第13話 絵画しか盗まないの?
「変装していて、時間が見えない人が現場にいるだけで充分怪しい。だから気になったんだよ。カイト、君はこの世界の人じゃないんじゃないか?」
「えっ、まさか宇宙人なんです?」
「カスミ、宇宙人とは言ってないよ。」
「隠せないみたいですね。実は、時間が変わらない世界から迷い込んだみたいなんです。」
「え〜!、時間が増えないんです?そんなの良いことをする意味がないです!!あっ、泥棒って、まさか?、時間が変わらないから…です?」
「いや、時間が変わらない世界から来たとは言ったけど、この場所では時間が変わらないってことじゃないかもしれなくて…」
「あっ、そっか。じゃあ、意味ないです。」
「それと、カスミ。時間が増えなかったら、動画をまとめて見るってことは出来ないから時間が変わらないのは得とは限らないよ。」
「それは、嫌です!」
カスミの語気の強さに、カイトもクロも吹き出していた。
「ところで、時間の変わらない世界のことと、絵画には何か関係ありそうだね。」
クロの言葉にカイトは一瞬固まった。
「どうして、そう思いました?」
「いや、カマかけているだけですよ。絵画ばかりが盗難されているから。もしかして、かすりましたか?」
「なるほど。絵画ばかりは気づかれていたのですね。」
なんだかカイトは嬉しそうに話している。
「気づかれて良かったって顔つきになってますよ。意味があるのは合ってるようですね」
「意味があるのか、それとも、私が意味を知りたいのか…。」
「えっ!!意味が解らずに盗っているですか?時間減っちゃうのに…、変です!」
「そうなんよね、割が合わないよね。私自身もそう思うよ。不思議なことしてるって。」
「不思議なことをしてるって自覚があるのってことは、意味を知るため?誰かに意味を伝えるため?」
クロの言葉にカイトは、つい前のめりになり、
「そうなんですよ…、いや、やっぱり今は言いにくいな。危うく話してしまうところだった。」
「クロ、もしかして、次に盗る絵画がわかってしまったり?」
「それが狙いなんでしょ。引っかからないよ」
「やっぱり、甘くなかったか。ただ、まだ盗ることは続けるってこと、盗る物が絵画ってことはわかった。現場で会えることを楽しみにしてる。」
「私は楽しみにしてないですけどね。」
バーの中は笑いに包まれた。カスミは先に帰ったがその後もクロとカイトはバーで飲み続け、クロは楽しみながらもカイトから何か情報を得ようとしていた。
「お金が存在する世界…、凄く興味があるよ。本当のことでも、作り話でも。カスミは本気にしていなかったみたいですが、私は本当なのかもと思っています。そうじゃないとカイトの時間が見えない説明がつかない。もとの世界に帰るために絵画が必要なんじゃないのか?」
「元の世界に戻りたい…。それが理由だったら、クロが私を追うときに手が緩んじゃうよ。」
「緩んだっていいよ。絵画がないと困るってことじゃないし、もしもカイトが元に戻ることが出来るってことだったら凄く大事なことと思ってる。そのために絵が役に立つなら、それがいい。」
「そっか。カスミちゃんの前では言えないセリフなのかな?仕事をしている身として。」
「そりゃ、言えないよ。泥棒に加担するみたいになるからね。」
「探偵が泥棒に加担しちゃ、ダメだよね。ただ、私は加担してもらいたいから少し話すと、実は、絵画はお金の世界と関係があると思ってる。戻れるかはわからないけど。絵画って、お金の存在する世界では凄く高価なものがあるんだよ。」
「カイト。絵画が高価?それは絵画に価値があるってこと?」
つづく
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