あれ? これって無敵ってやつでは?

「ふむふむ」


 セパレート式のメタルスライムアーマーだが、某RPGと同様の性能であるらしかった。すなわち、物理攻撃は99%カット。魔法も全属性通さない。スピードは俺の身体強化だが、レベルアップで魔力が大幅に底上げされた。

 出力を支える身体もスライムと同化したせいで大幅に強化された。よくSFなんかである、ナノマシンを注入されたサイボーグってやつだ。


『どうですかマスター。お身体の調子は?』


 軽く振るった手刀から真空波が発生して岩を両断した時は何のジョークだろうと思った。

 これだけの力があればS級も夢じゃない。


『あ、でもマスターがやってたみたいな攻撃は気を付けてくださいね。防御貫通とかクリティカルヒット(まぐれ当たり)は普通にダメージとおりますし』


 俺の必殺技である浸透頚にアレンジを加え、衝撃波と共に叩き込むかの技は、過去に学んだ武術の奥義とされていた。

 というか初めて成功したということは内緒にしておこう。


『とんでもないクソ度胸ですね。あんな難易度の技をあれだけのダメージ喰らった状況でぶっつけで繰り出したんですか? 控えめに言って頭おかしいですー』

「うすらやかましいわ!」

『ほんのりやかましいって言いたいんですか? 意味不明な修飾語を付けないでくださいねー』

「あー言えばこう言うなああああ!」

『そういえばハウユーってやつですよ。ハハッ』

 ……何とかしてこの腐れナノマシンを引っ剥がす方法は無いんだろうか?


『そんなことをしたらマスターの肉体の損傷を埋めてるところも全部べりべりってはがすことになりますよ。あと神経系統の強化とか何なら血液にまで混入してますからね? もうボクたちは一つになったんです!』


「うっがあああああああああああああああ!!!!」


 余りにうざい言い回しに頭を抱えて絶叫する。それが良くなかったのか、ホールに声が反響し、どこかまで届いてしまったのだろう。濁った魔素と血生臭い獣臭が漂ってきた。


『1時の方向、具体的にはあっちの枝道ですね。オークを中心とした一隊がこっちに向かってますねー。殲滅ですか? ヤッチャウ?』

「んー……やるしかないよなあ。そもそも逃げ道ないしな」

『いえーす! コンバットOSアウェイクン! メタルニードルガンにて先制攻撃を加えます!』

 なんか自分の意思に反して左腕が動き出す。左目を閉じると瞼の裏に3D化されたマップと、自分の位置。そして敵との位置関係が見えたと思ったら、左腕の籠手がいきなりぶわっとハリネズミのように隆起した。


『ふぁいやあああああああああああああああああああ!!』

 物理的な声が聞こえていたら確実に鼓膜を痛めそうな大声で絶叫し、おそろしい勢いで針状になったメタルスライムが射出される。


「BUGOOOOOOOOOOON!?」

 ひょこっと顔を出したオークと思われる亜人は顔面を消滅させられた。数本の針が通った後にはその100倍もの直径で穴が開く。原理はわからん。

『ヒャッハーーーー! 汚物は消毒だーーーーー!!』

 凄まじい勢いで射出されるニードルガンと……見るる見るうちに消費される俺の魔力。

「おい、ちょ、待てよ!?」

『どうなさいましたかマスター?』

「どうじゃねえよ! なんで湯水のように俺の魔力を消費してるんだよ!」

『そこに魔力があるからですマスター』

「そこに山があるからみたいにいい雰囲気で締めようとするんじゃねええええええええ!!!!!?」


 そのあとはひどいものだった。素材とか魔石とか言うレベルではなく、ただ惨事の後だけが飛び散った血痕という形で残されている。


『ふう(*´ω`*)』

 やり切ったとでも言いたげな満足極まりない表情で汗をぬぐうしぐさをする。なおそれは俺の身体を介してである。


「オークの魔石があれば3日は働かなくて済んだのに……」

『フフフ、何をぬかしてるんですかマスター。ボクがいればどんなモンスターもイチコロですよ。さあ、絶賛するがよいのです!!(どやあ』

 うっわこの決戦兵器、どやあを口に出して言いやがった。うっわ、うわあ……。


 そうこうしているうちに第二波と思われる気配が近づいてきた。


「シータ、俺がやる」

『イエス・サー。承知しました!』


 ゴブリンの群れが現れたので手刀を水平に振るうと最前列の5体ほどが真っ二つに両断された。そのまま近づき、皮鎧を着こんだコボルトを殴りつける。今までの感覚であればこれで倒すことなどはできなかった。

 しかし、今振るった拳は手ごたえもなく振り抜かれ、その体躯は血泥に沈む。オークの振るった棍棒を左腕の小手で受け止める。衝撃すらスライムの身体に吸収され腕には全く衝撃がない。ぐっと力を籠めると吸収されていた衝撃が反射されてオークの腕をへし折る。

 再び手刀を振るうとオークの頭部が宙を舞った。


 これまでであれば成すすべもなく群れに飲まれ、骨も残さず消滅していたであろう圧倒的な戦力に単独で無双できるほどのパワーアップを果たしたことを理解する。


「クク、クハハハハハハハハハ。アーーーーーッハハハハハハハハハ!!!」

 身を焦がすほどの万能感にこみあげる笑いを止められず、拳を振るい続けるのだった。

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