第11話 全員集合!
「自分、秋葉坂高校1年の利連雀って言うっス!」
「サッカーのスポーツ推薦で入学しました!特技はサッカーっス!」
まるで小鳥のように小柄で、可愛らしいその少女は名前を利連雀と言った。
耳が見えるくらいの短さのボブに少し柔らかなウェーブがかかっていて、その動作や表情とは裏腹にシックで大人びている藍色のロングスカートを履いている。
顔は今年女子高生になったと言うばかりの無垢な顔をしていた。
「伊藤司って言います〜」
「秋葉坂高校の1年の普通科に入学しましたー。趣味とか特技は特に無いんですけどー音楽を聴くのが好きでーす」
「オーナーのなるくんとは昔からの幼馴染でーす」
こんなチャラそうな言い方の少女は伊藤司と言う。
言い方とは裏腹に顔は至って中性的で普通の高校生といった感じだろうか。
ハーフパンツにゆるいロンTを着ていていかにも部屋着っていた感じの洋服だ。
少なくともオーナーの
「ぇ、えーっと、塩平千歳って言います…あんまり人前で話すのが好きじゃなくて色々戸惑っちゃうかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします…」
「あ、大学は旅籠芸術大学の芸術科に在籍してます…2年生です…よ、よろしくお願いします」
「え?千歳センパイって旅芸大に行ってるんすか?めちゃめちゃ頭いいじゃないですか!!」
「すごいっス!!自分、全然そういう芸術って滅法苦手でー…いつもそういう芸術ができる人憧れるんスよ〜ほんとに、シンプルに尊敬するっス!」
超食い気味で話しかけてきたのはスポーツ少女な利連雀だ。
その目は純粋なものを見る目で輝いていた。
「そ、そうなんだー?今度色々絵をうまく描くコツとか教えてあげようか?」
「マジっスか!!!??!?!???!?!?」
多分連雀に犬の尻尾を持ち合わせていたら間違いなくブンブンそれを振り回していただろう。
「えーっと?ちーちゃん、千歳のことね?千歳と一緒の旅籠芸術大学に在籍している茶枝法梅って言うわ!」
「ちーちゃんは芸術科だけど私は建築学科に行ってるわ!趣味はうーん、なんか色々な建物を見たり街にあるいろんな物体を観察することかしら?」
「だから休日は街中に出かけることが多いわね」
体操服みたいいなクソダサいハーフパンツにダボダボの灰色のパーカーを見て成坂が感じたのはピチピチJDにもかかわらず、圧倒的な法梅のファッションセンスのなさと、こんなファッションのやつとは一生分かり合えないだろうなという排他的な感情だった。
「えーっと?最後に、ここの小西荘のオーナー兼雑用係の小西成坂だ。趣味は色々。いずれ分かる。東京のとある理科大にいってて、今はとりあえず休学してる」
「そして、ここの4人の皆さん、こんな超怪しいヘンテコな下宿、寮を選んでくれて、本当にありがとう。君たちには感謝してもしきてれない」
「ふーん?感謝してるって口先でいってる割に全然感謝してなさそうな態度だけど?」
法梅がすごく前衛的な態度で成坂に聞く。
「お前みたいな社会の端くれにも満たずに、自発的に感謝を求めるようなカスにも感謝してやってるんだからありがたく思え」
成坂はその法梅の売り言葉を100倍にしてお返しした。
「何よ!たかがここの所有者の分際で偉そうに!何よ!その横柄な態度は?それが住人に向ける態度なの?」
法梅は顔を真っ赤にして反論を試みる
「うるせえ!不満があるならとっととでてけ!」
成坂もムキになって反論する。
「司さん、自分と同じ秋葉坂高校だったすよね?」
「よろしくお願いしますっス!勉強とか教えてもらうかもしれないんで!」
成坂と法梅が果てしなく低俗な言い争いをしている傍ら連雀は隣にいた司に話しかけた。
「こちらこそ!よろしくお願いします〜」
司は思いがけない同級生の出会いにとても喜んでいた。
「司さんってここら辺出身なんスか?さっき成坂さんと幼馴染っていってたじゃないですか?」
「はい!そうです!私となるくんは生まれた時からずーーーーーーーーーーっと一緒に遊んで、一緒にお昼寝して、一緒にお風呂にも入ってましたから!」
「そ、そうなんですねー?」
「じゃあいろんな表情の成坂さんを知ってるんスね?」
「もっちろん!なるくんの超カッコいいところから可愛すぎて身悶えてしい舞うほどの愛おしい寝顔まで!私はなるくんの日常の9割は網羅しているといっても過言ではありません!!」
(妙に変なとこで謙虚なんだな)
「…これから3年間こんなとこでやっていけるんスかねぇ?」
連雀は未だに下らない言い争いをしている成坂と法梅をみてポロリと呟く。
「——大丈夫です!」
いつにない強気な発言で連雀は驚いた表情で司の顔を見る。
「なぜならなるくんはそこまで司さんが想像しているような人ではないですから!良い意味でも、悪い意味でも。これは幼馴染の私が保証します!!」
「もーっ!!やめてぇもう2人とも大人なんだからぁ!!下らないことでケンカしないでぇ〜〜〜」
成坂と法梅の口論の間に入った千歳の風景をを2人はいつまでも眺めていた。
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