第6話 眠れる森の白雪
東京の時田家、日曜の朝、父と母、妹が食卓を囲み朝食を食べていると、パジャマ姿の弟が、2階から降りてきて、冷蔵庫をあさりだす。すると父は弟に「リモート授業はしょうがないが、引きこもりみたいな生活をするぐらいなら、バイトでもしたらどうだ。」
「うるさいな」と小さな声で父の方を見ずに言うと、弟は2階の自分の部屋へ戻って行った。
弟は自分の部屋に入ると、ベッドに腰掛けて持ってきたパンを食べながら、入学してそろそろ1ヶ月半の高校の事を考えた。勉強は嫌いではないが、親しい友達はまだできておらず、運動はどちらかといえば苦手で部活にも入っていない。将来の夢とか具体的な目標はなく、取り敢えず自分の成績に合わせて選んだ学校で、今のところ大学に行きたいという意欲もない。
ため息を一つ吐いたところで、背中が段々暖まる感触を覚えた。
次の瞬間、後ろで何かが光り始め、部屋中を眩しく包み込んだ。弟は悲鳴を上げ、部屋の隅にへばり付く。
悲鳴を聞き、慌てて階段を駆け上がった父は、息を切らしながらドアを開け、溢れ出る光の中「平和、大丈夫か。」と大声で呼びかけた。
眩しく何も見えなかったが、段々と光は弱まり、部屋の隅っこで大きく口を開け、目をパチパチさせている我が子を確認した父の関心はベッドの上に集中した。
光の中に横たわった人間の形を認識した父は、部屋に入り弟とベッドの間に立ち、自分の子どもを守ろうと身構えた。しかし、恐怖とか不安というより好奇心や自分が映画の主人公になったような高揚感が先だった。そして、光を浴び続けると段々と優しい気持ち、何故か親しみさえ覚えるようになった。
光が消えた部屋で父は、眠れる森の美女、いや白雪姫かと、白いネグリジェを着た女性を凝視し悩んだ。
次の瞬間、父の目は、その美しい顔、銀色の髪、長く上に尖った耳よりも左腕に着けた腕時計に釘漬けになった。それは、確か15年前、世平の高校入学祝いに贈ったものと同じでは。
「どうしたの?大丈夫?」
妹、そして母が部屋に入ってきた。
妹「誰?平和のガールフレンド?」
何が起こったかわからず、混乱してその女性を眺めていた弟は、我に返り、
「そんな訳ないだろ。」と頬を赤らめ声を荒げた。
その声に反応したのか、レモティアはゆっくりと目を開けた。
まず手を少しずつ動かし、左腕の腕時計と胸の魔法道具ケータイを触ると、上半身を起こした。
時田家家族4人の顔を少しこわばった笑顔で順番に見て、
「ここ日本、私少し話す。」と日本語で話した。
母「どうしたんだろうね。とりあえずこの部屋は臭いからリビングに行こうかね。」
弟「なんだよ。」
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