第15話 大敗

エリゼ、遙を殺した紅蓮の装甲は次の獲物を探すように飛び立って行った。




ウル『クソッ…!クソッ…!何も…何も出来なかった!』

瀬那「うぅっ…うぁぁぁぁぁぁー!」




今飛び去った紅蓮の装甲を恨むように見つめる2人。

しばらく、嗚咽を漏らし泣いていた。

そんな時、通信が入る。



ソアラ『今動ける方はいますか!?』

ウル『どうか…したのか?』

ソアラ『こちらを包囲していた魔獣の1体が逃げ出し、付近の街へ向けて歩き出しました!』

ウル『黒鋼も…今、動けない…。唯一動けるのは…』

瀬那「私が…私が行きます…」

綺『でも、瀬那ちゃん…大丈夫?』

瀬那「大丈夫です。スカイのサポートもあります…」

琳『そうじゃない…。今の精神状態の事だ…このままだと…』

瀬那「やれます……」

瑠衣『瀬那さん…本当に大丈夫なのですね?』

瀬那「はい…」

瑠衣『……わかりました。どちらにしろ貴女に頼むしかないようです。絶対に無事に帰って来てください…』




瀬那は隊から離れ、魔獣が向かっているという方向へ行く。

すると、向かう途中で先程の紅蓮の装甲が自分の上空を飛行している事に気がつく。

その装甲は自分の行手を遮るように上空から攻撃を加えてくる。




瀬那「アイツは!?」

瑠衣『瀬那さん、無意味な戦闘は避けて下さい』

瀬那「でも、アイツがこちらに攻撃を!」

瑠衣『先程の戦闘を見る限り、こちらに当てる気があるのであれば貴女はもう既にやられている筈です。何か意味があるのかもしれません…慎重に向かって下さい』

瀬那「だけど…」

スカイ:いえ、瑠衣氏の言うとおりです。あの装甲は上空から地面に仕掛けられた罠魔法を破壊しているようです。

瀬那「罠魔法?一体いつ…」

スカイ:魔力の波形パターンから前方の魔獣が逃げながら設置しているようです。先程まで極限に隠蔽され私にも気がつく事は不可能でした。罠魔法を看板された事に魔獣側も気がついたのでしょう。隠蔽するよりも進路を妨害するために数を増やしているようです。

瀬那「それじゃあ、私達も破壊しながら行きます!」

スカイ:了解しました。





上空と地上から2体は罠魔法を破壊しながら

魔獣へと迫る。

魔獣もとうとう逃げる事をやめ、対峙する姿勢を見せる。




瀬那「捉えた!」

『これ以上は行かせん!』

魔獣「グキャァァァァ!」



互いに別々の足を撃ち抜き、魔獣の足を完全に止める。

そして、魔獣に攻撃を加えようとするがこれ以上攻撃してはと瀬那は躊躇ためらってしまう。




『覚悟がないのであればこれ以上の戦闘はしない方がいい…はっきり言って邪魔だ!』

瀬那「私は!』



そう言いかける瀬那を他所に紅蓮の装甲のパイロットは魔獣を攻撃して倒してしまう。




瀬那「どうして…どうしてそんな簡単に人であったものを簡単に殺せるの…?」

『だとしたらあのままにしておくか?』

瀬那「だとしても何か方法が…」

『それでお前たちにその方法があるというのか?』

瀬那「それは…」

『ないもの頼みで被害を広げるか?さっき俺たちが助太刀に来なければ、お前たちは確実に魔獣にやられ全滅していた。運良くあの包囲を潜りぬけようとも魔獣を倒せなければ周囲の街の人は全滅していただろうな?』

瀬那「ッ!」

『もし、先の出来事が街中で起きていた事であれば、お前達は相手が元人間だったからだと攻撃する手を止めるか?そうすれば世の中の人達はお前達を住民達を見殺しにした大罪人と呼ぶんじゃないのか?』

瀬那「″大罪…人…?″」




″結局、アイツは世界を救った英雄じゃない!被害を世界中へ広げた大罪人だ!″


瀬那の中で以前言われた言葉が強く反響するように響く。




瀬那「いや…違う…あの人は大罪人じゃない!どうして…どうして皆んな信じてくれないの!?」



頭を抱え、半狂乱になる瀬那。

大罪人という言葉が彼女を刺激したのであろうと言う事は紅蓮の装甲のパイロットも理解できた。



『……すまない。後は頼んだぞ…スカイ』



ボソりと呟いた紅蓮の装甲のパイロットの言葉にスカイは反応する。



スカイ:!?まさか…。

『今はまだ…』



そう言って、紅蓮の装甲はその場を離れ、現れた艦に戻っていく。

全機を収容した謎の艦は再び姿を消し、残ったのは魔獣の残骸と無様な姿を見せてしまったハバキリの面々だった。




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