第12話 鈴木太郎・一郎・次郎。

7度目は6度目に近い人生を歩みつつ、健康促進札を作っておいた。

これによって胃のポリープからは逃げられただろう。


無事に桜子と結婚をして妻になってもらい、一二三ひふみれんという2人の子供にも恵まれた。


老齢になった両親も、孫達と過ごす穏やかな日々に感謝してくれて、今度こそうまく行くと思ったのに蓮が暴漢に襲われた。


そして失意の中自殺をする。


俺は通報に耳を疑った。

大阪大五郎の依頼以外は全て因果応報札と責任札、威圧札を上等な霊木から頂戴した木札を使った。その結果、一二三も蓮も「電車とか雑踏で人が避けていく」と心配していた程だった。


確かに威圧札には問題もある。

ある一定の弱さの輩は寄り付かなくなるが、本当に頭のおかしい奴や、実力者はより付いてくる。


因果応報札の影響で、すぐに見つかった犯人の名は鈴木太郎すずきたろう、蓮の2歳下の17歳。

俺の人生にはなんの接点も無かった。


相手は少年法に守られていて余裕をかましていた。

そう、蓮は自殺を選んだせいで、因果応報札の効果が今ひとつだった。

これが傷害致死なら相手が死んで蓮は生き残っていた。


俺は民事刑事両方で訴えた。

そして公判の日に目を疑った。


ヘラヘラと現れた鈴木太郎の両親は、父が一郎いちろうで母が勝子だった。


元同僚の勝子の登場に桜子は目を疑うが、それは俺も変わらない。

今世では縁もゆかりもない。

だが俺の異父兄妹。


鈴木太郎の言い分は、桜子の娘なら何やっても構わないというものだった。

そこに至った理由は勝子の教えだった。

勝子は前回より狂っていた。


家に帰ると、老齢になった上田愛子と上田勇気が文句を言いにきていた。


褒めたくはないが、上田愛子は捨てた俺に気付き、「鷹咲?アンタ捨てられても鷹咲なの?ウケるわ!」と高笑いしながら、「アンタは自分の甥っ子を犯罪者にしたいの?被害届を取り下げな」と迫られた。


処理限界だった桜子と一二三に、俺も知らなかったテイで上田愛子が俺を捨てた母親で、その娘の勝子が鈴木太郎の母で勝子の影響で鈴木太郎が蓮を狙った事を再認識した。


一二三の徹底抗戦すべきと言う言葉に従って、被害届を取り下げずに戦う意思表示をしたら両親が放火で殺される。

火を放ったのは鈴木次郎すずきじろう。太郎の弟だった。

だが2人分の因果応報札が次郎を許す訳もなく延焼の形で次郎を殺した。

これが刺殺なら傷は深いが奇跡的に助かったりするが、火事なので両親は助からなかった。

案外、因果応報札にも穴はある。


両親の死と蓮の死。

これだけでもキツいのに、ここで終わらずに一二三と桜子が2人で買い物に出た先で、勝子に轢き逃げをされて殺された。



あっという間の事だった。両親に妻子…5人の葬儀の手配をどうやったか覚えていなかった。大阪大五郎や社長、同僚に部下達が手を貸してくれてなんとかなった。


葬儀の場で何をして、マスコミの執拗な質問に何を答えたかわからなかった。

だが全てが終わった後で、大阪から「君は偉いな。キチンと誓約に則って相手を殺さなかった」と言われた事は覚えていた。


「次こそは成功させます」

俺はそう言ってファンタージに向かう為に投身自殺をした。

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