大学生の友情なんてそんなもんよ
大学生のとき、仲のいい友人たちと4人で天橋立を見に行こうという話になった。
大学生の行動力というのは恐ろしいもので、誰からともなくその提案が出たときにはすでに深夜0時を回っていたが、
日の出は6時ごろだろうから今から車で向かえば間に合うだろうという話になった。
それから私たちは京都市内にある友人の下宿先から出発して、友人たちと共同で買った軽自動車を走らせ、天橋立がある町に着いたときにはすでに午前5時になろうとしていた。
当初の計画から外れて日の出に間に合わないかもしれないと焦った我々は、当時まだ精度がそこまで高くなかったGoogle Mapのせいもあってか、気づくと木が鬱蒼と生い茂る森の中へ入り込んでいた。
そこは峠道のようで、曲がりくねった細い登り坂と深い谷底を隔てているのは薄っぺらいガードレール1つだけだった。
さらに3月ということもあってか、まだ雪がちらほら残っており、チェーンをつけていなかった我々の軽自動車は気を抜くとすぐさま谷底へすべり落ちそうだった。
何度目かの急カーブを超えながらおそるおそる進んでいると、かなり急勾配な坂道に出くわした。
傾斜は45度ぐらいあるだろうか、しかも薄く氷が張っているようで無理にでも登ろうとすると滑り落ちるのは明らかだった。
ただそこは大学生、「まあいけるでしょ」という根拠のない自信のもと、ゆっくりと登り始めた。
少し登ったところでタイヤがけたたましい音とともに滑り始め、車はゆっくりと後ろへ下がっていった。
車が下がっていく先には、ガードレールが一枚あるものの、その先は深い深い谷底だ。
僕たちは、一目散に車から飛び降りて各々が思い思いの姿勢で凍った坂を滑り落ちていった。
運転席には友人が1人だけ残っていて、最後まで車を助けようと抗っていた。
のちに彼が語ったところによると、
彼は一目散に車から飛び降りた我々を見て、「こいつらは自分を見捨てた」と感じたという。
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