第2話 女子アトム級期待の新人

「これは中々のハードパンチャーですね」


実況者は赤を基調としたユニフォームに寂しく一枚のスポンサーに身を包んだ新人選手に目を見張った。


「トモコ選手は打撃は強いみたいなんですが、キックボクシング出身ということもあって寝技は得意ではないみたいですね。今回のようなレスリング出身の選手ですと厳しいものがあるんじゃないでしょうか」


実況者は彼女の弱点を正しく把握しているのは間違いない。


「おおっと、トモコ選手倒されてしまいましたねぇ〜。あぁ、上から乗っかられてこれは苦しくなりそうですね」


そう喋ったときである。不器用にもがくトモコの手打ちの打撃がたった2発ほど顎を捉えただけで相手が気絶してしまったのだ。


両選手のキャリアの差は明らかにトモコが格下であった。技術だって、身体を適当に回すだけのトモコに軍配が上がるわけが絶対にないのだ。


 しかしながらはっきりしていることは、無邪気に勝利を喜ぶトモコと八角形のゲージでうつ伏せになって医務班に引っ剥がされる相手がいたことである。

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