第6話
翌日、下校した後俺はいつものように秘密基地で勉強をしていた。いつものようにと感じるくらいには勉強する事が板に付いてきたという事だろうか。
そんなことを考えていると、扉の向こうからコツコツとローファーの足音が聞こえてきた。
ガチャリと少し重い秘密基地のドアをあけ、いつものように薊が入ってきた。
「お邪魔するわね」
おう、と返事をし視線を扉の方に移す。いつもとは違い、薊の後ろには彼女よりやや大きい程度の人影がチラリと見えた。
「君が菊花の王子様だな!」
開口一番、でかい声で訳の分からないことを言う女がいた。
「………マジで友達いたんだな。あと、うるせえよ」
「紹介するわ、友人の
「南守学園高等学校2年F組、
はきはきと声高に彼女は言った。そのテンションに付いていけないが、俺も挨拶を返す。
「…瓜生木葉だ。よろしく頼む」
「菊花を助けてくれたのは君だったな!本当にありがとう!」
「助けたつもりはないんだけどな、たまたまだ」
「それにしてもこの秘密基地は良いところだな!汚い雑居ビルに連れてこられた時はどうなる事かと不安だったが、ここは非常に…なんかアジト!という感じがするな!」
秘密基地の良さに気づくとは、薊の友達の癖に、この人は良い人かもしれない。声はでかいが。
まあ座れよ、と二人を促し、俺はソファを運び込む前に使っていたキャンプ用の椅子を取りに立つ。なんか機嫌が良いわね…と、ぼそっと薊の声が声が聞こえたが、そのまま椅子を用意し座った。
「瓜生くんはでかいな!何センチあるんだ!」
…思ったことをすぐ口に出すタイプらしい。
「最後に測った時は、186センチだったはずだ」
「でかいな!」
「これで中学生なのだから、驚きよね」
「好きでデカくなった訳じゃない。頭をぶつけそうになって不便なんだ」
…小便する時とかも不便なんだよな、と口に出しそうになったがこれはセクハラになるだろう。
「私もデカくて不便なことがあるぞ!胸とか!」
十代にしては豊満な胸をどんと張り、彼女はそう言った。どう反応してもセクハラになりそうな気がして、助けを求めて薊の方に目をやった。
「…なんで私の方を見るのよ」
何が不満なのか分からないが、俺はどちらにせよ助からなかったことだけは分かった。
「…勉強しようぜ」
全てを誤魔化すように、俺は大して好きでもない勉強に逃げることにした。
「今日は何の教科をやるんだ?」
「英語にしましょうか、皐月は英語は私より得意だから。これでも帰国子女なのよ」
「すごいな、どこの国だ」
「ドイツだ!」
英語圏ではなかった。
「瓜生くん!言語で一番重要な事は、気合いと根性だ!」
「一番が二つあるじゃねえか」
今後が心配になったが、俺は大人しく勉強を教わることにした。
意外にも藤さんの教え方は上手く、馬鹿な俺でも少しは英語を理解することができた。流石は薊と同じ高校へ通うだけの事はある。うるさかったが。
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