Nr.14 脱出 —グレートエスケープ—
私たちは部屋に完全に閉じ込められてしまった。
「ど……どうしよう……フィーネも連絡つかないし……ああ」
私は一人で頭を抱えている。せっかく
そういえば
大丈夫なんだろうか……私は
と思ったら突然、
「ゔ……ぅぅ……ふ、ふふふふ……」
笑い方がなんか独特なんだけど、今時はこんな笑い方が流行っているのかな……
笑い終わった
表情がまるで別人……子供の様な無邪気さが消えて、大人のような落ち着きが出ている。
「全く……漸く助けに来たと思うと、今度はお主まで囚われるとは、浅はかじゃのう」
だ、だれ……急に
「おぬし、アリアとか言っておったな……この部屋の扉を爆破する装置か何かを持っておらぬのか?」
「な……無いです」
そんなもの持ってたら入り口で見つかって捕まってるってば。
「仕方ないのう。では魔法でさっさと破壊するが良い。おぬしもエウロパの者ならそれくらい使えるじゃろ」
「いや、無理です……」
「使えんのか……我が知っている頃の者たちは、当たり前の様に使えておったな……最近の若者は魔法もろくに使えん様になったのか……情けないの」
いやいや、魔法なんてエウロパ人誰も使えないから。
ていうか、
「そう言えばまだ自己紹介しておらんかったな」
「自己紹介?」
「我が名は
に、二重人格……
で、
「今の若者は我の名も忘れてしまったのか……情けないの。我の本来の名はカノン。かつて木星の神と崇められた存在ぞ」
「はい?そんな神様知らないんですけど……」
「まあ、今から数えれば数万年ほど前の出来事じゃからな、無理はないか……」
……あれ、待てよ……そう言えば子供の頃に何か御伽話でその名前、聞いたことがある様な……
思い出した、邪神カノン!
かつて木星の人々から恐れられた神の名、邪神カノン。人々の努力によって邪神カノンは討ち滅ぼされ、遠い銀河の果てに飛ばされたと言う邪神の名前が、確か……
「思い出した様じゃの。御伽話などでは無い。我の事じゃ。邪神などと言われて、木星から追い出されてしまったのじゃ」
「ならなんで今、
「取り憑いてるとは失礼な。我は銀河の果ての無人惑星に飛ばされて、牢獄の様に囚われておったのじゃ。やがてそこに勝手に人が住み着いて、地球となっただけじゃ」
「じゃあ、ずっと地球にいたのね……」
「そうじゃ。我は地球人と一体となり、何度もその時代の地球人の体を借りて転生を繰り返していたのじゃ。いつの日か木星に帰る日を夢見て……な」
「だから地球人の
「そうじゃ。我は
「邪神カノンさん、話はわかったわ……長い話だったけど」
「わかってもらえたか……良かったのう」
「邪神なんでしょ、だったらむしろあなたこそ、この扉を開く魔法が使えるんじゃない?そのために今出てきたのね!そうなのね!」
「残念じゃが、今の我にはその様な力はない……そもそも邪神としての力の大部分は地球に送られる前に封じられてしまってな、残った力も地球で何度も転生を繰り返すうちに弱まって行ったのじゃ」
「え、じゃあ
「そうじゃ。我の力はもはやこの扉すら開く力は残っておらん……」
「じゃあなんで出てきたのよ。紛らわしいだけじゃない」
「良いではないか。何万年もかかってやっと地球から木星の近くまでもどって来れたのじゃ。この娘の歌が木星の人の心に響くのは、おそらく声の中に我の思念がほんの少し混ざっておったせいかもしれんの……」
「いや、今はそんな事いいから。ここから出られないとなんとの意味もないから……」
「つれないのう……最近の若い者は……」
全く、長い話の割に役に立たなくて、ただ時間をロスしただけだったじゃない。
やがて、
「あの、私、何を?あれ、今少し記憶が飛んでいた様な……気がします」
「ああ、良いのよ気にしないで……それよりも、この扉をどうにかしないと」
と言って私が扉の方を向いた時、突然扉ががちゃりと音を立てて、ぎいと開いた。
「え……」
突然の展開に私は戸惑ってしまった。
扉はあっさりと開いて、向こう側には知らない女の人がいた。
服装と見た目はどうやら、この施設の嬢の一人の様に見えるが、立ち振る舞いや雰囲気には、私と同じ様な、同業者の匂いを感じる。
「アリアさんと
扉を開けてくれた嬢のお陰で私たちは部屋の外に出ることができた。
「あ、あなたは?」
「私も、
「う、うん。わかった。逃げよう
「はいっ」
こちらに音はしていないけど、おそらく今頃、警備の部屋では扉が開いた事で警報が鳴っているはずだ。
追っ手が来るのは時間の問題だと思う。
それまでにさっさと逃げるが勝ちだ。
「アリアさん!聞こえますか、アリアさん!」
そして、外に出れた事でフィーネからの通信も回復したみたいだった。
こうなればもう、こっちのものだ。
「フィーネ、脱出したわ。案内をお願い!」
「分かりましたわ」
私たちは急いで移動を開始した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます