Nr.26 終幕III——オンセン——
「ふああああ……これが日本の温泉、秘湯なのですわね……たまりませんわ」
無事に地球に着いた私たちは、その後も
そして山奥のリゾートに案内されて、ついに念願の温泉施設に来ることができた。
受付でロッカーの鍵とタオルを受け取って、脱衣所で着替えた私達は〝テンネンオンセン・ロテンブロ〟との邂逅を果たす事ができた。
フィーネは、ハイネックでピンクのレース地っぽいフリルがついたトップスに、やはりピンクのフリルスカートがついたボトムのビキニ姿で、さっきから楽しそうに辺りをキョロキョロ見渡して景色を楽しんでいる。
「凄く良い景色ですわ、
小柄な見た目の割で可愛らしいのに、出るとこ出てて、とても羨ましい。
「気に入っていただけて良かったです。ここは幼い頃、兄と良く来てたんです。」
「ほんと、
因みに私は上下黒色のシンプルなビキニだったりする。
肌の露出は多いけど動きやすいし、ジムのプールで使ってるのをそのまま持って来たんだ。
「そうですわね。わたくしのオンセン行きたいランキングトップ5の地球に来れるなんて、夢のようですわ」
「いつの間に作ったのそのランキング」
「あら、いつも考えてますわよ。ちなみに10位から行きますと、10位はタイタンの砂丘にある温泉街で、9位はチタニアの山奥にある秘湯ですわ……それから」
「ああはいはい、続きはまた今度ね」
「アリアさんつれないですわ。あと、フォボスとダイモスにあるオンセン卵も捨てがたいですわね」
「まだ言うか……ていうかさ、それにしてもフィーネの胸、改めて見るとやっぱり大きいよね。羨ましいわ……その肉少し欲しいな」
「あ……アリアさんっ、いきなりなにを言うのですか!」
フィーネははずかしそうに照れながら胸元を両腕で隠す。
「いや、普段着痩せして見えるけど、改めて見るとやっぱ大きいなって」
「こ……こんなのはただの堕肉ですわ」
「堕肉て……なんてもったいない」
「肩もこりますし、そんなに良いことないですわ」
そうなのか……でもやはりないより合った方がいいよね。フィーネはもうわたくし先はいりますわよと言ってさっさと掛け湯をしに行ってしまった。
残された私と
「アリアさん、私たちも行きましょうか」
「そうね。あ、
「は、はい?」
「
「へっ……そ、そんな事無いですっ」
「そ、そう言うアリアさんだって、何と言うか、アスリート体型じゃないですか。私はアリアさんに凄く憧れます」
「そ、そう……?」
「そうですよ。アリアさんは細いのにちゃんと体幹がしっかりしていて、なんていうか、インナーマッスルがしっかりついていて、羨ましいです」
「な……なんか照れるね」
一応、私も依頼のない時はエウロパのジムで軽く運動して体が鈍らないようにはしているけど、改めてそう言われるとちょっと嬉しい。
「まあ、最新のレーザー施術で治して貰っているから見た目は全然わからないけど、本当は全身に傷とかいっぱいついているんだけどね。賞金稼ぎって結構生傷絶えないんだ」
「そうなんですね。アリアさん凄く綺麗な肌していて、傷があったなんてぜんぜんわかりません」
「ほんと?高いお金使って良かったー」
そこへ
「皆さん、温泉に入らず何の話をしているのですか?」
「……⁉︎」
「
「か……かっこいい」
「な、なんですか二人ともっ」
私と
水着を一歳着けずに、タオル一つで前を隠している
思わず目が釘付けになってしまった。
「素敵ですわ……」
遠くからフィーネのため息まで聞こえてきた。
「あ、あの……そんなに見つめないで欲しいです」
「
「ああ、日本ではお風呂で水着は着ないのが普通なんです。最近は外国や外星の観光客も増えてきましたから、水着OKの所も多いですが」
「へえ、そうなんだ」
「ええ。故郷の天狗湯では、幼い頃から人間も妖怪もみんな裸で背中を流し合ったりしてました」
「じゃあ
「わ、私は無理ですっ」
「皆さーん、早くこっちに来て欲しいですわ!わたくしのぼせてしまいますわ」
「あ、ごめんフィーネ、すぐ行くね」
私たちは、たっぷり温泉に浸かって日々の疲れを癒すのだった。
◇◆◇
温泉から上がるや、
「みなさん、これまでありがとうございます。天狗の会合にて事の次第を報告しなければいけませんので、私はこれにて失礼いたします」
私たちは温泉の入り口まで
フィーネは湯上がりのコーヒー牛乳を片手に持ってきている。
片手を腰に当ててぐいっと一気に飲むのが温泉の流儀なのだとか。
「ところで、その鳥は?」
「
「ではみなさん、いつかまたお会いしましょう」
あっという間に
小さく、ぐぇぇと鳴く声がこだましている。
「私たちもホテルに戻りましょうか」
「アリアさん、ちょっと待って欲しいですわ。コーヒー牛乳を飲みたいですわ」
「わかったわかった。フィーネはほんとそれ好きよね」
「アリアさんと
「そうなんだ。じゃ、私も試しに飲んでみようかな……」
「あ、ではあたしも一緒に飲みたいです」
「では、温泉に戻って三人でコーヒー牛乳で乾杯といきますわよ」
「そういえば、
「はい。事務所に連絡を取ったら、新しいプロデューサーの方がついてくれる事になりました」
「じゃ、もう一度木星に戻って、アイドル活動を再開するんだ」
「そのつもりです。今度のプロデューサーさんはちゃんとした人だから大丈夫だって話です」
「そっか。また変なやつだったら、すぐ私たちに連絡してね。ぶっとばしてやるから」
「ふふ……その時はぜひお願いします」
「じゃ、この旅行が終わったら
「寂しくなりますわ……」
「あたしもです。でも、また遊びに行きますね」
「いつでも来てよ。
「そうですわね。ライヴとか握手会にもいきますわ」
「わあ、来てくれるんですか」
「うん。だから無理しないで頑張って」
「はい。あたし、ちょっと不安だったんです。でも、なんか頑張れる気がしてきました」
「さ、そろそろ中に戻らないと湯冷めしてしまいますわ。それに」
「わかってるって、コーヒー牛乳でしょ」
「そうですわ。乾杯しにいきましょう」
「はいはい。じゃ、行こっか
「はい!」
——これが、たった二人でゼフィローソ一家を壊滅させたコズミック・ミーチェの伝説とか、勝手に宇宙海賊たちの間で呼ばれている噂の真相だ。
壊滅させたのは本当だけど、二人で……なんかじゃない。私たちには、共に戦う仲間がいるんだ。
私たちの冒険は、まだ始まったばかりだ。
Op.1 宇宙女猫のための前奏曲 ・終
>Op.2に続く
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長い間お読みいただき、ありがとうございます。
みなさまの応援のおかげで Op.1、なんとか完結致しました。
予定ではOp.2までの間に少しお休みを頂いて別の話を書こうかとも思ったのですが、このまま次に進もうと思います。
ただ、Op.2はまだ構成がまとまりきっていない(トーキョーが舞台の対妖魔部隊編にするか、新たなキャラとの土星での冒険の話にするか、VRMMO編をやるかで迷っていました。一応、次は土星が舞台の話になる予定です)ので、更新ペースが今より落ちるかもしれません。
あと、
今後も気長にお付き合いいただければ幸いです。
ゆるふわスナイパー・アリアと、ゆるかわお嬢様・フィーネは絶対領域で無双する。 海猫ほたる @ykohyama
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