……っ!
『確かに仕事は忙しい、それこそ俺が大学一、二年生の頃とは比にならないくらい忙しい。だけど大学に行くと決めたのはお前の決断だし、大学でスポーツと社会学について学びたいって言ったのはお前だろ? なら、そこが揺らいじゃいけないのも分かるよな? ちゃんと一般教養も語学もやりなさい、せめて自分の力で形にしなさい。』
はい……ごめんなさい……お兄様の言う通りです……。
『次に、最近カッコ良過ぎだけどどういうこと?』
えっ⁉ 急にどうした⁉
『あんなに小さくて丸々としてて、おっきなたまごボーロみたいだったのに……見たよ、この間の雑誌の表紙。なにあの男の魅力。どこでつけたんだよ、あんな筋肉。ビッグたまごボーロはもういないのか、って寂しくなっちゃったよ。まあ、寂しくさせてくれた方が良いんだけどね。太一が色んな仕事をやってると思うと嬉しいし、ちゃんとしたひとりの尊厳ある人間として扱われてると思うと本当に涙が出そう。』
ゆうくんのその言葉に俺も涙が出そう……あ、次のやばい。
『お前は夢を叶えたんだよ、って何度でも言ってやりたい気持ちになる。俺が寂しくなるのはお前が大きくなって忙しいから、これってとても幸せなことだと思うんだよね。』
……ああ、良いこと言うなあ、この人。
『ただ、辛くなる前にいつでも頼ってきてね。勉強のことはさておくけど、仕事のことならいつでも相談に乗るし色んな人への連絡だって取ります。read i Fineの末っ子で良かった、南方侑太郎の弟で良かった、ってずっと思わせてあげるから。今年も乞うご期待ってことで。南方侑太郎。』……はい、やっぱり最高の兄ですよこの人は」
丁寧に封筒へ便箋を仕舞い、森富は次の手紙を広げる。
もうひとりの、『兄』と慕う人物からの手紙だ。
「お察しの通り、亜樹くんです。読みます。
『太一へ。お誕生日おめでとうございます。この一年が、太一にとって良いものになるよう心からお祈り申し上げます。』
ありがとうございまっす!
『もう成人かあ、という気持ちで胸がいっぱいになってます。月日が流れるのは本当に早い、早すぎる。夜更かしだって苦手だったお前が、もう酒が飲める歳になったなんて理解できない。あのかわいい、大きなたまごボーロちゃんはどこに行ったの? とかセンチメンタルになりかけたけど、普通にここにいますね。あんまり変わってなくて嬉しいよ。』
兄ズの中で俺の『大きなたまごボーロちゃん』認識は共通らしい。ミームにすらならかった覚えがあるんだけど……?
『言っとくけど変わってないのは心の中の純朴さ、素直さが溢れる本質、そしてかわいい表情管理、あと好き嫌いの多さだから。最後の以外は変化を求めてません。最後のはどうにかしてください、せめて青物野菜を食べれるようになってくれ。』
兄たちのクレームがマジのクレーム過ぎてへこたれそう。
『逆に変わった点は、というと、まず仕事に対しての真摯さ。もっと真っ直ぐになったな、と思いました。責任感の背負い方も、かなり様になっていると思います。それとメンバーへの気遣い。このグループで末っ子をやるのは大変だろうなと思うことが多いです。良い意味でも悪い意味でも適当な年長組、気難しい職人肌の99line、一個上の三人は得意も育ってきた環境も性格もバラバラで、扱うのが大変でしょ? ちょっと気の毒だなあと今でも思ってます。』
でも、楽しいから。みんな個性豊かで楽しかったから、リファインで良かったなあって思ってるんだよ。最初の頃からずっとそう。
『でもお前は、一度たりともへこたれなかった。いや陰で泣いていたことは知ってるけど、それでも強く立っていた。すごいなあと思ったよ、俺は絶対にできない。お前の強さに俺は救われているよ。だからずっとここの末っ子でいてね。末っ子として、幸せにするから。
好き嫌いの件は善処します! と森富は叫びながら次の手紙を開いた。月島からのものだ。
「読むぞ!
『太一へ、お誕生日おめでとう! 最初に出会った時が十五歳で、もう成人⁉ 月日が経つのは早いものです、もっとゆっくりでいいのにっていう時間の方が早く過ぎていくのが本当にやるせない。こんなに大きくなって……と月島は涙に袖を濡らしました。』
古文みたいな表現だなあ……。
『そんなことはどうでも良くて、月島の涙なんてどうでも良いのよ。問題はお前が泣いてないかどうか。この間の侑太郎の誕生日メッセージで『あの頃のお前はいっぱいいっぱいになってた』とか書いたけど、ぶっちゃけいちばん危惧してるのはお前だからな? このビッグたまごボーロボーイ。胸に秘めてるものが大きくて、その上責任感もかなり強いし真面目だからすぐいっぱいいっぱいになっちゃう、そんなところをオレは幾度も見てきました。』
出たよ! ビッグたまごボーロボーイってなんだよ⁉ 謎の進化遂げすぎじゃん⁉
『理想が高いのは良いことです。下を見ても意味がありません。でも自分のことを見ずに、上を見たってどうしようもない。自分の尺度を知らないと、求めているものがどれくらい大きいかなんて分からないだろ? とオレは思います。』
つっきーも良いこと言うんだよなあ……!
『だからまあ、雑に聞こえるかも知れないけど、たまには自分のことを大事にしてみてね。どうして疲れているのか、どうして泣いているのか(できれば泣いてないでほしいけど)、どうしてイライラするのか、それをいっこずつ考えてみるだけで全然違います。末っ子として伸び伸びしていてほしい、鬱陶しいだろうけどお前が縮んでいるとメンバー全員心配しちゃうからね。心配されないくらい、自分のことを甘やかすのは時としてアリだと思うぜ! そんな感じで今年も頑張っていきましょう。みんなのリーダー、
残り三人。そろそろ体力もなくなってきた森富は一度伸びをして、気合を入れ直す。途中で力尽きるなんてダサい真似はできない。まあ、残り三人は比較的短めなのだが。自身の作戦が成功していることを感じ、森富は少しにやついた。
「永ちゃんだー、読みます!
『森富太一、お誕生日おめでとう! 太一が事あるごとに「友達みたいに思ってる」と言ってくれるのが実は嬉しい人です。本当は兄が良かったけど、最近は友達の方が良いなあと思いつつある。というのもそっちの方が、太一が気負わずのんびりしていられるから。』
いつも楽しくリラックスさせてもらってるよ。意外と趣味が合うんだよね。
『ちょっと歌の話もしておこうか、俺と言えば歌だし。太一の低音はread i Fineにとって大きな武器です。でもそれと同時に、お前に「低音」のイメージがこびりついてしまうのは良くないなと感じる。だって音域広いじゃん、綺麗な高音が出ることも俺はちゃんと知ってる。独特なカバーソングが、こっそり量産されていることだってよく知ってます。ふふふ、俺はメンバーの歌については何でも知ってるんだ!』
流石メインボーカル……いやでもなんでカバーしてること知ってるの⁉ 誰にも言ってないんだけど⁉
『だからあまり周りの評価や固定観念に囚われないように。お前はお前の好きなことをやってください。お前の高音が評価されるのを待ってるよ!
森富のその言葉にコメント欄の流れが速くなる。余談だが、この後深夜に早速カバーソング(推定そのいち)が上がり、翌朝まであるSNSのトレンドを独占していたそうだ。
「じゃあこの調子であとは佐々木兄弟、最初はみなもん!
『ディアとみー、おたおめ! えっもうはたち⁉ うそでしょ、うそと言ってくれ~!(泣) ……どうやら抗えない事実のようだね、なんてね。年々大人の魅力高まる末っ子に、お兄ちゃんはドキドキしっぱなしです。これからも魅力的な二面性でドキドキさせてね! 楽しみにしてるよ! ずっと大好きだよ。佐々木水面。』……短い! 有り難い! うん、もっとドキドキさせられるように頑張るね。保険金は俺のものだ」
不穏な言葉が聞こえてきた気がする。それは兎も角、最後は日出からの手紙だ。
「本当にこの二人は短くて有り難い……長いのも好きなんだけど、俺、長い文章読むの得意じゃないんだよ本当に!
『森富、誕生日おめでとう。あんなに初々しかったお前が、ムーディーな雰囲気で雑誌の表紙を飾ってると少し気まずい気分になります。もっと成長してください、こんな最年長のことは放っておいてくれ。最近、ダンスに余裕が出てきて良いと思う。良い意味で必死さがなくなったというか。これからも楽しみにしてるよ。
こうして八人からの手紙を駆け足で読み終えた森富。肩で息をし、疲労がよく見えるがその顔は達成感と多幸感に溢れていた。長い文章を読むことが苦手でも、好きな人たちからのそれは別問題、ということなのだろう。
【59:05~ 最後の挨拶】
「もう終わりの時間なので、一旦挨拶しますね。今日は俺の誕生日配信に来ていただいて、本当にありがとうございました。さっき教えてもらったんだけど、同接三十二万人? らしくて、三十二万人の人に誕生日を祝ってもらえるとはまさか思ってなくて、三十二万人ってすごいよね。日産スタジアム五個くらい? やっば。すごすぎて意味わかんない。本当に有り難いです。知ってる人もいると思うけど、俺は『
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