第18話 老人、タンギーの謎
「謎とき出来るまで、共闘してみる?」
カイトの声にクロは…
「するです!!!」
返答を戸惑うクロを押しのけ、カスミが出てきた。
「カスミ、いつからここに…?」
「ずっと聞いていたです!
謎ときするってところから!!」
「いや、最後の部分だけじゃないか!」
最初から聞いていたと主張するカスミをなだめながら、クロはカイトの話を聞いてみたいと感じていた。
「カイト、共闘の前に呑みに行かないか?」
「いいね。行こう!」
【バー くろの巣】
「カイト、その画家の絵に何があるんだ?」
「やっぱり、気になるよね。」
「前から聞きたかったんだけど、絵画を盗難するってリスクがあるわりに実入りが少ないと思う。盗った絵はどうしてるの?」
「持ってるよ。」
「えーーー!!!
持ってるの?なんで?」
クロが身を乗り出してカイトを見ている。
「持っていたら見つかったときに犯人って解ってしまうのに?それに、絵って色あせてしまうよね…
カイトの保管場所は特別な仕掛けがあるの?仕掛けがあったら、さらに見つかりやすくなるんじゃない??」
クロが矢継ぎ早に質問を投げかけるのを見ながらカイトは笑いが止まらなかった。
「クロ、落ち着いて。」
なだめられたクロは、バーのカウンターの席に腰を降ろし、一度天井を仰いた。
一息ついて、カイトをみる。
「じゃあ、とりあえず、その絵を集めると、どんないいことがあるの?」
「いい質問。いいことって、私にとっていいこと?それとも盗られた側にとって?」
「いやいやいや、盗るほうだよ。盗られるほうは損でしょ」
「そうでもないことがあるよ」
意外な返答にクロはカイトのほうを振り向いた。
「クロ、絵は盗まれると価値が上がることがあるから、悪くないと思う画家はいるかも。」
「どういうこと?盗まれると価値が上がるの?」
「そう、価値が上がることがあるよ。盗られてニュースになると、どんな絵だったかが気になったり、盗まれるほど貴重なものってどんなの?って思われたりして、欲しがる人や見たい人が出てくるよ。盗られ方にもよるけどね」
「なるほどね。それで、盗られたものが戻って来ると見に行きたくなるってことだね」
「そうそう。欲しがる人が増えることが価値を上げるので宣伝みたいになるよ。」
「なるほど…。で、カイトの話に戻すけど、カイトにとってのいいことって? 盗られた人を喜ばせるためじゃないよね。」
「あっ、せっかく話題そらしていたのに…。もちろん、私のためだよ。」
「だよね。そして、盗られる側のタンギーが気になっている。なぜ犯行することが読まれたのか、と」
「そう…。」
悩みながらカイトが応えると、クロは、
「カイト、別のタンギーの絵を盗ってみたらいいんじゃないか?」
「クロ!
いいのか?その提案??」
「そうでもしないと、わからないだろ。あの家の絵だけ解ったのかもしれないし、偶然かもしれないし…。ただ、犯行は手伝わないよ。」
クロの提案に納得したカイトは計画を練るためバーを後にした。
【後日】
クロの探偵事務所に、カイトの名前で絵画盗難を行うの予告が届いた。出したのはタンギーだった。
つづく
お金が存在しない世界でカイトは泥棒になる!! 難波とまと @NAMBA_TMT
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