第11話  初めての魔法


 ワララド王国魔法陣の部屋、中心に30cm程の蓮の花びらのような形の銀色の衝立をぐるっと直径1mぐらいの円状に並べ、中心に雌しべのような高さ1m程の白い台、その上には、ヨヘイと共に日本から来たケータイが置いてある。


「では、通話実験を始める。」とヨヘイ魔導士長は、ケータイに魔力を込める。3人の魔道士が後に続く、するとケータイが光りだし、しばらくして、ヨヘイがケータイを手に取り、開いて耳にあてる。


 しかし、難しい顔をすると、ケータイを閉じ、「残念だが日本へのゲートを開くには何か足りない。」


「やはりゲートを開く鍵は、死ではないでしょうか。」魔導士の一人が言う。


「う~ん、そうかもしれんが。」



 時田家のリビングで、レモティアは魔法道具テレビを先程学校から帰ってきた弟と見ている。


 レモティアは、この光魔法や幻影魔法を駆使した魔法道具にハマっていて、空いた時間によく見ている。言葉の勉強やこの世界の知識を得るためもあるが、時に笑い、時に感動して涙する様々なコンテンツに魅了されていた。


 その横で弟は、レモティアの質問に答えたり、その表情を眺めることにハマっていた。


 すると、レモティアは、胸の金色の魔法道具をいきなり握り締める。


「レモティア、どうしたの。」


「今何か、感じた。」


「前から気になっていたんだけど、それは何?」


「これ、ワララドと話す、魔法道具。まだできてない。」


「すごい、何かケータイみたいだけど。と言う事は、レモティアは魔法が使えるの?」

 

「はい。でもここ、少ない。私、このくらい。」と手を前に出し、「ヴォシューレ」と呟くと、手のひらの上にピンポン玉くらいの火の玉が浮かび上がる。


「すご~い!他には、何ができるの?」


「少し傷、治せる。」


「じゃあ俺も、レモティアに習えば、魔法が使えるようになるかな。」


「ヨヘイ先生、私の世界、最高の魔法使い。平和、同じ血、できる。」


 火の呪文を教わった弟は、右手を前に出し、何となく力を込めて、「ヴォシューレ」を連発するが、何も起きないので、疲れてやめる。


 すると次の瞬間、弟の全神経は右手に集中し、鼓動は早まり、体温があがった。


 レモティアは、弟の右手を優しく両手で包むと、「言葉、上手くない。ジーリリン。」


 弟は、レモティアの言葉というか知識が、直接頭に届いたことに、戸惑いを感じたが、やがて心が繋がったことへの多幸感で溢れた。


 まあ、ただ、伝わった知識は魔法に関することのみで、簡単に言うと、この世界、この場所は魔法に利用できるマナが少なく、自分のマナだけでは、強い魔法は使えない。呪文は、精神を集中させマナを呼び覚ます、発動のきっかけであり、言葉自体に大した意味はない。マナを意識し、一体となる感覚が重要だが、言葉では表現が難しいので、直接伝えた。なお、平和は、雷魔法と相性が良さそうだとのこと。


「わかった。レモティア、ありがとう。」


「いえ、平和できる。もう一度。」


「その前に、ちょっとトイレに行ってくる。」


 1時間後、魔法に集中した平和は、「ヴォシューレ」と、右手のひらの上に、パチンコ玉大の火の玉が浮かんだ。


「やった!これで俺も魔法使いだ。」


「デンファ!やはり、ヨヘイ先生の弟。」

 

 台所で夕食の準備をしていた母は、二人の楽しそうな笑い声を聞いて、レモちゃんが来てくれて良かったと思うとともに、世平に会いたいと、ちょっとしんみりした。

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