第9話
告別式を終えると、そのままお盆に入った。
漸く、彼らは休むことが出来る。
明日は、彼の実家の地域で行われる花火大会だ。
「今年も来たら?気分転換にもなるかも知れないしさ。」
遠慮がちに、彼の家族が声を掛ける。
少し迷った顔をした彼は、あの子の顔を見ながら答えた。
「行こうか。」
今年の花火大会は、例年よりも随分と混んでいる。
確かに、ここの花火大会は、打ち上げ数も多く、評判ではあるけれど、
それにしても、今年はちょっと混みすぎだ。
それなのに、彼らは、上手にスイスイと歩いて行ってしまうから、
ついて行くのが大変だった。
毎年と同じ場所へ席を取ると、間もなくに、花火が打ち上がった。
花火を見上げた彼は、無表情のまま、空へとカメラを向けた。
あの子の側には、今、3歳年下の従兄弟が、ピッタリと寄り添っている。
従兄弟に笑顔を向けているあの子の姿に、安堵しながら、
私は、彼の側に寄り添った。
何度、彼の顔を覗き込んでみても、彼は、ひとつも笑わなかった。
『ねぇ、あなた?』
彼には届かないことを知りながら、声を掛け続けることしか出来ずに、
彼の顔を覗き込みながら、話し続けようとしたその時だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。