第10話 大阪大五郎との出会い。
大阪大五郎が持ち出した物は、3歳の俺が御崎の婆ちゃんに頼まれて書いた、お友達用の因果応報札と威圧札の写メだった。
俺が聞く前に「知り合いの人からコレを作れないかと言われていて、何年も待たせているのだが作れないんだ。しかも書かれている模様は君のくれた札に似ている!君なら!」と言い始める大阪大五郎を止めて、「えっと…、少し聞きますけど、効果とか知ってます?後は貰った人は何で大阪さんを頼ったんです?」と質問をする。
「変質者に合わなくなったり、電車で席を譲ってもらえたりするようになったらしい。私の元に来たのは、再度の作成を頼んだがしつこいと断られてしまって、仲の良い友達だからこそ頼めなかったと言っていた」
正に因果応報。
書いた人間に戻ってくるとか笑えないな。
俺は諦めて「書くのは断ってください。それでもう一度友達に頼むように言ってください」と言う。
この言葉で全てを察した大阪大五郎は、「それではやはり君が?」と聞いてきた。俺は頷いて「ええ、仙界から戻ってすぐに、家族にも被害が及ぶから祖母に書いたら、この人が欲しがりました。効果なんて半年も保ちません」と言う。
「効果を聞いていいかい?」
「まあ、ただその人には控えてくださいね。一枚目の内容は善行は善行が、悪行には悪行が向かいます。恐らく祖母がプレゼントしたくなるような善人だったんですよ」
「二枚目は?」
大阪の問いに目の前で威圧札を書いて気の弱そうな店員に持たせると、増した威圧感に大阪が「それは私が君に感じたものだ…」と漏らす。
「ええ、俺は人一倍絡まれやすいので恒常的に使ってます」
「成程、勉強になったよ。だが君なら良質の木札に書くことも出来るのでは?」
「家族には子供のお絵描きだと思わせてます。バレたら困ります」
「成程、それでか…」
これで気の済んだ大阪から感謝をされて解放された俺は、御崎の祖母が言い出しにくいだろうから、「子供の頃にお守りをあげた友達の人って元気?」と言いながら、「効き目なんてわからないけどさ、また欲しがったらコレをあげてよ」と言って、コッソリと「婆ちゃんに書くつもりで書いたんだけどちょっと線が歪んだ失敗作だから気にしないでね」と言って渡した。
無論、紙も墨も一流品を使ったから今度は一年半くらい保つだろう。
祖母は「ずっと欲しいって言われてたけど、図々しく思えて断ってたの。あの人も喜ぶと思うわ」と言って受け取ってくれていた。
まあここで済まなかったのが、確かにチャンスの女神様は言っていたが会社の社長がお祓いを頼んでいた相手はまさかの大阪だった。
土曜日の出勤時に俺と出会した大阪は「え!?」と驚いて、「なんでここで仕事を?金が欲しければ君なら」と余計な事を言ってくれた。
何というべきか縁が生まれてしまった。
コレには少し困った事になったが、ファンタージを仙人の世界と信じている大阪なら悪影響は無いだろうから受け入れる事にした。
因果応報札のお陰だろう。
良い行いをすればそれが返ってくる。
俺は仕事も学校も力を入れた。
たまに大阪が払いきれないと相談に来るので、拝み屋の手伝いも始めた。
案外ファンタージで出てきた幽霊系の魔物と似ているのか、札が効果を示したので役に立って報酬を山分けするようになる。
ある意味では充実した日々だと思う。
父母は大学を勧めてくれたが、早く働いて父母を楽させたかったし、仕事先での立場作りの為にも今回は就職の道を選んだ。
順調だった。
社長と大阪の仕事をしたことで女性を紹介された。
看護師をしている女性で名前は
家族もこの付き合いには喜んでくれた。
威圧札を使わないで良い場面があったので、使わなかったが彼女は穏やかな物腰で変わる事もなければ、因果応報札が何かをする事も無かった。
今度こそ結婚をしても良いかと思った時、彼女の病院で健康診断を受けるように言われて受けたら胃にポリープがあった。
簡単な入院と手術で終われる言われた俺は油断し切っていて入院をしてそのまま死んだ。
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