第21話 全てを知る。
俺はここで一つの事が気になった。
俺はここ最近何回も一二三と蓮を助ける為にやり直してきた。
仮に40年の時を生きたなら10回で400年だ。
「そうよ。だからあの女神は、復元ポイントを直近にして、やり直していた。偶然だけど僥倖な事」
この女神、俺の心を読んでいた?
「ええ、読めるわ。あなたがひと月で覚えるものの中には、心を欺く他に読めなくする方法なんかもあるわ」
「大変だけど頑張ってねー」
話を戻した調停神の話によると、肉体は死ぬ度にチャンスの女神が復元ポイントを使って戻していたが、魂は死んでいない。
これが問題だと調停神は言った。
「肥大化した魂は爆発とかするのか?」
「それならまだマシよ」
困り顔の調停神は「神化…神になるわ」と言った。
俺が「神化?神になる?」と聞き返すと、妹の調停神が「んー…、タカサキは何かな?なれたら努力神かな?」と言って首を傾げた。
「なれたら?」
「誰だってなれるわけではないの。資格を得てしまったら強制的に神化が始まる。そもそも資格がなければ神化は起きない。でも今回は機会神が、あなたに神化を促している状態なのよ。それが問題で、不適合な身体なら周囲を巻き込んで爆発をする。更にその際に機会神も巻き込んだら連鎖爆発で周囲の世界がダメになる」
調停神は世界のバランス調整を行なっていて、今回みたいなケースでは実力行使で乗り込んで解決する場合や、裏方に回って世界を守る仕事をしていて、俺が崩壊をした時を考えてチャンスの女神に無断で乗り込んできていた。無断の理由は「今の彼女はファンタージにのめり込んでいて話を聞かないの」だった。その話をした姉の調停神は、「あなたの住む地球とファンタージの側には他の地球なんかもあるし、崩壊されると何兆の命が消えるか…考えたくもないの」と言ってため息をついた。
「他の地球?」
「そう。地球は増え続けてる」
神々の話として教えてもらったが、創造神やそれに準じた能力を持たない神が作る世界は、どうしても地球のようにはならない。
妹の調停神が「酷いと空なんて絵の具を流したみたいなんだよねー」と言って、説明をしてきて、あの幼稚園で書いた動物園の絵を思い出していた。
それを補う為に何種類かの方法があり、いつの頃からか主流は、地球と世界を直結させて地球をベース化する事で世界に深みを持たせる。
「今も地球にはさまざまな世界と繋がっているのか?」
「ええ、地球を生み出した神はそれを許している。でもそれを忘れて機会神のような行いをするものが増えたのよ」
チャンスの女神がやるような時間逆行を地球で行うには、地球の神の許可が求められる。
今回のような場合はどうやっても許されるものではない。
その時の為に地球の神が取った方法は、「模」という「模倣された地球」を生み出して、そちらとファンタージを直結させる事だった。
「では俺の住む地球は地球ではないのか?」
「ええ、文明の発達の仕方から人口に至るまで別物よ」
「整理させてくれ。俺は神化しかかっている。ファンタージと地球はチャンスの女神が生み出したもの。このままだと世界が壊れてしまう」
「そうよ」
「ならもう一つ。俺の戦いが終わらない事を教えてくれ」
「もう、今教えるよー。タカサキはせっかちだなぁ〜」
妹の調停神が八の字眉毛で笑いかけてくる。
俺の戦いが終わらない事は何処か想定していたが、考えたくなくて放棄していた。
「ゲームキーパー…審判はあのチャンスの女神。あなたはずっと運命と闘ってきたけど、それを都度台無しにしたのはあの機会神よ。彼女はあなたのコメントを気に入ってしまった。生きようとする意思を気に入ってしまった。周りの連中が苦戦するファンタージを攻略する姿を気に入ってしまった。だからあなたを延々と殺してファンタージに連れ戻す」
そう言った調停神は「神々って案外面倒なのよ。マイルールには逆らえない。だからルールの中であなたを殺すのよ」と呆れ顔で続けた。
「上田愛子達は?」
「元々はキチンとあなたの生みの母で、旦那さん達はあなたの義理の親よ。でも勝利さんを勝子さんに捻じ曲げたのは機会神。勝子さんの結婚相手の鈴木さんは機会神が生み出した存在で、貴方達を殺すように誘導していたわ」
初めて殺された時は本気でアイツらの意思だったが、それ以降はチャンスの女神が奴らの心に介入していた。
「じゃあ、前にあった花火爆弾と毒寿司は?」
「アレはなりふり構わない機会神が、世界に介入して瞬間移動の力を使っていた」
「あの女神はバタフライエフェクトを強調してたぞ?」
「まあ、見苦しい言い訳レベルで、鈴木一郎さんの一家は宗教に傾倒していて、神様を崇めているから神様の力であなたを殺す手伝いをして貰った事になるわね」
出来レースだった事に怒る俺に、「その怒り顔をやめないと、怪しまれて勝ち目が無くなるよ!」と妹の調停神が注意をしてくれて俺は慌てて表情を戻す。
とりあえず敵が見えた俺は調停神の言葉に従うことにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます