夜に溶け出す

深夜0時を回ったころ、家を抜け出した。

田舎の道路は真っ暗で街灯の明かりもほとんどなく、しんと静まり返っている。

僕はただ行く当てもなく思いつくままに歩く。


どこへ行きたいのかも決まっていなかったがどこへ行くべきなのかも分からなかった。


ただ家に帰ることだけは、なんとなく嫌だった。


だんだんと、歩いているうちに音が聞こえるようになってきた。


小さく鳴くなにかの虫の声、稲穂を揺らす風の音、どこか遠くで聞こえる車の音。

何もないと思っていた夜にはたくさんの音があったことに気づいた。


僕はこの夜の一部になった気がした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る