第7話

「告別式の当日には、

故人様が使っていたお茶碗に、ご飯を山盛りにしてきてください。

それから、お箸、湯呑み、コップ。

こちらの粉を使って、団子を作って持って来て下さいね。

数は、地域の習慣などでも異なりますが、一般的には、6個とされています。

当日、式場で、湯呑みには、お茶、コップには、お水を入れて、お供えしますね。」


打ち合わせで、プランナーさんから説明を受けた時にメモした紙を見ながら、

準備を進めている。


告別式の朝が来た。


最終の打ち合わせ


お坊さんへの挨拶


参列してくれた方々への挨拶


喪主を務める彼は、息つく暇もないほどに忙しい。


そんな彼について回っていた私だけれど、ふと立ち止まり、会場内を見渡してみた。


遺影の背景も、お花も、ピンク色で揃えてくれた。

これは、あの子が選んでくれた色だ。


「お母さん、ピンクが好きだよね。喜ぶかな。」

打ち合わの時に、あの子がポツリと呟いた言葉が蘇る。


『うん。嬉しいよ。ありがとう。』


私は、暫くの間、祭壇を見つめ、この景色を胸に焼き付けようと決めた。

これは、最後に、彼らが私にしてくれたこと。

絶対に、忘れないよ。


気が付けば、参列者が少しずつ、増えはじめていた。


私は、誰に気付かれることもなく、来てくれた一人ひとりに、言葉を掛けた。


『お世話になりました。

これまで、ありがとうございました。

彼が困った時には、お願いしてもいいですか?


来てくれて、ありがとう。

ごめんね、突然こんなことになっちゃって。

友達でいてくれてありがとう。

楽しかったよ。』



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