第17話 チーム。
俺は両親と上野の両親、そして大阪大五郎をウチに呼び…桜子達も同席させて全てを打ち明ける事にした。
術式を手に入れた中で、伝心術という考えや記憶なんかを相手に見せられる術を得た俺は、躊躇する事なくこれまでの全ての人生を伝えた。
「大阪さん、あなたに説明をした仙人の世界はファンタージと言います。もう俺はそこで何百年も生きてはこちらに戻ってをしています」
そして大阪大五郎に情報を与えて質問をさせる形で、何があったかを説明していく。
もう定年退職をして老いた鷹咲の両親にもキチンと謝ると、母親は「やあね。それで幸也ってば、私とのお風呂を照れていたのね」と笑って許してくれた。
「それで、この場はどう言う事なのだい?」
「大阪さん、前に一度あなたにはある程度の所まで打ち明けました。その際に大阪さんはバタフライエフェクトと、トライ&エラーの話をしてくれました。今日までそれを続けましたが、どうやっても手詰まりで来週末から先に進めなくなりました」
ここで一二三が「で?確認するけどさ、父さんが無事に死ねたら終われるんだよね?」と確認をしてきたので、「ああ。非業の死を遂げるとファンタージに行かされてしまうんだ」と再度説明をした。
「それで父さんは元々の親元にいて、搾取されてると40まで生きられた」
「ああ。貯金も何もかも食いつぶされてな。それを指摘したらSUVでドンからのグチャだ」
俺は一二三と大阪大五郎にだけその映像を見せると、2人して「外歩けなくなるからやめてくれ」と言う。
「父さん、そのまま搾取され続けてたらどうなったの?」
「試してない。試す気もない。どうせ定年退職したら殺されていたか、死ぬまでこき使われて搾り取られて非業の死だな」
一二三は「だよね」と言って、「で、その記憶を持ってやり直したら?」と聞いてきたので、「睡眠ガスを盛られて、不審火で丸焼けだ」と言いながら姿を見せようとしたら、一二三は「いらないよ!」と慌てる。
「その次が喧嘩に巻き込まれて駅のホームで…」
「ここで守護霊の話をチャンスの女神からされて、ファンタージの周回特典をあの親元ではなく、父さんと母さんの息子にして貰えた」
これには両親は「神様に感謝だね」と言っている。
「でも今の俺くらいの歳に死ぬの?」
「ああ。旅行帰りにな」
その先も全部聞いた一二三は、「とりあえず気になったんだけど、父さんは母さん以外の彼女とか奥さんとか居ないの?」と聞いてきた。
あまりにもバカバカしい質問に「居るか!」と突っ込んでしまう。
「なんで?」
「お前…、そりゃあ桜子が良かったからで…」
これには皆して盛り上がってくれて俺は真っ赤になる。
「じゃあ敵の話しようよ。敵は父さんを産んだ女」
「ああ、旧姓は髙﨑愛子。俺を産んだ時は二井波愛子、俺を捨ててからは上田愛子だな」
「後は?」
「元々は異父弟だったはずの勝利が、世界の補正とかで女になった上田勝子。今は結婚して鈴木勝子になっている」
これには桜子がすごい顔をしたが、「気付くわけないだろ?」と言って笑い飛ばす。
「その女が俺たちを何度も殺したりしてくるの?」
「ああ。世界の補正とかでドンドン酷くなっていく。今は薬物中毒者で自身の不幸を全て桜子のせいにしている」
「まあ世界の補正のせいだから、母さんには防ぎようがないね」
「そうだな」
俺は一二三の「それで父さんは何を話したいの?」という問いにある事を考えていた。
一つはあのアキタの事、後はどうすれば無事に来週を超えられるかだった。
まずは女神を信じるなという話からだと思っていると、家のチャイムが鳴り宅配便だった。
俺が玄関に向かうと、女の配達員が荷物を見せてくる。
荷札には「アキタの事は口にするな」と書かれていて、俺は驚いて女の顔を見ると女は「お荷物あってますか?」と聞いてきた。
荷札には受取人が鷹咲ではなく「高崎幸也」になっていて、送り主は「鈴木勝子」になっていた。
嫌な汗が吹き出した俺は受け取りを拒否すると女は帰って行く。
気持ち悪さの中、何故かあの荷札にあった「アキタの事は口にするな」が頭に残っていて、一二三達にはいう事が出来なかった。
「俺が打ち明けたのは、これ以上力を隠して守る事が出来なくなってきたからなんだ」と言って持ち込んだアイテムを出して見せると、一二三は「すげぇ!格好いい!」と喜び、大阪大五郎は高純度の水晶を欲しがったりした。
話し合いの結果、まずは幸せな終わりがきちんとあるかを蓮が気にし始めた。
「お父さん、女神様に聞いてみなよ」
「え!?俺って幸せに死ねないの?」
「違うよ。今のお仕事だとダメで、大阪さんのお仕事を手伝わないとダメとかかも知れないよ?」
「確かに、蓮は賢いな」
水晶を握って離さない大阪大五郎は、「とりあえず知り合いの社長に声をかけよう」と言ってくれたが、俺は拒否をする。
「何故だい?彼なら君の作った札をあげれば喜んで…」
「俺に巻き込まれて命を狙われますし、札が身を守る事を知った専務派の連中から俺達が狙われます」
「成程、ではそれはどうしようもなくなったらだね」
俺は頷くと、上野の両親に謝りながら「この札なら身を守ってくれます。肌身離さずに持ってください。後で家まで送りますから、家にはその際に呪いをかけます」と言うと、上野の両親はニコニコと「楽しいね。心躍るよ」、「気に病む事ないわよ。それに何百年もやり直しても、桜子以外の人を選ばないでくれて嬉しいわ」と言ってくれる。
照れた俺は誤魔化すように両親に「父さん、母さん…。ごめんなさい」と謝ると、父さんは「何言ってるんだ?私達はお前の事を息子だと思っている。息子のピンチに力になるのは当然だよ」と言ってくれて、母さんも「そうよ。いいじゃない。絶対に幸せな終わりを迎えるのよ!」と言ってくれた。
俺は千葉まで瞬間移動を行うと言うと全員が付いてきたいと言い出して、「別に楽しくないよ?」と言うが、誰も引き下がらないので諦めて瞬間移動をすると、一二三は「すげぇ!父さんクールだ!」と喜んで抱きついてきていた。
上野の両親は「交通費が浮いたから」と言って寿司の出前を取ってくれて皆で食べる。
一二三の奴は「父さん!北海道とか行けないの?」とか聞いてきて、「行ったことない土地は無理だよ」と言うと、「くそ、寿司は北海道とか、お好み焼きなら大阪とかやれたのに!」と悔しがる。
俺は目を丸くして一二三を見ると、一二三は「怒らないでよ」と言って笑う。
「いや、怒ってない。お前は凄いな。考えたこともなかったよ」
「マジで!?勿体無い!全部終わらせたら、その力は有意義に使おうよ!そうだ!父さんさ缶詰とかレトルトとかファンタージに持ち込みなよ!最短でもひと月も日本食から離れるとか嫌じゃない?」
「…お前凄いな。それはやろう」
「へへ、ほらね。父さんはよく俺達には「家族なんだから、なんでも報告連絡相談だぞ。1人で悩むより良い結果になるからな」とか言うくせに、自分は秘密にしてるから何にも出来ないんだよ」
一二三のドヤ顔に母さんも「本当よね。一二三は賢いわ」と褒めると、大阪大五郎が「一二三くんと蓮さんはこのチームのブレーンだね」と言った。
チーム…。
なんとなくだが1人で悩むより良い結末に行ける気がしてきた。
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