第16話 絵画、盗難予告状
クロは笑いながら
「大事なボールペンだよ。カイトに持ってきてもらったのは有難いけど、盗難を見逃すってことはないけどね」
そう笑ってカスミに言いながら、クロは手元のボールペンを見ていた…
『きっと、彼を見逃してしまう…』
クロにとっては、かけがえのないペン、そんな存在のペン。
その頃、カイトはクロの読みの通り、ある画家の作品を狙っていた。そして、いつものように下調べに行く…、次のターゲットは庭つきの2階建ての家。
『商業ビルやマンションと違って、こういった場所は狙いにくいな…』
カイトは人目を気にしながらターゲットの家の近くの道から、家に背を向けて反対側を眺めていた。
『何枚も同じ画家の絵を盗っているが、建物周辺を監視している感じはなく警戒されていない。絵って、そんなものなのかな…』
また、ターゲットの家を遠くから見える位置からも様子を伺う。
『1人で住んでいるようだ。平日は留守にしているみたい。休日は友人を招いたりして家に居ることが多そう。飾ってあるといいのだか、保管してたりすると厄介だな。まっ、やってみるか。』
数日後、クロのもとに【予告状】が届いた。
【予告状】
〚今週末の土曜日の13時に、Aさん宅にあるタンギー作の絵画『炎』を盗りに行きます。住所…〛
「!!!!」
「!!!!」
クロとカスミは予告状を見て顔を見合せた。
「まさか、カイトが…です?」
「まさか、と思っていたが予告状の文字、私のペンで書いたものだよ。これ、カイトだよ」
「え〜〜〜〜〜!、ペンを届けてもらう前に書いたってこと??」
「そうなるね。ペンはずっと持ってるから、私以外にペンを使うタイミングはその時しかないよ。」
「とりあえず、その日に行ってみるか…」
「時間と場所がわかったら、捕まえることが出来てしまうです…」
「カスミ、何だか寂しそうにみえるよ」
「そんなことないです。」
「まぁ、そんなに簡単に行かないと思うよ。この場所って住宅地にある民家なんだけど、平日のほうが留守の家が多いんじゃないかな。周りの家も土曜日の昼間って、いつ誰が家にいるか、道を通るかわからないから、なんか別の目的がある気がするよ。」
「別の目的って?」
「例えば、私が警備員とか配置したり、家の人に伝えたり…」
「するでしょ!」
「いや…、警備員とかお互い知らない人がウロウロできるし、防犯カメラ設置しますとかで家の中に入る隙を作っちゃうかな」
「あっ、やっぱ無しです!」
「だから警備員とか使わないよ。」
「うあ〜〜〜〜。カイト、残念です!」
土曜日になり、ターゲットの家では友人を呼んで食事会を楽しんでいる。
「いっぱい人がいるです。この中に盗みに入るのは無理です。」
カスミはクロと共に、遠目に家が見える位置で13時を待ちながら予告状を疑い始めていた。
「あっ、誰か家に来た。」
カイトがガス会社を装おって玄関に来ていた。
「はい、何か?」
ターゲットの家から家主と思われる男性が出てきた。
「すみません、近くでガス漏れしている連絡があって。ちょっと確認させてもらうことは出来ますか?」
カイトのポケットには潰れた玉ねぎが入っており、かすかな玉ねぎのニオイがガスのようなニオイを辺りを漂わせていた。
「たしかにガスっぽいニオイがします。確認をしてもらっていいですか?」
「わかりました。」
ふと、嫌な予感がして周りを見渡すカイト。その後、スマホを耳にあて
「あっ、そうなんですか。原因わかったんですね」
スマホを耳から離し、家主に
「今、連絡があり、原因わかったみたいです。お騒がせしました。」
と家を後にするカイト。その視線の先にはクロがいた。
「やばっ、見つかったです!」
「やっぱりか〜、でも変だ。予告状を送っているなら私達が来ていると思うはず…、何か驚いていたような…」
クロは疑問に思うことを口にしながらカイトを見ている。
カイトはもう一箇所から感じていた視線のほうをみていた。クロの他に誰かいる…
『あれ、誰だ? なんか変だ。見られている。というより、ここに来ることを知っていた?警備が重厚というわけじゃないのにクロ達が来ているのも気になる。』
カイトは視線の先にいる老人を凝視していた。
『なぜ、犯行の日がわかったんだ?』
視線の先にいた老人は、カイトが一瞬クロを気にした後、その姿は見えなくなっていた。
つづく
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