第14話 絵に描かれているもの…

「クロ!、探偵が泥棒に加担しちゃ、ダメだよね。ただ、私としては加担してもらいたいから少し話すんだけど、実は絵画はお金の世界と関係があると思ってる。元の世界に戻れるかはわからないけど…。絵画って、お金の存在する世界では凄く高価なものがあるんだよ。」



バーにはクロとカイト、そしてバーテンダーの3人だけとなり、バーテンダーはクロ達から少し距離をおいてグラスを片付け始め、聞こえる音はグラスを片付けるときにガラスがあたるカチッカチッと鳴る音がかすかに聞こえている。そんな静かな店内に探偵と泥棒がいる。


クロとカイトの会話が誰かに聞かれることもなく、静かな店内でカイトは自分が絵画を盗る泥棒だということを隠すこともなく話し始めている。


カイトの不思議な話にクロは食い入るように


「絵画が高価?。それは絵画には価値があるってこと?なんで?絵は何かの役に立つの?」



クロのところに絵画泥棒を捕まえるような依頼があった。絵画なんてものを何故盗むのか?わけも解らずに模索する日々に、ふと持ち時間が見えない男が現れた。そして、その男は眼の前にいる。


しかし、今はそんなことはどうでもよく、クロは作り話とも思えるカイトの話をまるで子供のように聴いている。



「絵は役に立たないよ。」


意外な答えがカイトの口から出てきた。もしかしたら絵画は役に立つのでは?と思っていたクロは呆気にとられ、残念に思う気持ちを抑えながら


「だっ、だよね。絵やコピーしたものを壁に貼ったりするけど高価って思ったことはないよ。今、盗まれている絵画は骨董や昔の資料の一種類で、資料館に見に行くものって感じがする。じゃあ、時間の長さが変わらない世界では歴史上の人物が書いた手紙も価値があって、飾ったりしているの?」



「いや、それは資料館にあるかな。」


「えっ、そうなの?…線引が難しいな。よく分からなくなってきた。まっ、もともと分かってなかったけどね。」


クロはカイトの物語を空想の話かもしれないと思いながらも、その回答の速さに、そのカイトの表情に、この話はもしかしたら本当のことではないか?と感じたりしながら、カウンターの奥にある一枚の絵を眺めていた。



「たしかに言われてみれば不思議な気がする。なんで絵画って高いんだろう?管理もしなきゃいけないし、持っておくのって面倒なはずなのに…」


クロは頷き、視線をカイトに戻した。


「管理がいるよね。貴重なのは解かる。ただ、置く場所も温度を保ったりして気を使うから個人が手にするってことを思ったことがなく、盗るってことも考えたことがなかった。もしかして、他に価値がある骨董品はあったりするの?」



「お皿とか陶器は高いのがあるよ。」


「それって絵が描いてあって、デザインに価値があるの?」


「そんなのもあるけど、絵や模様がないのも価値が高いものがあって…。中には欠けているほうが価値があったりするよ、お椀とか。欠けているところが金色の糊の後があって、あきらかに修理してあったりするけど価値が高かったりする。」



「欠けているのに価値があるの?割れているんでしょ。なんで?」


クロの反応を楽しむカイト。そのとき、クロはカイトが話す際の表情を見ながら、盗難する対象について考えていた。


『もしかしたら、絵画を描いている人のほうに理由がある?画家がカイトと同じ世界の人なのか?』


つづく

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