未だに命の危機が付きまとうタカサキユキヤ。

第5話 鷹咲幸也。

あの女神、マジ許せん。

アイツは俺を苦しめたいだけ違うんか?


まずレベル上限は199だったので、20日間の枯葉人狩りで無事にカンストをした。


だがあの野郎、今度は魔王に物理耐性を付与していやがった。


お陰で魔王を倒せる事が出来ずに、有閑マダムにレベルを全部奪わせてやり直す羽目になる。

そしてはじまりの丘に居た、魔王戦から死に戻ってきたシブイという奴に聞いたら、火耐性も健在だとわかり、行く必要のない灼熱島に顔を出して氷魔法の適性を身につけてから、有閑マダムをぶちのめして強さを取り戻した。


もうこの段階で40日が経過していた。


だがまた甘かった。

氷に弱いのは第1形態だけで、第2形態は全くの別物で撤退する羽目になる。


まあレベル差が半端ないので逃げられるあたりはマシだが話にならない。


シブイの奴はまた育ち方を間違っていたのだが、それが棚ぼたで第2形態は火が弱点になっていたので、シブイの犠牲は無駄にせずに魔王を追い詰めると、第3形態の物理が通用する魔王になってくれた。


とりあえず攻撃が通じれば後は何とでもなる。


シブイの奴は死に戻ってしまったがこうなれば関係ない。魔王にはサッサと居なくなってもらおう。


しばらくの殺し合いの後、魔王は霧散し俺の勝ちが確定する。

俺が天に向かって「よし、終わったぞ」と声をかけると、すぐに女神様は目の前に現れた。


「お疲れ様でした。タカサキさん。やり直しのルートも確保しましたからね?」

「OK女神様、でも今回もクソゲーだよ。何あの魔王の変身と耐性?あんなの急に付与されても困るよ」


「あれは、キチンと港町の酒場で氷の宮殿行きの船に乗る気になるように、第一形態の魔王は火では倒せないとか、灼熱島に行って氷能力を手に入れようと思えるように情報がありましたし、街に入ると酒場に行くように話が出ましたからね?」

「あー…?マジかよ。そんな人の話を聞くなんて初回以来やってないよ」


「何故ですか?」

「同じだからだよ。マンネリ化するんだ」


「成程、参考になりました」

「いやいや、多分もう会わないと思うからあんがとね〜」


女神様の「いえ、チャンスの女神として、タカサキさんの未来が明るいものである事をお祈りしていますね」という言葉の後で、俺はまた強烈な眠気に襲われていた。




そして目覚めた俺は物心がついた3歳の男の子だった。

目の前には新しい父と母。


女神は俺のためなのか面倒なのか、「鷹咲」という夫婦の養子にしてくれていた。


父の孝幸たかゆきと母の美幸みゆき

たまたま名前に幸の入る俺を見て、運命を感じたと言って養子に迎えてくれた。

申し訳ないが俺は通算でこの2人を足した年齢より多く生きているので、売れるだけ媚を売り、理想の子供像に沿った。


まあそんな事をしなくても、この2人…鷹咲の祖父母や母の御崎みさき家の祖父母も含めて俺を実子以上に大切にしてくれていた。


初めての経験に震えてしまったが俺は感動して皆の為に頑張る事にした。


だがまあ世の中は腐っている。


どこから聞きつけてくるのか、どこをどう見ても親子にしか見えない俺たちを見て、幼稚園のクソガキどもは意味もわからずに、「おいお前、拾われた子供なんだろ?」と絡んできた。


こちとら80年近く生きている爺さんなので、「知らない。あっちいけ」とあしらったらムキになって絡んできた。


取り巻きも入れて8人に絡まれたが怯まずに口で泣かせると、ガキ大将は「俺の兄ちゃんは一年生なんだぞ!」と泣きながら殴りかかってきた。


殴られると母が泣くと思って回避をしていく。

この身体になくても、水晶の谷で延々とクリスタルマンを狩った経験はある。

幼稚園児のヘナヘナパンチが当たる道理はない。


疲れて諦めてくれないかと思っていると、ガキ大将が「お前なんて!お前なんてまた捨てられるんだ!」と言った。

その言葉が、幼稚園児の言葉なのに頭に来た俺は、一気に懐に入るとカウンターパンチを入れて殴り飛ばす。


弱い。


相手じゃない。

この身体が弱い。


レベルも何もないから仕方ないけど、殴ったら手首が痛くなった。


「おーいて…」と言いながら拳をさすっていると、「何やってるの!?」と言って担任がすっ飛んできた。


多対一、多勢に無勢。

さあ先生、ババンと叱りつけて手打ちにしてください。


そう思ったが甘かった。

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