第33話 イカれた日常を紹介するぜ!2

 さて、時刻は午前7時45分を回りました!また今日も同じようにだんだんとじわじわと家の周りの車の音や歩く音、香りなど様々な感覚が私たちに朝の忙しさを感じさせてくれます。


 連雀ちゃんはさっさと朝ごはんを済ませて自分の部屋へ戻ってしまいました。学校の支度でもしてるんでしょうか?

 一方で成坂さんはまだリビングにいるようです。今度はノートパソコンを開いて何かタイピングをしているようです。朝から両者とも忙しそうです!


 そろそろ学校の支度をしなければ間に合わないはずですが何故か秋葉坂高校1年生、伊東司はいまだにリビングに姿を現しません!どうする??伊藤司!

 このままでは学校に遅刻してしまいます!

 実況、解説は引き続き旅籠芸術大学3年の私、塩平千歳が行って参ります!


 おっと!ここでバタバタと騒がしい音が上から聞こえてきます!その喧騒は止むことなく階段をつたって、廊下をつたって、遂に、リビングに到着しました!


 伊東司!!!果たして学校には間に合うのでしょうか!?!?


「やばい!!!!!!!!!!寝坊したよぉ〜〜〜〜〜〜〜れんじゃくちゃぁぁあああああん!!なんで起こしてくれなかったの!」


「やばいよ!やばいよ!まだ学校の支度すら終わってないのにいいい」


 もはや司さんには穏やかに朝食を食べるという手段は残されていないようです…大急ぎでシリアルを口の中に放り込んで牛乳を飲みます。たちまち、司さんの口はフグのように膨れ上がってしまいます…


「ふぐっ!ふげっ!ふがっ!ごぼ?ゴボゴボごぼ?ゲッゲッゲホッゲホッ、み、水をください!」


「お前食い方めちゃくちゃキモいな…」


 流石に食に無頓着な成坂さんもこの光景にはドン引きのようです!私でも口腔内でシリアルを完成させるなんて思いもよりませんでした!


「ごめんなさい!もはや構ってる時間すらないっス!やばいよやばいよ〜〜!」


 司ちゃんは大急ぎで教科書やらノートやらををリュックサックに強引に詰め込んでいます。

 いつの間にかリビングに降りてきた連雀ちゃんはもう既に学校の支度は済ませてあるようです。時間を持て余してるのかスマホで何かを見ているようです!


「何見てるのかって?」

「今はインスタとかティックトックとか見てるのよ」

「今はやってるものとか、いろんな人の服のコーデとか有名女湯さんのメイクとかをを見て研究してるのよ」

「まあでも女優さんとかモデルさんって顔立ちとかスタイルがいいからこんなふうに可愛くメイクとかできるんだとおおもうけどね…」


 流石は小西荘随一のオシャレな女、常に情報収集は欠かせないようです!

 しかも性格も一級品だ!息をするように謙遜すらできてしまいます!


「つかさちゃーん!まだぁ?」


 連雀ちゃんは痺れを切らしたのか司ちゃんに催促をします。

 さて、司ちゃんは今何をしているのでしょうか?

 ——どうやら、とんでもない剣幕で歯を磨いているようですね…水の跳ねる音が聞こえてきます。


 ◯


「お待たせー!ごめんね!連雀ちゃん、待たせちゃって」


 大急ぎで階段を降りてきた司ちゃんはリビングにおき忘れていたリュックサックを持って玄関へと向かいます。

 連雀ちゃんはリビビングで待つことすら飽きたのか、玄関の土間で腰掛けてスマホをいじってます。


「別にいいわ」


 連雀ちゃんは特に怒るそぶりも見せずローファーを履きます。


「あ、あんたあネクタイ曲がってるわよ?」


「あ、ほんとだ。ありがと連雀ちゃん」


 司ちゃんは少し寄れてしまっていたネクタイを直します。


「全然直ってないじゃん…」

「もう…」


 結局司ちゃんは自分で直せなかったネクタイを連雀ちゃんに直してもらうことになります。

 司ちゃんは連雀ちゃんにネクタイを直してもらう間恥ずかしそうに、目をきゅっと瞑ってしまっています。


「んじゃー行ってくるっス!」


 2人で仲良く家を出ていく姿を見送った後遂にやってきました!

 この家で一番起きるのが遅い女が!この家で一番朝に弱い女が!!


「おはよう、のんちゃん」


「お、おはよう、ちーちゃん」


 そういえば私たち2人はあだ名で呼び合っています。お互いなんか自分の名前で呼ばれることが恥ずかしかったので昔にあだ名を決めました。

 最初こそはあだ名で呼ぶこと、逆に呼ばれることに違和感を覚えましたが今ではむしろ逆に本名で呼ばれる方が違和感があるくらいです!慣れって恐ろしい…


 茶枝法梅ちゃえだのりうめ、のんちゃんは私と同じ大学の同級生です。自覚はしていないようですが、感情が非常に表に出やすく、成坂さんとは喧嘩ばっかりしています。

 でも非常に情に厚く、頼り甲斐のある姉御肌のような物を感じることができる性格の持ち主です。



「ほれ、お前さっさと食えよ。今から食器の片付けするのは俺なんだから」


「はぁ?何よ、偉そうに!別にあんた一日中家にいるんだから暇でしょ?」


「だいたい、そもそもあんたが朝起こさないのが悪いんだから!」


「やだよめんどくさい。誰がお前のことなんか起こす」


「うるさいわね!つべこべ言わずさっさと起こせばいいのよ!」


「ていうか今日朝散々起こしたんだが?お前のこと」


「う、うるさいっ!あんたの起こし方が悪いのよ!」




 —————今日ものんちゃんも成坂さんも元気そうですね…

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