第16話 かつて出会った男との再会。
もう、何回やり直したかわからなかった。
俺の選んだ最良は、とりあえずこの日をずらす事にした。一週前に戻って急遽旅行を企画して、蓮のバイト先には土産まで用意して休ませた。
そして不審者の目を感じる事を蓮から聞き出して警察に相談もした。
そこまでしてようやくその日を防ぎ、それ以降は新たな術式を手にして雨を降らせたり、あの手この手で子供達を…家族を守った。
案外勝子は母親に似たのか雨の外出を嫌う。
溜め込んだ術を使ってゲリラ豪雨すら起こしてやった。
そして大阪大五郎の言葉通り、トライエラーを繰り返す事にした。
その場はうまく行ったが、後で酷い目に遭ったのは、大阪大五郎のツテで裏社会の偉い人と繋がりを持って、健康や身の回りの不運から身を守る代わりに俺の家族を守ってもらい、上田愛子や鈴木勝子を社会的に葬ってもらった。
その時は半年くらい平穏だったが、勝子に薬物を渡していた売人や、偉い人を蹴落としたい連中からの報復に巻き込まれて散々な目に遭った。
その事を知らない大阪は、「本当に困ったら私にはツテがある。君の力になれる」と言ってくれている。
もう数えきれない特典を得ていて、桜子達には言えていないがファンタージで獲得している装備なんかは全て地球に持ってきている。
元々は「アイテムを3個だけ持ち越せます」が、何回も続いていて全てのアイテムを持ち越している。
実は前回のファンタージでは不思議な事が起きた。
ファンタージは以前とは違い、多様性に溢れていてさまざまな人間がいる。
中には野良ではないが必要な情報なんかはなくて、ただ滞在時に魔物達が攻め込んでくるだけの街も用意されていたりする。
そんな人の増えたファンタージの中で俺はスリに遭いかけた。
別に珍しい話ではない。
大昔には目が合っただけで訴訟をチラつかせてきた奴もいたし、最近会ったヤバい奴だと「お前、あのロンジクさんを知らねーの?」とか絡んでくる奴が居た。
ちなみにロンジクの事は毎回気にしていて、はじまりの町で動向を確認すると、今回のロンジクは家族と幸せそうに暮らしている。
だが問題はスリの顔だった。
そいつはあのアキタだった。
アキタは俺から財布をスリ取ろうとして、失敗すると情けない声で逃げていった。
代わりに「読んだら燃やせ。女神にバレるな。諦めるな。戦い続けろ」と書かれた紙がポケットに入っていた。
俺は顔に出てしまっていて、クリア時に女神から「今回のファンタージは如何でしたかタカサキさん?」と聞かれた時に、「あら?どうされました?」と聞かれてしまい、「なんかアキタのオッサンに似たやつが財布をスリに来て、やり返してからモヤっとしてる」と説明をすると、女神の奴は「ああ、それでしたか。どうしても人口を増やす時に人の情報が足りなくて、かつてファンタージにいらした人達を模したんですよ」と笑っていた。
「じゃあ俺も居るの?」
「はい。次回は探してみるのも良いですね」
「やだよ。今度こそ終わらせるよ」
「はい。チャンスの女神としてお祈りしていますね」
「あ、アキタで思ったんだけどあのオッサンは終われた?」
「オッサンって…、今はタカサキさんもおじさんですよ?まあ終われていないのはタカサキさんのせいですかね」
「は?俺?」
「はい。タカサキさんが何度も死んでやり直すから、同じ時間を生きるアキタさんは何度も同じ日をやり直してます」
「マジか…。悪いことしてるな」
「いえ、他の皆さんと一緒で自覚なしです。平気ですよ」
だが俺はこの時、とある事を気にしてしまった。
俺と同じ時を生きているアキタのオッサンは、俺のせいで終われずに待ちぼうけを生きる。
だがもし来週非業の死を遂げた奴はどうなるんだ?
女神の説明が物凄く気持ち悪いものだった。
だが俺には確かめようはない。
とにかく終わらせる為に生き抜くしかない。
今回も酷かった。
勝子の奴が桜子の両親、上野の祖父母を狙いやがった。
上野の祖父母は千葉に住んでいて、本来なら物理的に間に合わないが、双子札で飛んで助けに向かうと、居たのは鈴木太郎と鈴木次郎だった。
無駄に争うのではなく戦闘不能にして外に放り出した所で、桜子の双子札が反応をしたので「お義父さん!お義母さん!俺を信じて!」と言って飛ぶと、家に火を放ったが札のおかげで燃えなかった事にブチギレた勝子が桜子を襲っていた。
桜子は腕に傷を負ったが、なんとか救い出した所で、勝子が雇った反社が手に持っていた青龍刀と拳銃にやられて俺は死んでいた。
…あれをどう防ぐのかが問題で、やれる事はやってきたがファンタージの力を隠す事には限界だった。
今回は包み隠さずファンタージでの事を説明しようと思っている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます